福田 章

長崎県平戸市在住のエッセイスト、文筆家です。某新聞の契約記者もやっています。各地への旅…

福田 章

長崎県平戸市在住のエッセイスト、文筆家です。某新聞の契約記者もやっています。各地への旅の経験や地元平戸の人たちとの交流などを様々なジャンル・形態の文章で表現するつもりです。カラオケ好きでもあり「昭和歌謡」の思い出を綴ったり、実演するかもしれません。気が向いた際にご笑覧ください。

最近の記事

地小説① 発達少女、海へ

 いつも自分にだけは人懐こい、をと芽の爪の根元から三ミリほどのところに横線が表れている。「どうしてたの。しばらく来なかったじゃない。何かあった?」  をと芽は店の常連客である。神戸港を望む高台でネイルサロンを営む大浦茜は、顔に善人と書いてあるが何かしら精神が不安定な様子で仕事をころころ変える若いをと芽のことが心配でならない。年の離れた妹のように接している。自分でも不思議だった。 「えっ、どうしてわかるんですか」手のひらを茜に委ねていたをと芽は驚いた顔になった。 「この爪の横線

    • 平戸海ジャーナル① 坂口雄貴少年の出世物語

       立場や地位が人を作る、などと世間に流布したもっともらしいフレーズを語るのは苦手なのだが、これは「仕事がファンを作った」例といえるかもしれない。平戸市紐差町出身の平戸海関連の取材にまつわる話だ。  高校の同級生のS君が何年も前、おそらくまだ平戸海が境川部屋に入門したての頃、その名前を口にしたことがあったが、私はあまり関心がなかった。大相撲は大鵬の頃から大好きで、しょっちゅうテレビ観戦もするが、平戸海の四股名を聞いて、「なんだその安直な名付けは」くらいに思っていたのだ。それが

      • 2021年 幻のNHKのど自慢in平戸

         趣味の一つがカラオケであることと歌が上手なことが必ずしも一致しないのは承知の上で、やはりカラオケ好きを公言しよう。これまでの半生でずいぶん「授業料」というやつを払ったことも告白する。平戸へ落ち着いてからも多くのスナックでマイクを握ったし、商工会議所の青年部が主催するカラオケ大会にも参加したことがある。あの時は平浩二さんの「バスストップ」を歌った。  そんな私だから二〇二〇年秋、翌年一月十日に平戸でNHKのど自慢が開かれると知った際は、勇み立った。恥ずかしがり屋の目立ちたがり

        • note処女 喪失の記

          『あなたを待って三年三月』という歌があったような気がするが、私がnoteの存在を知ったのも、ちょうどそれくらい前だ。早く始めたかったが、メカ音痴というかPC難民というのか、なかなか手が付かなかった。困り果てて路頭に迷っていたら、近くに福の神がいるのに気づいた。記者の仕事で知り合った、息子ほど年少の友人、H氏である。この人、パソコンの扱いに滅法、詳しい。返す刀でバイクにも造詣が深い。 H氏の献身的なお世話によって、なんとかこうしてスタートラインに立つことができた。世の中で「持つ

        地小説① 発達少女、海へ