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読書感想『禁涙境事件』※ネタバレ注意

今週読んだ一冊目の本は著作上遠野浩平さんの戦地調停シリーズ第四巻『禁涙境事件』でした。
ちなみに残酷号も無傷姫も勢いのままにまとめて読んだので今日中に感想を出したいと思っています。

殺竜事件では人間の精神面にフォーカスした事件を、紫骸城事件では魔法を使ったミステリーの真骨頂を、海賊島事件ではより人の内面である執着や運命についてと様々テーマが違いましたが、今作は街というものについてだと個人的には思いました。


街の歴史というのはわりかし面白いもので、小学生のころに自分の街について調べる授業があったことを思い出しますが、どんな小さな街でも関わった人の歴史が積みあがっているなぁとしみじみする部分があります。

今回一つの街が舞台で進みますが、やはり人の思いが渦巻きすぎています。そしてそのせいで人も死にます。
ただ、それでもその街が築き上げたコミュニティや住んでいる人が街を愛している。マーゼフさんやウザクも愛していたように、そういうものだと自分も思います。
この辺の人間の描写、醜さと美しさの描写は本当にずば抜けて綺麗ですよね。


というわけで今度はミステリーのほうにも着目していきます。
これみなさんそうだったと思うんですけど、犯人が最初から分かっていたんですよね。
イーヴ・ハーヴはこの作品において『犯人でないならばいる必要のない人物』でした。最初からあやふやな立場で登場し、その上ずっといる。どう見ても何かしらの事件の犯人です。ただ、動機だけは街の人の視点だと何一つわからない。

この物語構成というか引き込む力が上遠野らしさですよね。
僕自身も殺人事件において最も惹かれる部分はトリックというより動機の部分です。そしてこの作品は動機という一点のみで引き込んでいるんです。
これは上遠野さんの描く人間の丁寧さと美しさ、現実感がなせる業だと思います。


というわけでまずは『禁涙境事件』でした。
今作での自分の好きな言葉もお伝えしようと思います。

ーーーモニカは考えている。
いつも考えていた。どうしてどこか中途半端なのか、と。しかし、今ーーーそれも無理はないということが実感できた。
世界というのは、なんと込み入っているものなのか。みんながみんな、てんでバラバラな想いや目的に突き動かされながら、勝手に動き回っているーーーその中で自分の気持ちとか夢が、綺麗にはまってくれる場所などというものはどこにも存在しないのだ、ということが。
中途半端でない訳がーーーないのだった。

p144

自分の気持ちとか夢とかを周りを押し込めてはめる人が大谷翔平やメッシのようになるのでしょう。

今作も例にもれず大好きな作品となりました。
次の作品の感想もあるので、この辺にしておこうと思います。


それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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