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初夏を、生きる@class of 2022🎓②

卒業式を前に、家族は「ショッピングモールに行こう!」と大張り切り。
ガウンの下は真っ白な服を着るのがトラディションであるため、
服を買いに行くというのだ。
「え~、数時間のために~?ガウンの下は見えないじゃない~?」と、
思わず私が言うと、
そうだよ、一生に一回の、自分の数時間のためだからね。
と、自尊心が高い家族らしいコメントを返してきた。
そうか、そうだよね。
こんな一言をさらりと返せる家族の成長ぶりに、嬉しくなった。
この衣装代も、自分のバイト代でしっかり賄う頼もしさにも感服。

卒業式に関し、驚いたことが、いくつもある。
高校の卒業式がある日は、学校は3時間ほどの半日授業となることだ。
参列は任意だそうだが、教職員も式に出席するからだろうか。
(教職員”なのに”、卒業式の参列が任意というのも驚いたポイント)

また、姉兄の”高校の卒業式”に出席するためとあれば、
厳しい公立学校の欠席をも容認されるというのだ。
高校の卒業式は、家族はもちろん、親戚総出で出席となるイベント。
それに対応できるよう、大人数が収容でき、広大な駐車場が完備された
巨大アリーナや、大学のスタジアムなどを借り切って開催される。

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卒業式の朝。
メイクと髪のセットで、家族は大忙し。
美しい白のワンピースに、合わせたイヤリングを身につけ、
スクールカラーのガウンを纏う。
「暑いのに。車に乗って行く前から、ガウンをわざわざ着なくても・・。」
なんていう、私のコメントなんて、家族の満面の笑顔が吹き飛ばす。
ガウン、着ていたいんだね、着るべき時間には。
家族は、「今」をしっかり生きる人間なのだ。

そのガウンに、コードと呼ばれる組紐をいくつかつける。
教科ごとの先生から、成績優秀者に贈られる栄誉あるものだ。
そしてNational Honor Societyからのストールも身につけた。

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話が反れるが、この”National Honor Society”とは何か、説明したい。
この組織は、がんばりを認めるこの国らしい会だと、私は思う。
全国にネットワークを持つ、「優等生協会」といったものだ。

中学、高校、大学の1・2年時に在籍する成績上位者宛に、
学校経由でこの会の招待状が届くことがある。
(同じような組織を語るscam(詐欺)もある。
 学校経由でないと、その可能性が高いから要注意だ)
入会を希望すると、会が希望者を審査する。
その審査に通過すれば、入会が許可されるというシステム。

審査のポイントは、成績が優秀なことはもちろん、人間性が高く、リーダーシップがあり、ボランティア活動に熱心であること等である。
このNational Honor Societyに入ると、進学に非常に有利になる。
奨学金をもらうことができたり、大学からスカウトが来たりもする。
また、会員として自分の名前が載ると、会員の先輩(社会的地位が高いOB・OG)の人脈に自分も加わることになり、この栄誉は生涯続くのである。

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卒業式が、始まった。
まず、黒いガウンを着た教職員・近隣の学校長達が入場してくる。
その姿はまさに、映画「ハリーポッター」の世界にスリップしたかのよう。
皆、黒ガウンに色々な色のスカーフを身につけている。
このスカーフの個々の色は、その教員が取得した学位を表すらしい。

そして、卒業生の入場だ。
マーチングバンドの快活な音楽に乗せて、みんな意気揚々と歩いている。
それを見守る保護者+親戚は、子供の名前を呼んだりの大歓声。
厳粛な母国の卒業式とは、また違った趣がある。

国歌斉唱。
会場の人々は起立し、左胸に手を当て、高らかに共に歌う。
私はこの国の国歌が、とても好きだ。
明るい音調に、気持ちが上向きになる。

長々とした、大人のゲストによる話はほぼ無かった。
校長先生による笑いありのスピーチの後、
学校がノミネートした生徒による、ユーモアのあるスピーチが2つほどされた後、いよいよ卒業証書の授与が開始した。
日本だと、賞状の貰い方や立ち位置などをかなり細かく練習するものだが、
ここではほぼリハーサル無しの状態で、授与式が行われていた。
その進行スピードも速い!まるで流れ作業だ。
名前が呼ばれると、笑顔で応じ、校長先生と握手して記念撮影。
その後の壇上から席に戻る様子も、それぞれの子供の個性のままで、
とても微笑ましい。

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最後に右側に垂らしていたキャップのタッセル(房飾り)を
左側に垂らすよう、高らかにアナウンスされる。

一斉に、タッセルを左へ。
これをもって、卒業生たちは、この学校を修了したことになる。

誰からともなく、高らかにキャップのトスが始まり、しばらく続く。
卒業生の誰かが、忍ばせて会場に持ち込んだビーチボールまで、
空を飛び交っている。(ほどなく回収されてしまったが)
保護者・親戚からの割れんばかりの拍手の中、卒業生は退場を告げられる。
流れ解散のようになって、卒業式はそのままお開きに。
卒業生達のもとに教職員、保護者が混ざり。
肩を抱き合ったり、歓談しながら、皆は会場を後にする。

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色々な世界があり、色々な文化がある。
私が母国で経験した卒業式もあれば、
家族がこの国で経験した卒業式もある。

それにしても、ひたすら明るかった。湿っぽさが無い。
日本のイベント後にありがちな、そこに人がしばらく留まっている、
「余韻」が無く、帰りたい人は帰っちゃうあっさりしたところもある。

みんな、ハイスクール卒業、おめでとう。

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