見出し画像

読書感想『海賊島事件』※ネタバレ注意

今週読んだ一冊目の本は著作上遠野浩平さんの戦地調停シリーズ『海賊島事件』でした。

このシリーズとても大好きで、上遠野さんの作品群の中でも群を抜いて好きなんですが、この作品もその期待を裏切ることなく素晴らしくおもしろい作品でした。


今回は殺竜事件の後の話であり、舞台は海賊崩れが建てた落日宮と海賊島の2つで同時進行していきます
落日宮の方では今回の騒動の元となるやみこ姫(漢字変換面倒…)殺人事件が起き、その結果煽りを食らうのが海賊島でした。

まずは落日宮での殺人事件について。
こちらの側では主人公が七海連合にスカウトされた商人の視点で進みます。
やみこ姫という美しい女性と猛烈にアプローチするスキラスタスに板挟みされるような形で事の成り行きを見ていた…。というように描写され進んでいきます。

そして海賊のほうは三世にわたって拡大していったムガンドゥの歴史を過去回想を中心に海賊島の成り立ちや不思議な関係性で居続けた親子三代のお話が続きます。

事件のほうはいわゆる叙述トリックでしたね。
落日宮の方で語りを務める商人が協力していたことで分からなくなっていただけで、やみこ姫の自殺だった。
最後まで美しくいたかったやみこ姫に巻き込まれてしまった人々の奔走っぷりがなかなかにリアルでした。

今回のテーマは運命でいいんですかね。
病気で長くない運命のやみこ姫、生まれた時から海賊を継ぐことになっていたムガンドゥ三世、そしてその大きな渦に巻き込まれてしまった人々の話。

やみこ姫の方で狂わされたスキラスタスはちょっと可哀そうでしたね(笑)。芸術家に真の意味でなってしまった。
そしてダイキ帝国の権力の矛先を収められない感じも現実感ありますよね。もう引くに引けない、とりあえず何か成果がないと帰れないというのは現実でもよく見る話です。

ムガンドゥ三世の方はかっこよくてとても好きです。
勝負好きなムガンドゥの血と冷静冷徹冷血なニーソンの血が見事に混じったような子供であり、この先のストーリでは表舞台で活躍する姿を見られると思うと楽しみですね。
なにより最後のシーンいいですよね。子供なんだからどんな形であれ愛があるのは当たり前ですし、お互いにズレてるから嚙み合わない。
家族の形というにはいびつでしょうけど、それでも家族の姿ですよね。

今回の話では殺竜事件組は全然関わりませんでしたね。本当にあの3人も巻き込まれただけでした。ただ各々パワーがありすぎていろいろ終わらせてしまいましたけど。

今回のあとがきは今までと比べたら抽象的でフムとはなるものの難しかったです。
勝ち負けというものについて考えるときに自分はローマ対ハンニバルについて考えるのですが、ローマは基本ハンニバルに負け続けていました。それもこっぴどく。立ち直れるギリギリまでやられても立ち上がり戦うのがローマであり、最終的にはハンニバルを研究しつくしたスキピオが倒すわけです。

この場合勝利はどこにあるんでしょう。
ハンニバルは数十万人のローマ軍を蹴散らしたが最後に大敗した。殺した和人与えたダメージで見たらハンニバルの圧倒的勝利です。
ローマは最後の最後でハンニバルを国に追い返し、二度と出てこれないようにした。最後に立っていたのはローマです。
勝利って難しいですよね。言いようにいったらまぁどちらも勝ててないのでしょうか。


というわけで『海賊島事件』でした。
今、禁涙境事件を読み始めていますが、やっぱりこの作品には飲み込まれるような感覚がありますね。


それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?