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スモールM&Aで実現する「理想の起業」と「幸せな出口」

この「わらしべM&Aノート」では、読んで字のごとくM&A、特に中小零細企業や個人事業を対象にしたM&Aに関するノウハウや考え方を書いていきます。

主な切り口は以下の通りです。今後、週一ペースで内容を深堀りしていきますので、少しでもご興味がありましたら、どうかフォローをお願いいたします。

  • M&Aを用いてリスクを抑える理想の起業

  • 買った企業の価値を高める経営の実践

  • 引退する際の幸せな出口を作る方法

上りと下りのエスカレーター

私はM&Aアドバイザーであり、IT(主にWebマーケティング)のコンサルタントでもあります。Web関連に関しては、これまで20年以上事業として携わってきて、多くの経験をしてきました。1997年にアメリカで始めていますので、かなり早い方の事業者だと思います。

主にネット関連に関する著書は、こちらのAmazon著者ページにあります(イラストより少し髪はあります笑)。

これまで、国内外で4社を経営してきました。3社は主にIT、マーケティング系の事業ですが、1社は約5年前に事業継承した、製造業向けの小売業(工業油剤の製造販売)です。

これらの詳細は、長くなりますので他の機会に譲りますが、この製造業向け小売業は、今までのIT系とはいろんな意味で対照的です。製造業は、国の屋台骨を支えている重要産業ではありますが、産業の伸びしろも社員の平均年齢もIT系とは全く異なります。

つまり、経営者として上りと下りのエスカレーターを両方経験する機会に恵まれたわけです(継承した事業は、2021年12月に事業譲渡M&Aを行いました)。

エスカレーターというのはとてもわかりやすい表現で、上りのエスカレーターはじっとしていても上っていきます。駆け足で上ると倍速です。一方、下りのエスカレーターでは、じっとしてると落ちていきます。上に上るには三倍くらいの労力が必要です。

両方、経営者として経験してよくわかりますが、成長産業と、いわゆる斜陽産業(表現は適切ではないかもしれませんが、あえて比較の意味で)では、実際それくらいの差があるのです。

その中で、この両者(両業界)を比較して、中小零細、個人事業レベルのM&Aの必要性を痛感しました

と言うのは、団塊の世代約800万人が後期高齢者になる2025年には、企業経営者245万人(全体で380万社)が70歳以上になり、うち1/3が現時点で後継者未定です。70歳前後の社長で後継者を決めていない人がこれだけの数いるのです。いわゆる2025年問題です。

世代別に見た高齢者人口の推移(厚労省サイトより)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0927-8e.pdf

数字だけではなかなかピンとこないかも知れません。特にIT系など、平均年齢の低い業界にいる人は、尚更ピンとこないでしょう。しかし、実際に製造業やその周辺産業の中にいると、その現実は実感できます。

斜陽産業に夢を描くM&A

社長や社員の高齢化が進み、採用に常に苦労する製造業などを見ていると、この会社の5年後10年後はどうなっているかを想像する癖がついてきます。

それは、どこまで成長しているかという夢のある想像ではなく、生き残っているかどうか。経営者と社員の年齢、仕事の内容、年商と借入額等、確認した情報+現場の空気で想像していくのですが、多くはあまり楽観的な未来像は描けません。規模が小さな加工業者(加工の一部を請け負う工場)なら尚更です。

このような業種は労働集約型なので、仕事量に比例して人が必要です。しかし、採用は簡単ではありません。他の業種に行きたがる若者が多い中で、それでもできるだけ若い人を取るには、ある程度の環境整備も必要です。高度成長期の工場のような、油にまみれる古い環境では、新規採用はかなり厳しい。

また、この業界はピラミッド構造が強固で、メーカーを頂点に一次、二次、三次請け・・・と裾野が広がっていきます。当然、仕事の総量が減ると、ピラミッドの底辺(これも表現は適切ではないかもしれませんが)から仕事が減っていきます。

その間に中抜きの業者が何社も入りますので、ただでさえ加工費はギリギリです。中間をすっ飛ばして取引するのはご法度で、それをやると仕事が継続しません。

加えて、日本は未曽有の人口減少です。2021年は、なんと64万人減。そう考えると、農業同様、IT技術で無人化、省力化を目指すしか、将来像は描けないのかもしれません。しかし、ほとんどの中小製造業に、そんな体力はありません。巷間いわれる『製造業DX』はほぼそんなテーマで、大企業に向けたものが大半です。

では、どのような将来像を描けるでしょうか?このような業種に夢は描けないのでしょうか?

私の答えはM&Aです。より体力のある企業が吸収していき、全体の生産性を上げていく。そして、廃業ラッシュを防いでいくということです。

あるいは、同業者だけでなく、ITなどの成長産業が製造業をグループに入れるのも、十分考えられる話です。

考えてみてください。例えばEC事業者などは、ほとんどが自社でモノを作ることができません。自社商品を売っているところでも、最初はリスクを低減するためにOEMで製造を外注するケースがほとんどです。しかし、ある程度のサイズになってくると、自社工場を持った方ができる幅が広がる。そんな視点で、技術力のある製造業をグループに加えたいという会社もいるはずです。

また、実際に私が手掛けた事例で、ある自動車整備会社を運送業が買収したケースもあります。これは業種的なシナジーです。これまで多くの台数の整備や保険を外注していたものが、グループ内でできるのは、買い手にとっても大きなメリットです。

このように、斜陽産業に夢を描くのはM&Aだと、私は思っています。

そして、これは何も私のオリジナルではなく、2020~2021年の菅政権で、国策として打ち出されたものです(ここは今後詳しく解説します)。中小企業M&Aの大推進は、今後予想される廃業ラッシュに備えた、非常に有効な取り組みです。有効というよりも、それしかないのでは?と思える施策です。

M&Aのハードル

M&Aコンサルティングというのは「総合格闘技」と言われます。ビジネスの観点はもちろん、同時に法律、税務、会計など、高度な専門知識が要求されるのでそう称されるのですが、そのため、一人では到底完結できません。弁護士、会計士、税理士などとのチームワークが不可欠です。

私もこれまでに、自社事業の売買も含めて何度もM&Aに関わってきましたが、例え小規模なものであっても、M&Aの実務はハードルが高いものです。

中小規模のM&Aを推進していくためには、そのハードルをより低くしていく必要があり、そのために国は補助金や継承時に保証人を外す制度などを整備しているのですが、それでもまだ高い敷居が存在します。

そのハードルをさらに下げるべく、現在は様々なM&Aプラットフォームが存在します。これは、売り手と買い手をマッチングさせることを目的にしたもので、掲載件数が最も多いBATONZ(日本M&Aセンター子会社)やTRANBI、ビズリーチサクシード、SpeedM&Aなど、またサイトM&A(Webサイトの売買)特化では、サイトキャッチャー、SiteStock、ラッコM&Aなど、どれも特徴的なサービスを提供しています。

ただ、敷居を下げるといっても、依然として高度な専門知識が要求されるものですので、一般的にはFA(ファイナンシャルアドバイザー)と呼ばれる専門家と業務委託契約を結びます。

しかし、そのような専門家は報酬も高額(取引額によって違いますが)なので、仮に数百万円の売買で専門家を付けていると、ほとんどがFA報酬に消えていき、何のためにM&Aしたのかわからなくなるケースもあります(財務的に行き詰った救済型M&Aなどは、それでも意味がありますが)。

少額案件におけるそんな状況を避けるためには、売り手、買い手双方が、少なくともM&Aの流れを最低限理解しておくことです。もちろん、それでも契約書のチェックやDD(デューデリジェンス=企業調査)など、必要に応じて専門家に依頼する必要はあります。その費用を最小限に抑えるには、自分で流れとポイントを理解して、上記のようなプラットフォームを活用するのがベストです。FAは、セカンドオピニオン的に活用すると心強いでしょう。

私はFAを生業としていますので、そんなことを言うと自分の首を絞めるようなものかもしれません。しかし、これからの日本は、中小以下のスモールサイズM&Aがもっともっと活発にならないと、今の社会的課題は解決できません。

その意味で、売り上げや純資産の小さな会社は、可能な限り自分でできる方がいいのです。このnoteで今後書いていくのは、そんな必要最低限の知識が得られる内容です。

また、これから経営に参画する人にとっては、M&Aの流れとポイントを理解することは、経営においても非常に大きな意味を持ちます

わらしべM&Aとは

企業価値算定方法や、価値を高める方法などは、今後追って書いていきますが、ここでこのnoteのタイトルでもある『わらしべM&A』について少し。

わらしべとは、もちろん「わらしべ長者」から取っています。持っていた藁を物々交換していき、最後に大きな屋敷を手に入れるというあれです。ただ、何もラクして儲けようという主旨ではありません

企業価値を正確に把握し、適切にバリューアップをすることで、買った金額よりも高く売ることができるのを、『わらしべM&A』と柔らかく表現しています。

決して、マネーゲーム的に「サクッと買ってサクッと売ろう」と言いたいわけではありません。私の経営者としての20年以上の経験からも、そう軽々しく言うことには抵抗があります。

そうではなく、M&A起業においては、(何度も繰り返しますが)企業価値を把握し、その価値を高めることで、わらしべ長者的な資産形成が可能になるということです。売ることを想定していても、いなくても。

M&Aというのは売買です。売る方は高く、買う方は安く。それぞれの思惑は、日常の商品売買における販売者と消費者のそれと基本は同じです。もちろん、M&Aの場合は企業価値や将来シナジーを見据えての価格です。

高く売るには、企業価値を高めることです。また、売らない場合も、いい会社を作るには企業価値を高めるしかありません。利益が出ないのに社員が幸せ、経営者も満足というのは、基本あり得ないことです。

その意味で、冒頭の繰り返しになりますが、このnoteでは

  • M&Aを用いてリスクを抑える理想の起業

  • 買った企業の価値を高める経営の実践

  • 引退する際の幸せな出口を作る方法

の方法を1から書いていきます。たぶん、日本で一番わかりやすいM&Aの実務書です。また、Kindle書籍としても、数回シリーズで出す予定です。それらを読んで実践すれば、M&A企業のメリットが理解でき、自分で自社のM&Aができる(もちろん弁護士などの専門領域は別として)くらいには知識が身に付くでしょう。

よろしければフォローしていただき、経営のどんなステージでも非常に大きな武器になる『M&A思考』を、一緒に学んでいきましょう。

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