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読書感想『残酷号事件』※ネタバレ注意

今週読んだ二冊目の本は著作上遠野浩平さんの戦地調停シリーズ第五巻『残酷号事件』でした。
前作『禁涙境事件』で登場した(感想では全く触れなかった)残酷君がメインとなるお話であり、その名の通り残酷を体現し、背負い、巻き起こしていく怪人のお話です。


今作は作品を通してずっと暗いです。残酷ですからね。

そして今作は今までの作品すべての中で最も戦争の醜さが前面に出ています。どことどこが戦争し、そこの難民をどうするのか。中間地点の対応はどうするのか。相手国民を虐殺するのか、捕虜にするのか。新たな兵器を開発し、より効率的に相手を殺す。

そして今回はこれに巻き込まれたサトル・カルツ君の物語です。

正義の味方というものをどう捉えるかというのは人によってさまざまだと思います。僕自身はFateや物語シリーズの影響が大きすぎて、衛宮切嗣みたいなやつが出てきてしまいますが、人によってはヒロアカのオールマイトこそが正義の味方だと言う。

残酷号はオールマイト側の正義の味方です。
怨恨をパワーとする代わりに全て受け止め苦しみ傷み続けている、なのにその力はすべて弱者を守り救うためにつかう。その理由となったサトル君の過去回想は感動ものでした。

もはや当時の自分の気持ちはわからないけど、当時自分を突き動かした大きな衝動だけは覚えていて、その衝動だけで生き続けている。

醜い戦争や人間がいるとこういう人はより輝きますね。
そして何よりロードマンとサトル君、エジンとアリシャ、ロザンとネーティスなど、醜い世界だからこそ恋や愛の輝きは増すものですね。

那須きのこは上遠野に大きな影響を受けたと言っていますが、個人的に最も影響を受けているなと感じるのはこの恋と愛の描き方、在り方だと思います。運命に揺さぶられる男女とそこに存在する恋や愛の美しさやそれに殉ずる人々の描き方は似ているなぁと感じます。

それに対して私の好きな西尾維新はこの辺全然違いますよね(笑)。あの人は恋と愛が少し歪んでいて、ここまで素直で純粋な愛は読んだことがありません(笑)。それはそれで好きなんですけど。


あとがきでは正義というものについて語られています。
正義とは向く方向、使う人、使われる人などいろいろなもの次第でころころ変わってしまいます。
実際正義の味方が現れたとしてもやっぱり邪魔で恐ろしいものにしかならないんでしょうね…
現実の世界というものは残酷です。


というわけで今週読んだ二冊目の本は『残酷号事件』でした。
シリーズで最も人間の醜さが出た作品なだけあってなかなかハードでした。

無傷姫も読み終わっているので感想を出したい。めちゃくちゃ良かった。もしかしたら来週になってしまうかもしれませんが。


それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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