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読書感想『殺竜事件』※ネタバレ注意

今週読んだ本は著:上遠野浩平さんの『殺竜事件』でした。
上遠野さんの作品は『私は虚無を月に聴く』以来であり、楽しみにしていました。

今作は異世界ファンタジーの趣で、魔法が存在している世界。
調停の舞台となるはずだった地に存在する竜がある種の密室で殺害されたところから物語は始まります。
最強の存在であり、おおよそ人間の攻撃じゃ貫通できない外殻を持ち、莫大な魔力を持っている存在がどのようにして殺され、死んだのかを一か月以内解く旅が始まります。

上遠野さんといえばやはり情報の出し方がとてつもなくうまいところがあげられると思いますが、今作も美しい展開でした。

しっかりと世界が存在しており、そこから必要で効果的な部分のみを見せられるおかげものすごくテンポよく作品を楽しめます。
今作も各国を旅する形式でしたが、その過程で人となりや解決に至る情報などがどれも多すぎず、少なすぎずの丁度いい量で構成されています。
この辺の読みやすさはブギーポップシリーズでもそうですがずば抜けてうまいなぁと思いました。


今作は旅を通して醜くおぞましい人間と強く清らかな人間の二種類が対比されています。最初の国においての姫様と摂政や最後のほうでの暗殺者と最強の男など、竜と対比されたことでより強調されている人間のちっぽけさと相まって虚しさがより強まります。


結末はやはり人間の醜さが巻き起こした殺竜事件でした。それもとびっきりに醜く、悲しくなる手法でした。事の真相はかくして風の騎士に伝え事は収まるわけですがなんだか恨みの深さや手法の醜さと同時に、理由をつけて利己的に動く人間の恐ろしさみたいなものを描きたかったのですかね…


というわけで物語は終わりました。ただ、ここからが個人的には本番です。
そう、上遠野さんといえば『あとがき』です。こちらも楽しみにしていました。

そしてまたしても心に鋭く刺さるあとがきがそこにはありました。

人生から降りていると、回り道をしないといけないものである。という言葉。今のオタクたちに恐ろしく響く言葉だと思いませんか。
最近流行りの異世界転生系などを読んでる人、売れるためにとりあえずで量産している書き手、電撃の始祖のお言葉は本当に重たく鋭いですよね。

なんだか、趣味が小説やゲームの人間ですけどやっぱりここまで熱中しているのは現実逃避の側面もあるわけで、この言葉は刺さります。
人生から降りない程度に現実を受け止めつつ楽しむように心がけていきたいですね……


というわけで今週読んだ本は『殺竜事件』でした。
次に読む本は続編『紫骸城事件』です。
最近また追加で本を買ったのでこれからの日々は楽しくなりそうです。はやく『ロードエルメロイ2世の冒険』読みたい。


それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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