見出し画像

地テシ:272 VR世界を描いたSF小説を再読したよ!

2022年 劇団☆新感線42周年興行・秋公演 SHINKANSEN☆RX「薔薇とサムライ2 ー海賊女王の帰還ー」という長いタイトルの、あまりに長いのでこのBlogでは「薔薇サム2」と、いや、もういっそ「薔サ2」と呼んでしまおうかとか思っている公演の製作発表が行われましたよ。

http://entre-news.jp/2022/07/512928.html

最近は少人数に絞った製作発表が続いておりましたが、今回は久しぶりに大人数での賑やかな製作発表となりました。会見の様子は各ニュースサイトにてまとめられておりますが、後日公式ページでもダイジェスト動画がアップされる予定(8月くらいになるかも)ですので、見逃した方はそちらもお楽しみに。


でね、その会見の会場がホテル椿山荘東京だったのです。そう、大名屋敷地から山縣有朋邸を経た、高低差の大きい庭園で有名なホテルです。屋敷地、庭園、高低差とくればもちろん私の大好物なのですが、中々行く機会がありませんからね。これは良い機会だと庭園を散歩してきましたよ。

人工雲海の演出が始まるところ

いやあ、神田川の北壁に刻まれた急峻な崖地が見事な庭園でした。

さらに、椿山荘の正門を出たところで気がついたのですが、以前から気になっていた東京カテドラル聖マリア大聖堂が目の前にあるのですよ。気にはなっていたくせに、場所については曖昧だったアレですよ。それが目の前に! いやホント、不意打ちを食らいました。ココにあったのか、と! 見つけたぞ、と! いや、別に隠れてはいなかったんですけどね。
だもんでこれ幸いとこちらも堪能してきましたよ!

上空から見ると十字型

丹下健三の設計で有名な名建築なのですが、残念ながら内部は撮影禁止。高い天井とコンクリート打ちっ放しの反響が凄い壁が印象的でした。

そんなこんなの製作発表でしたが、稽古はまだ始まったばかり。どんな作品になるやらまだ判りませんが、どうぞお楽しみに!


さて、ここからが本題です。最近になって昔読んだSF小説を読み直す機会がありましてね、という話です。しかも二冊ともVRをテーマとした作品なんです。VRというのはVirtual Reality、つまり最近話題の仮想現実ってヤツですよ。
ほら、昔の水中眼鏡みたいな形のゴーグルをつけて周りを見回すと、あたかもその世界に入り込んだように感じられるというアレ。アレです。私もOculus Quest(現Meta Quest)というVRマシンを持っておりまして、仮想現実世界でゲームをしたりしております。
最近ではFacebook社がMeta社と名前を変えて、メタバースと呼ばれるVR世界の構築に力を入れて話題になりましたよね。メタバースというのは、まあそういう最近話題のVR空間だと思って下さい。


でね、この「メタバース」という単語を作ったのがアメリカの作家であるニール・スティーヴンスンでして、1992年に発表した「スノウ・クラッシュ」という小説にそのVR空間が出てくるのです。
最近のメタバース熱の盛り上がりに呼応する形で、長らく絶版となっていたこの作品が、新版としてハヤカワ文庫から出版されたのです。私は日本で2001年に出版された旧版文庫本が大好きでして、今でも家のどこかにはあるはずなのですが、コレが見つからないんですよ。また読みたいとは思っていたのですが、家では見つからないし、絶版本だから書店でも買えなかったのです。
そんな時に新版が出るってんですから驚きました。自分が好きな絶版本の新版が書店で平積みになっていて《話題の本!》みたいなポップが付いて売られているんですから、そりゃ買わないワケにはいかないし、読まないワケにはいきますまい。そして買ったし読んだ。という流れです。

ちなみに、私は旧版を2007年に読んだようで、当時連載していたメールマガジン「貧弱ユビキタス」にて以下の様な感想を書いておりました。

「スノウ・クラッシュ」の舞台となるのはごく近未来。ネット上のヴァーチャル空間・メタヴァースが発達し、アメリカが小さな都市国家に分断されている時代。主人公はピザ宅配人かつ天才ハッカー、ヒロインはハイテクスケボーに乗りハイテクスーツに身を包んだ特急便屋の少女。他にも鋭く研いだガラスを武器にするアラスカ生まれの巨人やら、車と一体化した男やら、人間にも感染するコンピュータ・ウィルスやら、全てを知り尽くした電子執事やら、時速1100kmで走るサイボーグ犬やら、とにかくブッ飛んだヤツやモノが出てきて、こいつらがノンストップで走り回る。クールなのにコミカルなアクションSFです。

貧弱ユビキタス 第54回

先にも書きましたが。この作品が発表されたのが1992年(平成4年)でして、もうインターネットの黎明期も黎明期、ようやく個人での利用がされ始めた頃でした。
よくもまあそんな昔に、大人数が同時接続可能なVR空間だとか、Google Earthのようなリアルタイム地球儀だとかを思いついてリアルに描写できたもんです。現在ならばありそうな、そろそろ実現しそうな技術が山ほど出てきますが、30年も前にこれほど生き生きと描くことができたとは驚きです。
だからこそ、30年も経ってからも新版が発売されたりするワケですよ。

旧版との比較はできませんが(なにしろ見つからないもんで)多分中身は同じです。しかし、改めて読んでみると、まあとにかくディティールが細かい。斬新なアイデアをこれでもかと詰め込んで、しかも事細かに解説しながら、しかもハイスピードで走り抜けるのです。当時の書評に「ファンタスティックで徹底的にオーヴァードライブ」という表現があったそうですが、まさにそんなカンジ。

今年一月の発売ですからさすがにもう平積みにはなっていないと思いますが、ハヤカワ文庫のコーナーを探して頂ければまだあると思います。30年も経ってもなおかつ新しい、いや、30年も経ってそういう時代になったからこそ読んで頂きたい旧作です。


「スノウ・クラッシュ」がVR小説の嚆矢だとすれば、VR小説の決定版とも言えるのがアーネスト・クラインの「ゲームウォーズ」(SB文庫)でしょう。ほら、スティーブン・スピルバーグ監督の大ヒット映画「レディ・プレイヤー1」の原作ですよ。
私はこの小説が大好きでして、いや映画版も大好きなんですが、小説の方はもう5~6回は読んでいると思います。まあ映画の方も5~6回は見てるけど。
でね、つい先日、友人に長らく貸していたこの「ゲームウォーズ」が返って参りまして。すっかり忘れていたもんだから嬉しくなってしまいましてね。久しぶりに読み返してしまったというワケです。

いやあ、やっぱり面白いわ! 久しぶりだから改めて新鮮に読みましたけど、こちらも細かい小ネタが満載で、しかも展開が早いからスルスル読めます。勢いで映画版も見直しちゃった。

ちなみにこちらも以前Blogにてオススメ感想文を書いておりました。一部だけ抜粋しますと、こんな感じです。

その大金を残したOASIS開発者ジェームズ・ハリデーは1972年生まれ。少年時代を過ごした80年代に相当な思い入れがあるらしく、謎を解くヒントがことごとく80年代のギークカルチャーなんです。ええと、geekって判りますでしょうか? 日本語で言えば「オタク」に近いのですが、ちょっと違いますかねえ。あるいは、ナード(nerd)でも構いません。ギークもナードも、まあ大雑把に言ってオタクっぽい人のことです。
ここでいうギークカルチャーというのは、80年代以降に流行したPCゲーム、ビデオゲーム、ゲームブック、テーブルトークRPG、SF映画、SF小説、ファンタジー、コミックス、アニメ、特撮、ホームコメディ、ロック、パンク、プログレ、etc...etc...
とにかく、80年代にティーンエイジャーだったギークたちみんなが夢中になったポップカルチャーがてんこ盛りなのです。そして、私は1964年生まれ。ハリデーよりも8年ほど年長ですが、大して変わりはありません。私も80年代にティーンエイジャーだったし、ギークカルチャーにどっぷりだったし、同じような青春時代を過ごしました。だから妙にノスタルジックなシンパシーを感じてしまうのかもしれません。
要するに、この小説は大変ターゲットが狭いんです。何のことを言っているのかピンとこない描写も多いかと思われます。しかし、だからこそ私個人にはヒットしたのでしょう。40代以上のギークやナードたちにはピンポイントでヒットするでしょう。それ以外の方々でも、ある程度サブカルチャーやオンラインゲームの知識があれば面白いと思います。とりあえず、主人公たちが何故あれほど謎解きに夢中になれるのかだけでもご理解頂ければ、細かいギーク的な小ネタは流しても大丈夫かもしれません。あくまでディティールです。ただ、私はそのディティールに盛り上がっちゃったんですけどね。

テシタル地上派 第57〜58回

「スノウ・クラッシュ」と違って、こちらではVR空間が全人類の生活と密着しております。この辺りに時代の変化が感じられますかね。映画版も面白いのですが、小ネタの量とかでは原作小説の方が濃いです。その分、読者を選びますけど。

そんなこんなのVR小説再読でした。メタバースが話題となっている昨今、30年前と11年前に描かれたメタバースの世界を楽しんで見るのはいかがでしょうか。


とか纏めましたが、実は昨年にも日本人によるVR小説の新作を読んでおりまして、それがまた面白かったのよ。こちらは3年前の作品です。それは奥泉 光さんの「ビビビ・ビ・バップ」。
買ったは良いけど、余りの分厚さにためらっていた作品なんですが、読み始めたらポップな筆致と「VRとAIと猫とジャズと落語のSF的邂逅」とでもいうようなおもちゃ箱ぶちまけ具合にグイグイ読めました。
こちらについても次回か、近いうちに書いてみたいと思います。


ついでにこの7/19に発売されたばかりの最新ゲームの話題も。

私が大好きなAnnapurna InteractiveさんがPS5/PS4でリリースした「Stray」という猫ゲームが面白いしカワイイ!

猫と小さなドロイドのコンビを操って、サイバーパンク的な街を彷徨うゲームでして、猫好きには堪らないと思います。操作も簡単だし、謎も割と簡単ですから気軽に遊べます。
しかもPlayStation Plusのエクストラかプレミアム(いわゆるゲームのサブスク)に登録している方なら無料でダウンロードできるってんですから太っ腹ですよ!

しかし、猫よりもキツネの方が好きだという方には「Endling -Extinction is Forever」をオススメします。こちらはPS4/Xbox One/Switchでマルチ展開されております。

荒廃しつつある世界でのキツネの親子の生き残りを賭けたサバイバルアクションです。こちらも超カワイイ! 特に子ギツネがね、もう超キュート!
ただし、空腹度とか時間制限とか敵の存在とかの適度なゲーム性もあるので、気軽に遊ぶというよりは腰を据える必要はありますが、母キツネと子ギツネの可愛らしさについついプレイしてしまうんだよなあ。

あと、Switchでリリースされた「モヒートザキャット」という、ブロック形ネコが主人公のパズルゲームがお手軽で楽しいですよ。適度に簡単、適度に難解。しかも8/9までは100円にてセールされていますから、気になる方はチェックしてみて下さい。


猫とかキツネとかネコとか。今週は動物ゲームが豊作でしたね。動物好きの人は、ぜひ!


この記事が参加している募集

わたしの本棚

SF小説が好き