そっと伸びるアイビーみたいに
「あ、また絡まってる」
ベランダに棚を作って、植物を育てている。
無造作に伸びたアイビーのつるを、私はハサミでぱちんと切り落とす。
「初心者向けだし、強い植物ですよ」と勧められた、鉢ひとつだけだったのに。
アイビーひとつじゃさみしいかな、なんて。
理由を勝手に作ったりして。
フラワーショップに通うたび、手に取る鉢だけじゃなく、会話も少しずつ増えていく。
「ぼくはこの子、好きなんですよ。ころんとして可愛くって。南国の植物だから育てるのに少しコツがいるんですけど」
わからないことがあれば、相談して下さいと、その言葉を間に受けて、ベランダへとお迎えしたガジュマル。
彼が好きだと言う植物を眺めているだけで、満足だったのに。
何度切り落としても、また絡み付くアイビーのように。
触れられたならば、どんなにいいだろうか。
切り落としたつるをどうしても捨てることができない。
水を張ったコップに、私はそっと浮かべて笑った。
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