行街-毎月第3月曜日に投稿-

三者三様の小説人たち 毎月第3月曜日に投稿します。

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マガジン

  • コウ和辞典

    正式なコウガイ語の辞典です。 ここだけでしか発行されません。他に出回っているとしたらそれは偽物です。 騙されないようにお気をつけください。

  • 思いついたらつける草

    • 32本

    週刊連載を目指している不定期連載のエッセイになる予定集 三人の作家たちが、思いついたときに小説にするまでもないけど、とりあえず書いておこうかなって思ったら、ゆる〜く書きます。 たまに小説も入っています。

  • 行街 4月号

    泊木 空 「ここは秘密の園 ①」

  • 『行街』3月号

    紫乃羽衣 「pasta di pace ~パスタ ディ パァチェ~」

  • 行街 2月号

    久保田ひかる「◾️りある」

最近の記事

  • 固定された記事

ここは秘密の園 ① 

 天国の海には白い雲波が立ち、乗客を乗せた飛行機はシャチのように躍り出る。窓から見える雲波は雨粒を含んで柔らかそうだ。地上よりもぐっと近づいたせいか、太陽の光は急速に肌を焼くので、上空に出て数十分もしないうちにもうひりひりしている。  俺は窓についた震える雫を指で撫でながら、ここからほんとうに落ちるんだ、と頭の中で呟いた。雫の残した水跡の震えが、泣きながら書いた手紙の文字に似ていて、俺は目を瞑った。 「これから飛行機で上空に上り、富士山よりも高い高度から落下します。」  に

    • 『帰り道の思い出』

      久保田ひかる  つるりとした白い壁の中に銀色の四角い枠が嵌め込まれて、ガラス窓が外を切り取っている。窓から程近い電灯が光の線を描いて、やや遠くに見えるパチンコ屋の看板は流れるそぶりもなく凝り固まっている。  僕は電車に乗っていた。珍しくイヤホンを忘れてしまった。スマートフォンのバッテリーが空近かった。  田舎を走っていく電車にはほとんど人もいない。向かいの列の端に禿げ上がった仏頂面のおじさんが大きく足を開いていて、逆の端にはやたらと目のきつい女性が長い爪を器用に避けながら

      • たぶん月一の富山 4月編

        2ヶ月ぶりの富山。 たぶん月一の富山と言いながら、早速一月間が空いてしまうという事態に陥った。 別にサボろうと思ったわけではなく、富山へ行こうとしていた日に体調を崩してしまい、どうしようもなかった。 4月になって仕事が忙しくなり、今回もどうなるかわからなかったが3月に行かなかったので、どうしてもきたかった。 いつものように新幹線に乗り込もうとした時に、少し驚いたことがあった。 終点が敦賀になっていた。 そういえば、北陸新幹線が福井まで通るようになっていたのを忘れていた。

        • 努力とは苦しむことである

          職業柄というか、今までに生きてきた環境が競争の世界であったから、努力ということを考えなければならないことが多かった。 最近では、脱昭和の意識からか「”適切な”努力は報われる」とか、「苦しむことは努力ではない」ということが多い。データを元に云々と。 個人的に何かできるようになるとか、苦手を克服するとかであれば間違ってはいないのだけれども、競争世界の文脈では、これは根本的に間違っている。 これは血液型占いの話と同じである。 仮にこれが正しいのであれば、世界の4分の1の人が常に

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        ここは秘密の園 ① 

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        • 行街 4月号
          1本
        • 『行街』3月号
          5本
        • 行街 2月号
          1本
        • 行街 1月号
          1本

        記事

          桜おもふ君

          紫乃羽衣 最近は、随分と暖かくなってきた。 朝のニュースでここ数日はずっと桜の話題をしている。 他の国を見回したって、情報番組で桜の開花をこれだけ長期間取り上げるところなどないとおもう。 今年はいつまでも寒い日が続いたりして例年よりも咲く時期が遅れているらしく朝の準備をしながらテレビを見て、「今日こそはきっと!」と言いながら、出かける君は楽しそう。 友達ができたと言っていたね。 私の血を受け継いでしまったせいか、もとより学校があまり好きではなくて、小学校の時から泣きな

          TOKYO CITY

          東京に行った。 煌びやかで、高いビルがたくさんあって街ゆく人は、なんとなく地元よりもオシャレで整ってた顔をしている人が多いような気がする。 誰もが華やぐ街。 これといった目的があったわけではないから周辺を調べながら、ふらふらと歩いていた。 傘をさして。 雨の摩天楼は、薄暗い雲に突き刺さる。 なぜだかわからないけれど、行く道は白く霧が出ているかのように見える。 なんだか蜃気楼のような気分。 非日常が襲ってくる。 CMで見た子ある会社名が大きく書かれている建物。幅の広い

          それとなく、なんとなく、カタルシス

          紫乃羽衣 アニメで『SPY×FAMILY』やら『葬送のフリーレン』が流行っている。 私も好きなのだが、何がいいってBGM的に流しておくことができるくらいに落ち着いている。 ちゃんと見れば、ストーリー的な細かく作られていたりする面白さもあるのだが、一番はその落ち着きと、どこまでも「人間」を追求しているように見えるところのように思う。 これらの作品は、爆発的な人気を誇っている『ONEPIECE』や『NARUTO』、『鬼滅の刃』や『進撃の巨人』とは別の方向で面白い。 これらの作

          それとなく、なんとなく、カタルシス

          pasta di pace ~パスタ ディ パァチェ~

          紫乃羽衣  「いいかい、こういう時にはC'era una volta…といって始めるんだ」  *ーー*ーー*  イタリアンレストラン「ラ・フォンターナ」のカポクオーコである彼はずっと悩んでいた。  師匠の残した鳥肉パスタの味を再現したかった。師匠とは言っても、イタリアの修行時代に本当の師匠から行ってこいと言われた民家の主人で、その主人は料理人でもなければ、特別に自分の料理に誇りを持っているということでもない。観光客を相手に、日常的に自らが作る料理を振る舞っているだけだっ

          pasta di pace ~パスタ ディ パァチェ~

          なにもしたくない日の話

                                        泊木 空 何処か、何かで頑張っていると、なにもしたくない日がやって来る。 そういう日、働いているときは無理やり身体をいつものように動かして、 食欲もないのにご飯を食べ、怠いのに歯を磨き、寝巻きを脱ぎたくないのに脱いでスーツを着て、あくびを何度もしながら、靴を履く。 今日はそういう日。 まじないみたいに繰り返し、今日はそういう日、と口ずさみながら仕事場に向かう。 仕事中に不機嫌なのは、ご愛嬌。 働いてい

          なにもしたくない日の話

          創る側に回る

          何かを享受する。 何かを創る。 創る側に回ろうと言われることが多い。 私も、創ることが重要だと考えている。 ただ享受だけするのが悪いということではない。 創ることで見えるメリットがある。 簡単にいえば、その世界のもう半分の大部分を知ることができる。 「本を読む」に対して「本を書く」 「システムを使う」に対して「プログラムを書く」 「問題を解く」に対して「問題を作る」 「音楽を聴く」に対して「音楽を奏でる」 「音楽を奏でる」に対して「編曲をする」 「編曲する」と「作曲す

          分解と実行と実行と実行、とりあえずやれ —— 最初の20時間 — あらゆることをサクッと学ぶ方法 | ジョシュ・カウフマン | TEDxCSU

          思ったよりもTEDに関する記事が少ない。 Twitterにしてもそうで、なぜか少ない。 かなり有益な情報が多いです。 まあ、理由は何となくわかります。多くの情報が英語だから見るのに骨が折れるし、紹介するにも多少労力がかかるんですね。 私は割と好きなのでとりあえず、気が向いた時に「お、これはと思ったものを紹介していこうかなと。 こちらのトークでは、学習の仕方について面白いことを語っています。 有名な10000時間の法則から、教育学お馴染みの学習曲線のプラトーまで紹介されて

          分解と実行と実行と実行、とりあえずやれ —— 最初の20時間 — あらゆることをサクッと学ぶ方法 | ジョシュ・カウフマン | TEDxCSU

          ■りある

          久保田ひかる Ⅰ.メゾンドクレッシェンド二〇二号室の男  Kくんの無謀な試みの話をしようか。  まずは、君たちに見てもらう部屋を説明するとしよう。薄暗くて小さなアパートの一室さ。部屋の床にはカロリーメイトの空き箱と、空になった水のペットボトルが整然と並べられていてね。部屋の奥には一台のスチールデスク。安っぽい備え付けデスクライトの明かりの元で、一人の男が必死に何やら書いている。彼がKくん。本名は久坂孝雄と言うんだけれど、本人がKと名乗るつもりらしいからね。僕は付き合っ

          名人の目

          楽器の上手い人たちの中で学んだことがある。 上手い人たちは、上手なところと下手なところの【両方】を見分ける力が圧倒的に上手いのである。 そして、それがなぜ起こるのかまでを自分なりにでも解釈して、再現をしてみようとしてみる。あの人たちは、真似をするのが上手いのだ。 真似をして、自分なりの形を作り、何となくでも自分の引き出しの中に入れておく。 持ち前の良し悪しを見分ける力で見つけた悪しくなる原因を取り除き、自分の武器として吸収してしまう。 月に一度小説を投稿しています。

          たぶん月1の富山③

          駅から出る時に、さすがに驚いたのだが駅員がいない。 切符を入れるポストのようなものがあるだけ。 んーー、まあ確かに入る時に入った印を確実につけていれば出る時の回収は実は必要ないということは考えられる。 駅を出て、右に曲がり、そのまま数百メートルまっすぐ歩き続けると今回の旅の一番の目的である新鮮な魚を食べられるお店が待っている。 ただ、書き手泣かせなこの道には、多くを語るほどの名所みたいな箇所はない。だから、その時その時に思っていたことを書かなければいけなくなってしまう。

          生産の消費化

          少し気になっていることがあったので、これを書こうと思います。 富山旅行記を書く予定だったのですが、あまりにも頭の中がこれでいっぱいだったので、許してください。明日には、富山旅行記③書きます。 消費生産と生産生産これは、私の造語であるのですが、私の仕事に関しての考え方を最もよく表していると思います。 消費生産 消費生産は、既存のリソースや成果物を利用してタスクを完了させる活動を指します。ここでの「消費」とは、文字通りに物資や情報を利用する行為だけでなく、社内外のアイデアや

          たぶん月一の富山。2月編②

          二日目。 私を富山に呼んだ友人が朝イチの魚計画に乗ってきた。断る理由もなく、それを了承した。彼は地元民だから現地で集合しようということになった。 まだ外が暗いうちから電車に乗りこむ。 この電車は、ICカードが使えないから注意をしてほしい。 一応観光スポットなのだから、ICカード使えるようにしてもいいのではと思ってもいるのですが… 関東の、特に郊外から都心部にかけて住んでいる人にはあまり馴染みがないと思うだが、この電車がなかなかに味わい深い。 どの時代からいるのだろうと思

          たぶん月一の富山。2月編②