お題：【心お弁当】
コロナの影響で会社に行く夫の弁当持参が普通になり、
朋子は朝からキッチンに立っていた。
 
初めは面倒だったが、
外で働く夫の力の源を作るという自負が芽生え、
そんなお弁当を“心お弁当”と呼んでいた。
専業主婦をしている朋子にとって、
いつしかお弁当作りが喜びになっていた。

その日も愛情たっぷりの出来栄えを見て
朋子は一人悦に浸っていた。

「はい、今日の心お弁当をどうぞ」
微笑みながら、
ランチバックを夫の和也に渡した。
「いつもありがとう」
和也のその言葉に、
朋子の心は満ち足りるのだった。
 
その日の夜、
和也が会社から帰ってくると
「コロナも落ち着いてさ、
同僚にランチ誘われて、
お弁当は食べなかったよ」
和也から渡されたランチバックの重みが
朋子の手にずしりと落ちた。
「そうね、コロナも落ち着いたのよね」
朋子は虚しくそう言ってから、
心お弁当の中身をゴミ箱に捨てた。
 
それでも朋子は翌日もお弁当を作り、
「今日も妻特製の心お弁当をどうぞ」
と微笑みながら和也に渡したのだった。


お昼に和也がお弁当を開ける時だった。
“ん、何だか軽いな”
蓋を開ければ、
付箋が底に貼ってあり、

“私の心お弁当は空っぽです”

と書いてあった。

（おしまい）

(^o^)v
とうとうやりました。
お題そのままの内容で480文字。
（今まで500文字以上の投稿ばかりでした）
しかも2種類の心お弁当詰めました！
参加して5ヶ月ぐらい？ですが、
仕様に適った投稿初めてです。

“好き”
いっぱいもらえたら喜びもひとしおだなぁ。

たらはかにさんの企画
毎週ショートショートnote 
投稿作品です。