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#11 サインデザインについて語りたい

「サインデザイナー」をやっています。というと「?」という顔をされることが多い。
以前は冗談で著名な人の署名(サイン)をかっこよくデザインする人なんて言ってたんだけど、最近はほんとにそういう方がいるらしく、検索するとトップに署名をデザインする広告が出てきたりして、ただでさえ認知の低い僕らの業界がますます分かりにくくなってしまう。ということで、今回は僕の仕事、サインデザインについて語らせてもらいたい。

サインってなんですか?

例えば駅。
駅名、入口の案内、何番線に何行きが来るか、何色が何線か、出口番号はどこに通じていて、周辺の地図はあるか。
例えばショッピングセンター。
どこにどんな施設があるか、全館の案内、フロアマップ、レストランの案内、トイレの誘導、催し物の案内。

いわゆる、案内看板、案内表示、案内標識などと言われているもの全般をサインと呼びます。都市に住んでる人は大抵毎日見て、使っています。仕事行く時、遊ぶ時、買い物する時。地方に住んでいる人は町中ではよく見るけど、どちらかというとお店の看板というイメージの方が多いかもしれません。ロードサイドの大型店なんかにはでっかい看板が立ってたりしますよね。
色々な解釈が成り立つ分野なのですが、ざっくり言うと空間の情報を目に見える形にして人とつなげるものです。

ところが、そこにデザインが存在していて、デザイナーが途方もない時間かけて計画していることが知られていない。それが、サイン。

特にサインシステムと呼ばれるような、建物だけでなく建物全体、またはその街区全体の誘導計画などは、建築計画の初期から関わり、人の流れを読み、目的地に向かってどう行動するか、またはどう行動してもらいたいか、綿密に計画を立ててっていきます。


にもかかわらず、褒められることが少ないのが、サインの特徴。

ひっそりと機能を満たすサイン

サインが無くて困った!という人はいるけど、サインがあって良かった!という人はほとんどいません。無意識にサインを見て目的地にたどり着いた人がサインのことを覚えていないとしたら、それだけ人に対して自然に読みやすい情報が読みやすい形で表示されていた、ということ。だから褒められないのが良い、とも言えます。
建築の初期段階から、3年もかけてデザインしてきて、うわこの建物かっけー!とか今度あそこに出来た○○いいよねーとか言われる影で評価されない割に、トイレの場所が全然わかんないじゃん!と文句を言われます。

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しかも究極に使いやすいのはサインが無いこと。だったりします。建築や空間が明快で誰もがわかりやすく設計されていると、人はサインをいちいち見なくても移動できるのです。例えば電車に乗りたいあなたの目の前にエスカレーターがあって、下ったところに電車が来ることが見えていれば、サインが無くても電車に乗れますよね。
もちろんこれは極端な例ですが、特に駅や道路上の公共サインなどは、少なくできるということは迷うことが少ないということですから、利用している方にとっては使いやすいといえます。

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ここまで、サインは日陰の存在で目立たないことがよいと書いてきましたが、これは主に機能の面です。機能が自然に人をサポートすることが望ましい訳です。

空間の完成度を上げるサイン

しかし同時にサインには演出的な要素も求められます。施設ごとの性格に合わせて、空間特性を強める働きが出来るからです。
ホテルでは、情報はもちろん、いかにホスピタリティをあげるか、ホテルの質感を高めるか。エンタメ施設では楽しさをより強調するようなデザインとか、オフィスではクールで読みやすいデザインとか、、

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空間全体のボリュームからはわずかな分量なのですが、利用者の目にとまる(ために作っている)ものなので、建物全体のデザインと調和していることで、その空間らしさの完成度をあげることが出来ます。
あるいはより大きく大胆なグラフィックで空間を彩ったり、ユーモアのあるフォルムやイラストで親しみをわかせるなど、より主張の強い演出も可能。

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時々、予算がなくて空間にお金かけられなかったので、とりあえずサインで何とかして欲しいという無茶ぶりもされますが、それでも予算のない中で空間に対して適量、かつ楽しい空間をデザインできた時は、予算のある大きな仕事よりかえって大きな満足感も味わったりできます。

どっちつかずだから色々関われて面白い

サインデザインについて紹介してきましたが、機能を満たすハードな部分には建築設計の知識や素材やディテールを納める力が要求され、情報を見やすく表示するソフトの部分ではグラフィックデザイン全般の知識も必要となるなど、実は結構全方位のデザイン力を求められる仕事なのです。

また建築設計の楽しみもグラフィックデザインの楽しみも同時に味わえたり、割と計画全体を俯瞰してみる立場になるので、大きいプロジェクトの時などは、計画当初からすごい物が出来ていくところを目の前の特等席で見られる(笑)という特典もあります。

分野としてはすごくニッチで、建築デザイン系ともグラフィックデザイン系ともつかないあやふやなジャンルなのですが、褒められなくてもしばしばけなされても、僕はこの仕事に大きなやりがいを感じています。
サインデザインに興味を持ってくれる人が一人でも増えてくれるとうれしいです。

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