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摂食障害時の日常生活〜食べても太らないカラダがほしい9〜

前回のお話はこちら 吐き出すと、すっきりする。それは確かにそうだけど。〜食べても太らないカラダがほしい8〜(嘔吐に関する具体的な記述があります。ご注意ください)

思い切り食べ物を胃に詰め込んで、指を突っ込んで意図的に吐き出す。摂食障害のなかでも「過食嘔吐症」と呼ばれる症状だ。

大学一年(18歳)の冬に発症した過食嘔吐の症状は、結婚後までのおよそ十年間続いた。

ただ、十年の間、ずうっと吐きっぱなしかというと、そうでもない。

もうどうしようもなく「食べなければ……。食べて吐きたい」と無性に感じて食べて吐き出すのが止められない時期ばかりが続く訳じゃなかった。「食べて吐くなんて、私はどうかしてる。身体にも良くないし、お金もかかるし。なんてムダな行為なんだ」と思っている時期もあった。

どういったときに「吐きたい」と思うのか。また、「吐くなんて非効率的。もうやめよう」と思ったのか。

正直なところ自分でもよく分からない。食べて吐かずにいられるときは、自宅で、ひとりでもおにぎりとサラダの夕食、とかでも十分満足だった。けれど、むしゃくしゃして止められなくなってしまうと、そこからはまた食べて吐かなきゃやってられない、という日が続いた。

このサイクルは症状が出ているときと出ていないときは3ヶ月ずつくらいだったように思う。いま考えてみると、ひとり暮らしのアパートで、時間の使い方が分からなくて、急に不安が襲ってくると、過食嘔吐の症状が発症していたようだ。ダイエットがしたい、体重を減らしたい、というだけが原因じゃなかった。食べて吐き出すことですっきりする、という過食嘔吐の行為そのものに依存していたように思う。

ただ、一旦そのサイクルにはまると、「よし! じゃあ今日もやろう」みたいな、何となく自分の中での習慣になっていた。たっぷりと買い込んだ食べ物を見て「この分量だと二セットできるな」などと、筋トレのような感じで挑んでいた。

食べ物を吐き出す行為に対して強い罪悪感を感じることもあれば、全然気にならないときもあった。

いま思えば、なぜそんな探求をしていたのか不思議だけれど、食べて吐き出しやすいように食べ方の工夫も行っていた。例えば、食パンやメロンパンを食べる場合に、パンだけだと喉に詰まるため、水分が必要。しかし、冷たい飲み物はパンとすぐには馴染まないから、ちょっと温めたほうがいいなとか。海苔で巻かれたおにぎりや太巻きは、ちゃんと噛まないと、吐き出すときに海苔がつらい、とか、柔らかいシュークリームやらクリームパンなどを適度に間に挟むと、ちょうどいい……などなど、自分の中で食べる順番にもルールがあった。

過食嘔吐症は食べたものをどんどん吐き出すのでお金もかかる。効率よくたくさん食べられるものを探した。食パンや、5本入りのスナックパンとかをちょっと温めたコーヒー牛乳などと一緒にがつがつ食べた。スーパーの見切り品や値下げシールが貼られる時間を見計らって買いものに行った。バイト代が入ったばっかりの時期だと、プリンやシュークリームみたいなデザートを食べることもあった。

摂食障害に悩んでいた時、もちろん「治したい」という思いもあった。このままじゃいけない。ちゃんと病院に相談して、治療しなくちゃと不安だった。けれど、ひとりで心療内科や精神科の扉を開ける勇気もなかなか出てこなかった。

一時的に治っているサイクルのときは「この状態がずっと続けば問題ないんだから」と思って、割と楽観的だった。けれど、どうしても衝動的に食べ物を口に詰め込んでしまうときがやってきて、吐き出さずにはいられなかった。ストレスのはけ口として、過食嘔吐に頼ってしまっていたのだろう。

しかし、わたしは決意して心療内科に言ってみることにした。大学4年の秋のことだった。


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