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朝の効力

ロトルアという街で、少しまちの外れにあるfunky backpackerというゲストハウスに入った。
名前に反して暖炉があったり、壁画があって孤独さを紛らわしてくれる暖かい宿だった。
夜も更けもう寝ようかと思っていると、隣のベットのアジア人と目があった。
彼は周りのもう寝ている人に気を使い、アイコンタクトで電気を消してくれないか?とメッセージを送ってきた。まだ言葉も交わしていない者同士、言葉を用いるより自然だった。
僕は電気を消し、眠りに入った。

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翌日眩しいくらいの朝日で目を覚まし、キッチンにいくとその彼がいた。
どこかお互い気恥ずかしさと親しみを覚え言葉を交わした。


朝ごはんは食べた? 今からだよ。
コーヒーはいるかい? ありがとう。

インスタントのコーヒーを僕に入れてくれた。いい朝だった。
コーヒーをすすりながら、ほとんど初めて会った旅人がそうするように
お互い軽く自己紹介をした。彼はタイ人で休みをもらって旅をしているとのことだった。
僕もどこから来たか、今までどこを回って来たかなどを話した。
コーヒーのカフェインが効いていたせいか、それとも理想的な朝を迎えたせいか
珍しく頭が冴えていた。英語なんてとても話せる方ではないのに、
なぜかこの時だけなんの言語で話していたのか分からなくなるくらいに自然体だった。

いやー僕はノープランでね、今日どこ行こうかも決めてないんだ。
と僕は言った。
もしよかったら今日ホビットの村に行くんだけど一緒に行く?

そうして僕は彼のレンタカーの助手席に乗り込みこの後三日間に渡って彼と共に旅をした。
心配されるようなある種の怖さは感じなかった。
ただ朝の覚醒していた脳が段々起きてくると、
車内での会話は次第に減って行った。
なんだか申し訳なくなった。

乗せた彼は英語の喋れる奴だと思っただけに…


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