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映画タイタニックを監督気分で撮り直す

 さて、まずネタバレ注意です。実は、なんとタイタニックは沈没してしまうのです。有名すぎる話に、こんな注意書きが要るのだろうか。

○月△日
 先日、ジェームス・キャメロン監督について理系要素が強くて空気が読めない監督だと書いたあと(リンク)、テレビでタイタニックを観る機会がありました。2週連続のノーカット放送でした。

 実は記事を書いた後に、幾つかの解説や評論を調べました。その中の興味深いエピソードとして、タイタニックがアカデミー作品賞を受賞する際、キャメロンは作中のセリフの「I’m the king of the world!」を壇上で叫び、会場がドン引きしたとのことです。
 あーやっぱり理系だわ、空気が読めんと思ってしまいました。なので、今回の記事は自分で書いた「理系要素が強い」と「理系ゆえに空気が読めない」というバイアスのまま、観た感想となります。

 映画において細部に神が宿るとよく言われます。ディテールを疎かにすると、白けるのです。戦前の映画に戦後の製品などが映り込むようなことがあってはならないのです。映画タイタニックにおいては、1912年当時の衣装、小物、階級社会、欧米文化の違いなど綿密に調べて表現できたのでしょう。タイタニック号の装備、機関室、調度品なども見事でした。当時のことは何も知らないのに、見事に再現していることを十分感じ取れるほどの出来でした。

 しかし何だか過剰なのです。too much! なのです。いろいろなことを詰め込み過ぎなのです。史実や小さなエピソード、子どもがコマを回して遊んでいるとか、たぶん当時流行っていたのでしょうけど、ちょっとずつ引っ掛かり、あーきっとそうなんだろうって、いちいち思ってしまうのです。

 また沈没シーンも、ワーワーキャーキャーのスペクタル要素が強すぎます。ゴロンゴロンと乗客が甲板を滑っていき、バンバン船から落ちていきます。ドタバタ活劇のようです。これは「引き」で撮った方が悲惨さが増すのに、寄っているとバラエティ番組のような滑稽さがあります。ディテールと共に、これでもかこれでもかと見せつけられた気分でした。

 どこか白けてしまった他の要因として、水の冷たさの伏線があります。飛び込んだら今は水が0℃近いので、すぐに動けなくなる、というセリフが前半であったにも関わらず、後半は半身が水に浸かったままのシーンが長く続きます。え? 大丈夫じゃないでしょ、って最初に観たとき強く感じたことを思い出しました。これはボクが理系だからかもしれませんが。

 ボクだけの個人的感想になりますが、自分がジャックなら一目惚れしないし、一目惚れしてもあそこまで命は賭けられんな、と思いました。なので最初に観たとき感情移入できず、後半寝てしまったのでしょう。
 一方で、女子目線となると、あんなイケメンが自分のために命を賭けてくれたら、そりゃあイチコロです。当時レオ様ブームになりました。スターを一人生み出しただけでも、ラブロマンスとしては傑作と言えるのではないでしょうか。

 前回の記事で、「手」のモチーフがハマらなかったのでは、と書きました。今回は、最初に観たときより多くの手のシーンを発見しました。ハマるハマらないは人それぞれでしょう。前にも書いたように、冒頭に手を印象付けるシーン、海底調査船の操作アームのアップが欲しかったですね。

 冒頭の調査船内のシーンの安い雰囲気は詩情がなさすぎです。特撮映画の出だしのようでした。このあと恐竜が出てきそうでした。この太ったニイチャンが最初に食われるフラグを立ててしまいましたよ。

 せっかくの美しい洋上の星空をもっと有効に使えたはずです。製作当初は流れ星のシーンを使っていたとのことでしたが、星空だけでも威力はあると思いました。
 何度かバックの星空が映りましたが、非常に綺麗でした。洋上は周囲に光がないので満天の星空は非常に美しいのです。

 前半に星空を出し、どこかで水平線上に三角の影を出して氷山を見せるアイデアを思いつきました。その部分だけ星がなく、三角に黒抜きされているのです。
 氷山が近づいてきていることはセリフしかありませんでした。しかも波が静かで氷山から起こる白い波も見えないので、発見しにくいというセリフがありました。
 星空の黒い影なら映像で見せることができます。おーい、黒い影なら見えているぞーってヤキモキさせることができます。

 また沈没中に何度か救助船に向けて照明弾が上がります。それを下から撮るアイデアも思いつきました。照明弾が上がっている間は夜空が明るくなりますが、落ちて消えると暗くなり、美しい星空へ戻ります。そんなシーンも欲しかったです。星空の美しさは悲しさを表しているのです。

 またすぐに消えてしまう照明弾は短く燃える恋を連想させます。ならばどこかでマッチの炎がすぐに消えるシーンを前半に持ってきてもいいですね。タバコを吸うシーンが何度かあったので使えます。

 ローズが闇の中を漂流しているときに空に手をかざして、手の影と星空が映るという絵も思いつきました。もう、too muchかな。

 まあでも良い映画ですよ。なんだか惜しいという映画です。アカデミー賞では脚本賞を取っていないのですね。演技系の賞もないです。このあたりも理系らしい。それではまた。

ジェームス・キャメロンは理系要素が強すぎて損している監督である

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