夜の八時に呼吸して【システマをまなぶ】

「カルチャースクールがお休みになる」という電話を受けたのは、三月の初めごろ。もうずいぶん前のことのように感じる。

月に二回、カルチャースクールでロシア武術「システマ」の講義を受けていたのに、それができなくなった。

ちょうどそのころ、ダイヤモンド・プリンセス号から下船した方が、その後、トレーニングジムに通っていた。そのことで感染が広まった……という業種を名指しした報道がはじまったころだった。

クルーズ船の部屋の中で閉じこもっていた人が、思いっきり身体をうごかしたくなるのは分かるけど、トレーニングジムは閉鎖空間かもしれないなあとぼんやり考えていたことを覚えている。

身体をうごかすことは良しとされているものの、濃厚接触を避けなくちゃいけない。カルチャースクールを主宰する立場として、その場所から感染を広げてしまうのは避けるべきという判断だろう。

もっとも、駅前の商業施設のなかにカルチャースクールはあったし、換気が十分できているとも言えない。判断としては間違っていないんだろうと思う。

しかし、そうなるとシステマのトレーニングから離れてしまう。自主的なトレーニングとして4大エクササイズ(プッシュアップ・スクワット・シットアップ・レッグレイズ)を自宅でやることはできる。エクササイズとか、トレーニングの本をいくつか購入しているので、それをみながらトレーニングすることもできる。

ただ、「これで合ってるのかな……?」という不安があった。2月末のトレーニングで「姿勢が崩れているとダメ」ということを学んでいた。

やみくもにトレーニングをするんじゃなくて、身体をうごかす時に何を意識するか、わたしはまだ全然分かっていなかった。見よう見まねで動いているつもりだったけれど、見まねもできていなかった。

体の動かし方を意識したり、頭で考えている余裕なんて実戦で与えられるわけじゃない。(実戦でシステマを使うような場面にはできるかぎり遭遇したくない)けれど、「身体を動かせている」と言える状態ではないわたしにとって、プッシュアップやスクワットは体力をつけるためには良いけれど、システマのトレーニングになっているのか疑問だった。

ただ、そうこうしているうちに、システマ東京の北川さんが「ZOOMクラスを始めます」と言ってくれた。はじめは週に一度、土曜日の夜に一時間半程度だった。

4月8日からは、ほぼ毎晩「システマzoomクラス」が開催されることになった。いまは夜八時から一時間。

はじめのころは、思いのほか時間が上手く調整できず、アーカイブを見て練習。「なぜこの動きをやるといいか」という説明もていねい。普段のトレーニングではそこまで言葉での説明はされないし、本当に基礎中の基礎(でも大事)なところ。

でも、すこしずつ理解を深めていけるし、ひとりでできるトレーニングは無限にあること(!)も分かる。ただ、そのやり方が分かっているようでわかっていなかったので、zoomクラスは本当にありがたい。

プッシュアップをするときの呼吸、胸の使い方や動かし方など、カルチャースクールで一度は学んだこともある。けれど、胸と骨盤の連動する動きとか、腕を伸ばすと胸が開く、など、より具体的な動かし方を教わることができる。

身体の動かし方をきちんとわかっていて、十分に動ける人にとっては「これがシステマ?」と思うかもしれない。

けれど、身体全体、滞りなく動かせることがシステマにとって重要な要素である。いまzoomクラスでおこなっていることは、見よう見まねで「できているような気になっている」よりも、多分すごく大事なところだと感じている。

システマをやるつもりはないけど……という人にとっても身体の動かし方や無理のない呼吸を合わせたストレッチの方法なども教わることできる。気になる人は限定配信のアーカイブを見て、一緒にやってみてほしい。一畳くらいのスペースがあれば多分問題ない。猫背の人とか、胸を開くエクササイズがいいはず。(わたしは、猫背で巻き肩。控えめにいっても最悪の姿勢……)

毎日この時間になるとシステマをやるから、という一日の流れに組み込まれ始めたのも良い。夜の八時から一時間システマやって、その後にお風呂。システマの30分前には夕飯を食べ終えておきたいから……と、一日の最後に身体を動かすルーチンになっている。

「画面の人と、動き全然違うじゃん」と夫に笑われようとも、プッシュアップのときにネコが邪魔してこようとも。zoomクラスでほんのちょっとでもレベルアップしたいのだ。




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