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1年くらいかけて学んだ、ユーザーインタビューをより良くするためのコツ

こんにちは、Makuakeで働いているUXデザイナーのMakino Shuです。
MakuakeのUXチームで普段どんな仕事をしているのかは、弊社のデザイナーが書いてくれた記事がとてもわかりやすいので、興味がある方はそちらを見てみてください。

MakuakeのUXチームではここ一年くらいかけてユーザーインタビューの取り組みを少しずつ始めました。この記事では、

Why : なぜインタビューを始めたか
How : どのようにインタビューに取り組んでいるか?

に触れた後に、
約1年間インタビューに取り組む中で学んだ、インタビューをより良くするために大事なポイントをいくつか紹介します。


ユーザーインタビューを始めたきっかけ

所属している開発チームでは、一時期グロースハックに集中して取り組んでいた時期がありました。

その時のアプローチは、GAなどの数値分析ツールを使い課題を見つけ、それを解決するというものです。
このやり方では、簡単に改善すべきポイントを見つけることができますが、いざその課題を解決するとなると、どんな施策を打てばよいのか検討がつきませんでした。
『なぜここの数値が悪いのか』という原因を分かっていなかったからです。原因を知るためには、実際にユーザーがどういった気持ちでサービスを使っているのかを知ることがいちばんの近道と考え、ユーザーインタビューを始めました。

インタビューに取り組んで良かったこと

当時開発チームでは、ユーザーインタビューは行っておらず、チーム内でもユーザーがどんな気持ちでサービスを使ってくれているのかはなんとなく想像することしかできませんでした。しかし実際にインタビューを取り組んでからは、ユーザーに対する理解が深まり、改善施策について考える時も『あのユーザーさんならこの機能はこうやって使ってくれるかもしれないな』とユーザー感覚がある程度わかるようになってきました。

どのような流れでインタビューに取り組んでいるか?

ユーザーインタビューは主に3つの時間軸に分かれていると捉えています。

インタビュー前
インタビュー本番
インタビュー後

の3つです。
インタビュー本番はもちろん大事ですが、個人的にはインタビュー前後でどれだけのことができるかがインタビューのクオリティを左右するのでは?と考えてます。

【インタビュー前にすること】
・インタビューの目的設定
・スクリプト準備
・時間配分の確認
・役割分担
・ユーザーさんに事前質問する
etc

インタビュー前でも特に重要なのは、ユーザーさんへの事前質問です。サービスにおけるコンバージョンの回数や、どんなカテゴリのものが好きか?などユーザーの属性を把握できる基本的な情報を事前に聞いておくと、インタビュー時間の大幅な削減になるだけでなく、回答内容を元にどんなことを本番で聞くと良いかを事前にプランニングしやすくなります。

【インタビュー本番】

本番では、ユーザーさんに敬意を示しながら、頑張ってインタビューします。適度にアドリブを入れることなども重要です。

【インタビュー後にすること】
デブリーフィング (振り返り)
忘れないうちにインタビューの全文書き起こし
新聞形式にして社内で配布する

インタビューが終わったら、振り返りや分析をします。
それらの情報をもとに、どのようにユーザーの声を機能開発に活かせるのかも考えます。

また、今の社内フェーズで重要と感じているのは、インタビュー内容を社内で広めること。現在は、雑誌のインタビュー特集のような見栄えに編集して全社に紙で配布しています。それによって少しでも会社全体でユーザーの理解度があがることに貢献できれば、と考えています。

インタビューをする時に大切にしていること

氷山モデルを意識する
インタビュー時に意識していることはいくつかありますが、中でも重要と感じているのがシステム思考の「氷山モデル」です。

簡単に言うと、海面に浮かぶ氷山はとても大きく見えますが、実はその下にはもっと大きな氷が隠れている、という自然現象からインスピレーションを受けているモデルで、「何事においても表面に現れていることはごく一部であり、実はその下にもっと重要で根本的な何かが隠れている」という考え方です。
詳しい説明は貼り付けた記事に譲ります。

さて、この氷山モデルをユーザーインタビュー向けにざっくりカスタマイズするとこのようになります

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ユーザーインタビュー中に、ついつい目が行ってしまいがちなのはユーザーの発言や行動ですが、実はインタビューを通して発見したいのは、その下に隠れているユーザーの価値観です。なぜならユーザーの価値観こそが、サービスを利用する時の行動を決めているためです。

とサラッと書いてみたはいいものの、ユーザーの言葉の裏側に隠されている価値観を見つけてくるのは至難の業です。さらにユーザーインタビューは時間が限られていることも多いため、その難易度は上がります。
しかし、何回かインタビューをやる中でわかってきたオススメのアプローチがいくつかあります。

【アプローチ1】 休日の過ごし方や趣味について詳しく聞く

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「趣味はなんですか?」
「休みの日は何をしていることが多いですか?」

この質問はサービスと全く関係のない質問のように聞こえますが、実は価値観を掘り下げるにはちょうどいい質問です。

もし答えとして「休みの日はネットサーフィンをしてることが多くて、特に新商品をチェックするのが大好きです」などといったものが返ってくれば、この人は新しいもの好きのアーリーアダプターだ、という属性や価値観がなんとなく見えてきます。

このような質問は、ユーザーが普段どんな文脈でサービスを利用しているかを明らかにしてくれることもあるため、なるべく長めに時間を取って聞くようにしています。


【アプローチ2】 インタビューの聞き手が知りたいことを直接ユーザーに質問しない

「あなたはアーリーアダプターですか?」
「あなたは新しいもの好きですか?」

「はて、、そんなことを聞かれても、、」
こういう質問をもし自分自身がされたら、すぐに答えられますか?
たいていの人は、困って数秒間考えてしまうと思います。

もし仮に、こういうことを聞きたかったとしても、直接質問することはあまりオススメできません。

そもそも普段から自分のことを客観的に分析できている人は少ないためです。

なので、もしユーザーの属性や価値観などについて知りたい場合はさきほどの例のように、「趣味は?」「休みの日は何してますか?」などユーザーの行動や習慣を「事実ベース」で聞き出し、それらを分析しながら答えを出すことをオススメします。

【アプローチ3】 クローズド型質問をできるだけ避けて、オープン型質問をする

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クローズド/オープン型質問は心理学で使われる考え方ですが、
クローズド型質問とは、答えがYesかNoのどちらかに限られる質問です。
たとえば、

「この機能を欲しいと思いますか?」
「このUIは使いやすいですか?」 

などです。これらの質問はそこで会話が終了してしまうというデメリットがあるだけでなく、答えがYes / Noで終わってしまうため、その回答の後ろに隠されたユーザーの考え方を引き出すことが難しいです。

一方でオープン型質問は

「こんな新機能を考えているんですが、どう思いますか?」
「このUIについて、どう思いますか?」

など、回答の方向性が限られていない、文字通りオープンな質問です。
ユーザーが自由に回答できるため、話もはずみやすく、意見などを聞き出しやすい質問形式となっているため、積極的に活用することをオススメします。

これからも、ユーザーインタビュー修行の旅は続く

さて、今回紹介するアプローチは以上で終了ですが、まだまだ他にもたくさんインタビューをより良くするアイデアやアプローチはありますし、今後もインタビューに取り組む中で見つけていければと考えています。より良いプロダクト・サービスづくりのために、修行の旅はまだまだ続く...

参考図書

ユーザーインタビューの歴史は古いようで、数多くの関連書籍が出版されています。その中でも特に参考になるのがこちら。

10年間で約10万人のインタビューを行ってきた著者が、実際の具体的な事例を交えながら実りのあるインタビューにするためにはどうすればいいのか、実践方法について紹介してくれる良著です。今回の記事も一部こちらを参考に書かせていただきました。

2004年に出版されているようですが、15年経った今でも現場で活用できるノウハウが詰まっています。

※この投稿は、Makuake Development Team Advent Calendar 2019 23日目のエントリーです。

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