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おいしい誘惑

「あ、ソフトクリームだって! 食べたいなぁ」
売店のポスターを見かけると、姉は幼い子供のようにぱたぱたっとビーチサンダルの音を鳴らして駆け寄っていった。ビーチサンダルから跳ね上がる砂が足に絡みついている。


「おねえちゃん、夕飯食べられなくなるよ? 宿の夕飯、グレードアップしたからキンメダイの煮付けになるって、楽しみにしてたじゃん」
「たっぷり泳いだし、大丈夫だよ」
姉は自信たっぷりに頷いて、うーんバニラか抹茶かと悩み始める。

昔みたいに海水浴に行きたいねと相談して、姉妹で夏休みを合わせ伊豆へ二泊三日。
幼いころに家族で泊まった民宿の名前は憶えていなかったけれど、海の感触は肌が忘れていなかった。

一日中太陽の下にさらされた肌はほてり、日焼け止めを塗りわすれていたふくらはぎは、ぴりぴりと熱い。

「ナミちゃん、バニラと抹茶の両方頼んで、半分こしない?」
しょうがないなあといいながら、わたしの顔もほころんでいく。

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