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正解のないサステナビリティに向き合い続けて。「Sustainability College」で広がる実践者の輪【NPOグリーンズ】

互いに信頼し合える間柄であるからこそ、営利関係を超え、未来の可能性を共創できる。そう信じるわたしたちは、「恋に落ちるくらい好きになった相手と仕事をする」ことを大切にしてきました。

共に未来を創っていくパートナーでもある団体や企業の方々を紹介する本企画、『わたしたちが恋に落ちた、あの人』。社会課題解決の現場で挑戦されている皆さんの想いや葛藤、そして弊社とどんなコラボレーションが生まれたのか、対談を通じてお届けしていきます。

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今回取り上げるのは、NPO法人グリーンズとの共同事業「Sustainability College(サステナビリティ・カレッジ、通称:サスカレ)」。Sustainability Collegeは、2020年10月に開講したサステナビリティを継続的に学ぶオンラインスクールです。今回はSustainability College開講に込めた想いや2年間で感じた手応え、これからの展望を伺います。

お越しいただいたのはSustainability Collegeの「学級委員長」でNPO法人グリーンズ共同代表の植原正太郎さん。同じく「学級委員長」であるmorning after cutting my hair代表の田中美咲が対談相手をつとめます。

/// LOVERS /// NPO法人グリーンズ
人・社会・自然の関係性のデザインを探究して「いかしあうつながりがあふれる幸せな社会」を目指す非営利組織。2006年に創刊、今年16周年を迎える非営利メディアWEBマガジン「greenz.jp」、「グリーンズの学校」などの運営を行う。(WEB:https://greenz.jp/

「大人の社会科見学」で気づいた、コミュニティで学び合う意義

——2020年10月に開講した「Sustainability College」は、morningとNPO法人グリーンズ(以下、グリーンズ)との共同事業です。このコラボレーションが生まれたきっかけを教えてください。

植原正太郎さん(以下、敬称略):
グリーンズは「いかしあう社会」に向けて、情報発信や学びと実践の場作りをしています。当初「エコ」をメインに扱っていたWEBマガジン「greenz.jp」は、2011年の東日本大震災をきっかけに、地域社会や教育福祉など扱うテーマが広がっていきました。
2015年国連でSDGsが採択されて以降、社会全体でも「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」「ESG投資」などの考え方が広まってきていて、サステナビリティというテーマがメインストリームになってきている感覚がありました。ビジネスセクターであっても、サステナビリティに無関心ではいられなくなってきている状況下で、本質的な知識を得た上でアクションを起こすことが求められている。そうした潮目の変化を感じていた2018年頃に、僕自身ももっと色々なものを見て勉強しないと、と思い始めていたんです。ちょうどそんな時、美咲ちゃんから「大人の社会科見学」のお誘いが来て。

田中美咲:私も2020年まで代表として運営していた一般社団法人防災ガールでの活動を通して、自然災害が発生する根幹の原因は私たち人間の消費行動と分かってはいたものの、環境問題やゴミの問題を構造的に学んだことがなくて。オンラインでも簡単に情報が取得できるけれど、現場に行けばもっと吸収できるのではという想いもありました。ただ、個人だと行きづらいから「大人の社会科見学」と銘打ってみんなで行こうと思ったんです。

ナカダイでの「社会科見学」の様子

正太郎:僕たちがまず行ったのは、「ナカダイ」という産業廃棄物の中間処理施設。廃材を活用してアート作品やおもちゃが作れるなど、廃棄物リサイクルというテーマをポップかつポジティブに発信して、世の中に関心を持ってもらう先進的な企業でした。

「大人の社会科見学」に行ってみて、色々な視点を持つ人が集合して同じものを見ると、学びが何倍にも増幅するんだと感動しました。ここで得た価値ある経験を、何か形にしたい。さらにサステナビリティという領域も広く、簡単に捉えられないテーマだからこそ、体系的に学び実践する場やコミュニティの存在が必要だと思いました。僕たちグリーンズはコミュニティ運営の知見があったので、美咲ちゃんに「この社会科見学をオンラインスクールという形でやってみない?」とお誘いしたんです。

——お二人の課題意識を解消するヒントが社会科見学にあったんですね。お二人はもともとお知り合いだったとか。良い関係性を築いているのがよく分かります。

正太郎:美咲ちゃんは世の中の社会課題を自分ごととして捉えて、強い正義感を持って取り組むパッションの持ち主。コミュニティの運営は、熱源になるようなパッションを持っている人が必要なので、まさに彼女は頼もしいパートナーだと感じました。同い年の社会起業家かつリスペクトしている友人の一人として、一緒に何かをやってみたいという気持ちもありましたね。morningにも単純なクライアントワークではなく、信頼関係やパートナーシップを築き一緒に課題を解決していく姿勢を感じて、とてもいいなと。

美咲:ちょっと恥ずかしいですね(笑)。morningは、緻密に計画を立てて戦略を実行していく人が多い。一方、正太郎くんをはじめとしたグリーンズは、良い意味で“余白”があって、肩の力が抜けていて。同じ志を持ちながら、異なる仕事のスタイルを持っているところに惹かれたんですよね。なので、こうして一緒にコミュニティ運営を始められたことはとても嬉しいです。

「大人の社会科見学」の様子(写真左下:植原さん、中央下:田中)

受講したことが日常へも繋がっていく、「星座」のように広がるサステナビリティの学び

——Sustainability Collegeは「有機的なラーニングコミュニティ」というコンセプトを掲げています。どのような議論を経て、コンセプトやプログラム内容を決めていったのでしょうか。

正太郎:
一般的なオンラインスクールは、講師の話をインプットして終わり、という一方向のものが少なくありません。でも、Sustainability Collegeは「ラーニングコミュニティ」として、体系的な学びと実践の場にしたいという強い想いがありました。環境問題や気候変動といった課題は、関心を持つだけではなく、一人ひとりがアクションに落とし込み、実践していくことが大切だからです。座学で知識を得るだけでなく、学んだことをきちんと実践すること。そしてコミュニティを通して、受講生同士のコラボレーションが生まれることも期待していました。

美咲:受講生同士で自発的に議論が活性化したり、コミュニティ内で情報収集や新たなチャレンジが生まれてほしい。そう思って、プログラム構成も専門家や「実践者」を呼ぶ講師回と、受講生が学び合うゼミ回の2回に分ける設計にしています。講義以外の時間にも、宿題を設定したり、コミュニケーションツールで受講生同士が質問や交流できるようにしたり。ただ学んで終わりにならないよう、実践に落とし込んでもらうための仕組みづくりは非常にこだわりました。

Sustainability Collegeのカリキュラム全体像

——弁護士や企業、スタートアップ、大学、研究機関、NPO・NGOなど、多様なバックグラウンドを持つ講師の方々をお招きしてますよね。講師陣の決定にも、お二人の想いが反映されているのでしょうか。

正太郎:そうですね。サステナビリティと一言で言っても、再生可能エネルギーから人権問題に至るまで、扱うテーマは非常に多岐に渡ります。多様なバックボーンを持つ講師からさまざまな視点を学ぶことによって、いざ日常生活や仕事のなかで実践しようとした時に「星座」のように点と点が繋がってくれるといいなと思ったんです。

美咲:あとは、知名度にかかわらず、良い取り組みをしている方をお呼びしようとも決めていて。例えばナカダイのように歴史ある中小企業は、どんなに先進的な取り組みをしていても一般的に広く認知されづらい。サステナブルが一種トレンドのようになっている今の時代だからこそ、そういった企業や人から学べることはたくさんあると思ったんです。

多様なバックグラウンドを持つ「実践者」の輪は約100名に

——現在6期目の募集を終えたSustainability Collegeですが、どんな方が受講しているのでしょうか。

美咲:大企業のSDGs担当者やスタートアップ経営者、NPO職員、区議会議員や学生まで、多様なバックグラウンドを持った方々が集まっています。ただ全員に共通しているのは、「実践者」であること。先ほどもお伝えしたように、Sustainability Collegeではコミュニティ内で学び合う関係性を作りたかった。そのため、ただサステナビリティに興味があるという方より、実践する場所や意思を持っている方を対象にしたいと思っていました。

正太郎:「実践者」というのは、関わっているプロジェクトの大小には関わりません。社会的インパクトがたとえ小さかったとしても、自分のアクションとして動こうとしている方とご一緒したいという考えがあったんです。
現在受講生は、約100名ほどになりました。決まったタイミングでの卒業制度があるわけではないので、1期からずっと「サスカレ生」のまま継続してくれている方もいます。リアルタイムの講義の他にアーカイブで視聴してもらえるようにしているので、仕事や家庭が忙しい方も自分のペースで無理なく続けられる仕組みにしています。

NPO法人グリーンズ共同代表 植原正太郎さん

——morningはWEBサイトなどの制作にも携わっています。クリエイティブの世界観を作る上でこだわったポイントはどんなところでしょうか。

美咲:学校をコンセプトにしているので、「ゲスト」ではなく「講師」、「参加者」ではなく「受講生」と呼んでいるのが特徴ですね。私や正太郎くんも「学級委員長」だし、運営事務局は「生き物係」。「責任者」というより、私たち運営陣も共に学び合う仲間の一人だ、という想いを込めました。

正太郎:僕たちも共にサステナビリティを学ぶ「実践者」の一人として、受講生の皆さんと同じ目線を持ち続けたいとは常々思っています。そのフラットさはコミュニティの空気にも伝播していくと思うから。僕たちが一番楽しむ姿勢は大切にしていきたいですね。

正解がないサステナビリティ。共に学び、応援し合える仲間とのコラボレーション

——実際にコミュニティの中で生まれた相乗効果や、Sustainability Collegeの学びを本業で実践した例はありますか。
美咲:コミュニティ内では、「サステナブルファッション部」「ESG投資部」「ビール部」など課外活動・部活がいくつか立ち上がっていて。例えば「ビール部」は、環境に配慮したサステナブルな醸造所を造ろうとしている受講生が発起人。みんなでビールを飲みながら、醸造所ができあがる過程を体験したり、本を読み合ったり。まさにSustainability Collegeだから生まれた活動という感じで、面白いですよね。

morning after cutting my hair 田中美咲

正太郎:Sustainability Collegeでの学びやコミュニティが本業のビジネスに活きた例もたくさんあります。本業で産業廃棄物処理のコンサルティング事業をやられている受講生の方が、Sustainability College内で出会った方とコラボレーションするという話を聞いたときは嬉しかったですね。他にも、講義をきっかけに一念発起して、長年勤めた会社を退職したという方も。

これらはビジネスシーンで普通に名刺交換をする出会いからでは生まれなかったコラボレーションや変化だと思っていて。Sustainability Collegeを通して、志や価値観が共有できている「実践者」同士だったからこそ実現したことばかりだと思っています。Sustainability Collegeを始める2年前に想像していたより、はるかに素晴らしい相乗効果が生まれているのは非常に嬉しいですし、手応えを感じる瞬間です。

——他にもSustainability Collegeを通して手応えを感じた場面があれば教えてください。

美咲:受講生からは「仲間ができて嬉しい」と感謝のコメントをもらうことが多くて。というのも、事業やプロジェクトに志高く取り組む人はまだ組織の中でも少数派で、孤独に闘っている人が多い。Sustainability Collegeで同じ熱量や志を持った仲間に出会えて、それぞれ応援し合えるような良い関係性が築けているということなのかなと思っています。

また、講義の最後に繰り返し伝えているのですが、サステナビリティに正解はありません。だからこそ、まずは自分の頭で悩み、考える時間は大切にしてほしくて。ただ、一人で考えると答えが出ない問題も多いから、そういう時は「みんなはどう思う?」と相談できる場としてSustainability Collegeを活用してくれているなら嬉しいです。

正太郎:講師でお招きした方がSustainability Collegeを愛してくれて、「サスカレ生を採用したい」とまで言って高く評価してくれたのは本当に嬉しかったです。morningやグリーンズも、Sustainability Collegeを通じてお仕事をお願いする場面が増えてきました。サステナビリティへの志が高い方々と出会えてプロジェクトに参画してもらえるのは、私たちとしてもありがたいですね。

Sustainability Collegeを加速させ、社会にインパクトを

——改めてSustainability Collegeの取り組みを振り返って感じたこと、今後の意気込みを教えてください。

下北沢にあるBONUS TRACKに受講生が集い、
POP UPショップやトークイベントを行う「サスカレ文化祭」のイベント時の様子

正太郎:もちろんうまくいったことばかりではなく、試行錯誤してきた例もあります。例えば、オンラインでも講義は問題なく実施できるけど、どうしてもオフラインのような熱狂の渦は生まれにくい。なのでここ一年くらい、「サスカレ文化祭」などのリアルイベントやスタディーツアーの企画など、オフラインでサスカレ生同士が交流できる場を設けるようにしたんです。リアルで生まれた熱量がオンラインにも伝播して、コミュニティの価値がさらに高まってきたと感じています。これからSustainability Collegeを3年、5年……と長く続けることで、どんどん「サスカレ生」の輪は繋がっていって、もっと面白い相乗効果が生まれるんじゃないかとワクワクします。今後もずっと大切にしたいのは、「学級委員長」である僕たちが楽しむ姿勢。「ビジネスとしてどう成立させるか」ももちろん重要ですが、それ以上に私たちがワクワクし続けたいですね。

美咲:これからSustainability Collegeが、より社会を変えていく一助になればいいなと思っていて。環境負荷や人権問題など、早急に手を打たなければいけない課題も多いので、実際にアクションを起こし、社会にインパクトを与えられる人がSustainability Collegeからたくさん輩出できたら本望です。そのために、より参加しやすい形や継続的な運用ができるコミュニティにも変化させていきながら、私たちもSustainability Collegeをもっともっと加速させていかないと、と気を引き締めているところです。

ご出演
NPO法人グリーンズ
HP / Twitter

(取材・執筆:安心院彩、編集:中西須瑞化)

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morning after cutting my hairでは、企業・団体の皆さんの価値観や大切にしている想いを細やかにヒアリングし、議論を重ねた上で、「本質的な社会課題解決」を加速させるご提案をさせていただきます。
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