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行政書士の仕事は素敵だと思う

「台湾生まれ 日本語育ち」(温又柔/白水社)というエッセイ集を読みました。

この本を読んで考えたことを少し書いてみたいと思います。

この本の中の「永住権を取得した日」というエッセイに行政書士が登場します。
行政書士が登場するとは知りませんでしたが、
ある事柄に強く興味を持っていると、
不思議とたまたま出くわすことがあるものですね。

この本を読んだのは台湾に興味があったからです。
きっかけはランチです。

よくランチを食べにいく馴染みの台湾料理のお店があります。
台湾料理全般に言えるのかどうかわかりませんが、
どの料理もとてもやさしい味で、いつ食べてもとてもホッとするのです。

このお店は家族経営。
店主(ママさん)と娘さん、甥っ子さんでお店を回しているのですが、
お客さんへの接し方がとても温かいんです。
その温かさを求めてやってくる常連のお客さんが多いような気がします。
ついつい足が向いてしまうのです。

そもそも台湾は、かつて日本が50年間統治していたところであり、
そのような歴史について、詳しいことは学校であまり教えてもらった記憶がなく、
社会人になってから自分で少し勉強して興味を持つようになっていったように思います。

この本の著者である作家の温又柔(おん・ゆうじゅう)さんは、
台湾人を両親に持ち、ご自身も台湾生まれなのですが、
両親の仕事の関係で、2歳の時から日本で暮らしてきました。

温さんは小さい頃から日本で暮らし、日本の学校に通い、
日本語を話してきました。
両親は日本の統治が終わったのちの台湾で教育を受けてきたため、
中国語を「国語」として使ってきました。
一方、祖父母は日本の統治下で日本語を「国語」として育ってきた人です。
そのため、中国語よりも日本語を上手く話します。

そういう複雑な事情も語られていて勉強になります。

温さんが、自身の在留資格が原則として就労が認められない
ものであると知ったのは、
日本に住む外国人の子供たちに日本語を教える仕事を始めた時だといいます。
仕事をしようとするまでそんなことを考えたこともなかったのではないでしょうか。

別の在留資格を持つ家族の被扶養者として
日本に留まるための在留資格である「家族滞在」という資格で
日本で暮らしてきたのだということを初めて温さんは知ったのです。

「家族滞在」の外国人は原則として働くことが許されていない。
働きたい場合には「資格外活動許可」を申請する必要がある。
ただし、許可がもらえても週28時間の範囲でしか働くことができない。

そこで温さんは「資格外活動許可」を申請して許可を得ました。
しかし、小さいときから日本で育ち、日本語を話し、
日本人と同じように暮らしてきたにもかかわらず、
日本の国籍がないというだけでそのような不都合が生じることに
違和感を覚えました。

そのときに出会ったのが行政書士。
その行政書士はとても誠実な人柄で、
親身になって相談に乗ってくれたそうです。

それ以前にも、大学を卒業する際、
「永住権」を求めて申請したことがあるけれども、
「永住を許可するに足る理由がない」とのことで認められなかったそうです。
温さんはそのことを行政書士に相談しました。

そのとき行政書士は、「永住権」を申請する前にまず
「家族滞在」から「定住者」に切り替えておくことを提案しました。
「定住者」の在留資格で、継続して5年以上日本に滞在した実績があれば、
「永住権」が取得しやすいと説明されたのです。

温さんはその勧めにしたがって「定住者」の資格を取得。
その後「永住権」取得のための上申書について
行政書士からアドバイスをもらって「永住権」を申請します。

幼いころから日本人として日本語を話し、日本で生活してきたにもかかわらず、
「永住者」という在留カードを持たなければならないことには複雑な思いが
ありつつも、無事に永住権を取得したということです。

この解決方法を読んで、
「なるほど、そういう方法があるのか」と感心しましたが、
まだ実務を勉強していない私にはきちんと理解できるものではありませんでした。
私を含め専門的な知識を持たない一般の人にはとても思いつかないことだと思います。

でも、単純に「行政書士ってカッコいい」と思ってしまいました。

やはりその道のプロである行政書士だからこそ提案できることなんですよね。

行政庁(出入国在留管理局)の職員さんも、
個別の状況や、申請者の気持ちを理解して、
なんとかしてあげたいと思う部分もあるのではないかと思います。

とはいえ、法令に基づいて仕事をしているのであって、
法令に基づかない処理をするわけにはいかないですし、
申請されてもいないことを積極的に提案することはできないでしょう。
そういうジレンマを抱えながら仕事をされているのではないでしょうか。

申請者と行政庁の両者にとってうまく解決できる方法はないか?
両者の間に立って、法律に沿った解決の方法を見つけられないか?

その解決策を見つけて提案することができるのが行政書士なんですね。
この本を読んで強くそう思いました。

行政書士は専門的な知識に基づいて、市民の利益になることを提案し、
手助けをすることで社会の役に立つことができるのです。

行政書士は本当にやりがいのある素敵な仕事だと思います。

ちなみに、
この本の行政書士に関係する箇所だけをすごく簡単にまとめてしまいましたが、
エッセイ自体はもっと多くのことが話題にされていて、
とても興味深い内容ですので、ぜひたくさんの人に読んでもらいたいです。

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