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【反戦詩】「靖国」

死は軽い 命は軽い

義は山嶽よりも重く死は鴻毛よりも軽し
そう覺悟せよ

兵隊たちは教え込まれた(軍人勅諭)

それを吞み込んだ若者たちが
ここに「英霊」として祀られる
若者たち 数十万数百万の人びと
国家に殉じたその数
246万余という
その一つひとつが
生きた命だった

本当にみんな
軍人勅諭を真に受けたのか 純粋に

「女」を知らぬまま 命を断ち切られ
靖国で会おう――
その言葉を信じて あの世に行ったか

愉悦快楽を知らぬまま
もっともっと楽しみたかったろう
成長もしたかった 遊びもしたかった
くだらないこと むずかしいこと
人をだまし だまされ
これも人生 あれも人生
二十歳やそこらで消えた命をいかにせむ

菊の紋章は 昔も今もここに輝く

死は限りなく軽い
一人ひとりの命など
為政者権力者は気にしない 考えない

靖国の境内で
コロナ禍より前から
酒宴が禁止されている
かつては酒を飲み騒いだとしても
よほどのことがない限り
問題はなかった(はず)
ずらりと露店が並び
食べ物を 酒を買い
春には花見を
夏にはみたままつりを
それぞれが
思い思いに楽しんだ

若者たちは酔い騒ぎ
ナンパしたり ナンパされたり
聖と俗とが入り交じる
体と心が交差し合う
そんな場でもあったのだ

それが
「境内での酒宴を禁止します。」
ポスターにそう記す
飲んで酔って騒ぐな
この場にふさわしくない――
そういうことですか
そういうことなのですね


「禁止」は英霊たちが望むことか
彼ら――先の命を絶たれた人びと
その気持ちを思えば
「ここは厳粛な場である 騒ぐな」
と言い募られることに反発する

違うのだ 違う
彼らの前で 飲み歌い騒ぎナンパもする
そこに慰めがあるのだ

古来 日本の神は 寛容だった

バカなカタブツども


巨大な鳥居 戦後かなりたってから再建された

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