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食べなきゃ、やせる。〜食べても太らないカラダがほしい 2〜

前回まではこちらを。(それは、夏休みからはじまった。〜食べても太らないカラダがほしい1〜)

何が何でも痩せてやる。

そう決意した私は、その日の夕食から、「食べないで残す」ことにした。ごはんを食べ過ぎているから、太ってるんだ。そんな当たり前のことに、何で気がつかなかったんだろう。食べなきゃ良いんだというのは、すばらしいアイディアに思えた。

「今日、なんかお腹痛いから。ごはん、もういらんわ」

その日の夕飯は、魚の塩焼きだった。それと、なにか野菜の煮物みたいなものがついていた。野菜の煮物は食べたものの、魚はひとくちかふたくち、箸を付けただけで食べるのをやめた。白米も、極力食べるのをやめなければ。

我が家では、お仏壇にその日炊いたごはんを毎日お供えする習慣があった。そのお供えしたごはんは、家族四人で分けて必ず食べる。絶対に捨ててはいけないというルールがあった。家族で均等に分けると、ふたくちもあればなくなる程度の量だ。それでも、お供えしたごはんすらも食べたくなかった。率先してお手伝いをするふりをして、自分のお茶碗にはお供えしたごはんを入れないようにした。十粒程度、食べれば充分だ。

食べる量を極端に減らしはじめた私をみて、家族は不思議そうに感じていた。はじめのうちは「お腹が痛い」とか「あんまりお腹がすいてない」などとはぐらかしていたのだけれど、そんな理由が通り続けるはずもない。「残さんと食べなあかんよ。全然食べてへんやろ!」と母に言われたりもしたけれど、「うーん。でももうお腹いっぱい。いらん」といってさっさと席を立ち、食卓から逃げた。

一緒に食べていた姉はどう思っていたのかは分からない。けれど、姉も朝食は食欲がないといって、ほとんど食べていなかった。姉が朝食を食べなくていいなら、私は夕食も食べなくていいんじゃないかと、めちゃくちゃな理論を自分の中で作り上げていたのだった。

「食べない」という選択をしてから、はじめのうちはそれほど変化がなかった体重も、突然ぐんぐん減っていった。目に見えて体重が減っていくことが、私は嬉しくて仕方なかった。目に見えて減っていく数字に、快感ともいえる喜びを感じていた。夕食以外も食べなければ、もっと痩せるに違いない。そう思った私は、さらにエスカレートした。

朝食も少ししか食べない。メニューはいつも決まっていた。リンゴ1/4個と、キウイ一個。12枚切りの薄い食パンを一枚。(これも残すことがあった)牛乳をすこしだけ。緑茶をコップに一杯。

ありふれた二段重ねのお弁当。下の段にお米が入り、上の段にはおかずが入っているタイプのものだった。けれど、当然のように「食べられなかった」と言っては残した。ひどいときにはお弁当の中身を食べずに捨てて帰ることもあった。二段あったお弁当箱は、あるときから一段だけになった。それでも、食べきれない、ということも多かった。

極端に食べない、ということを選択したため、あっという間に体重は減っていった。クラスの人たちも「何かめっちゃ痩せたな! 大丈夫?」と心配してくれたこともあったけれど、「全然大丈夫。なんか夏バテしてから食欲なくなってん」とごまかしていた。

秋から始めた極端なダイエットで、56キロあった体重は、あっという間に40キロくらいに落ちていった。だけど、もっともっと、痩せたかった。「何キロまでやせる」という目標があったわけじゃない。けれど、「やせられるところまで、やせたい」という気持ちが強くなっていて、もう止められなくなっていた。

最終的に、一番痩せたころの体重は28kgくらいだった。


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