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ロングリスト・ショートリストとは? ~M&Aにおける重要なリスト作成~

M&Aによる株式売却を検討する際には、当然ながら買い手先が必要となります。買い手の候補先を探すためには各M&A支援会社・専門家(M&A仲介業者、フィナンシャルアドバイザーなど)に依頼した際に、業者が保有しているデータベースより候補先を探すこととなります。この際に用いられるリストが「ロングリスト」「ショートリスト」となります。

ロングリスト

ロングリスト概要
ロングリストとは、株式譲渡における買収候補・売却候補先を集めた企業リストです。ロングリストには、売り手側の希望に沿った一定の基準を満たした企業、もしくはM&A支援会社が想定した買収・売却候補などが記載されます。一般的に、ロングリスト作成時には基準条件を緩めに設定し、約50社~100社ほど候補先として選定し、幅広くリストに入れることが一般的です。

ロングリストの作成
まずは、ロングリスト作成を実施する際の基準を設定します。買収側・売却側に関係なく、M&Aの希望価格や獲得したいシナジー効果等を検討します。それらを明確にした後、ロングリストを作成します。ロングリスト作成の際は、企業情報データベースを活用したり、M&A支援会社に依頼したりして情報を収集します。各企業が公表している公開情報をベースに設定基準に沿って選定するのが一般的です。必要があれば公表されている公開情報以外のデータや帝国データバンクバンクに調査依頼し、取集した情報等を利用します。ロングリストを作成する際、どんな場合でも必ず設けなければならない項目はありません。それよりも会社の都合や設定基準や実情に合わせていくことが大切です。ロングリストの一般的な記載項目は、候補先の会社名や住所、企業ホームページのURL、エリア、事業概要などとなります。

ロングリスト作成時のポイント

ロングリストの作成においては条件を緩めに設定し幅広に選定していくと記載しましたが、ただやみくもに候補先を上げていけばよいというわけではありません。ポイントは押さえておき、効率的なリスト作成をすることで早期の候補先絞りこみ、候補先の確定へとつながります。以下に重要なポイントを2点記載します。

経営者が株式譲渡後の見通しを設定しておく
最近は、M&A支援会社が候補を選定するサービスもあり、利用者が増加しております。しかし、自社の状況を理解している経営者が株式譲渡後のイメージを想定しつつ、候補を選び、ロングリストの精度をあげることも必要です。なぜならば、ロングリスト作成時に、経営者が掲げるM&A実行の目的や譲渡後のビジョンにより、目的やビジョンと合わないことが想定される企業群は削除されるため、その結果、リストに記載される企業ラインナップは大幅に異なることとなります。したがって、ロングリストを作成する際には、まずは経営者自身で将来の見通しを逆算し、それを踏まえて候補先を出してみることで、譲渡後の関係性も見据えた質の高いロングリスト作成が行えるのです。

シナジー効果の検討
M&Aによって得られると想定されるシナジー効果について想定・検討することも、経営者もしくはM&A支援会社が、ロングリスト作成する場合において必要な作業です。M&A実行する際には売手側にメリットがあるだけではなく、買手側にもメリットがある必要があります。その観点から、M&A検討時には相手企業とのシナジー効果も考える必要があります。

シナジー分析については「売上シナジー」「コストシナジー」の2つの観点に関して、「研究開発」「販売」「製造」「財務」などの側面から検討していきます。これらを検討していき、「経営資源の補完関係が成り立っているか」「互いのノウハウや技術が事業に役立つか」「企業を規模拡大ができるか」ということを、掘り下げていきます。事前にシナジー効果を検討をしておくことにより、想定どおりのシナジー効果を得る確率は高まります。

また、シナジー効果とは異なりますが、役員だけではなく、従業員を含めた関係者の感情は疎かにできません。M&Aを行なうということは、現在では徐々に知名度が向上し、一般化してきてはいるものの、中にはまだ根強い抵抗感を持っている企業もあり、会社を売却することは良くないことだ、恥ずかしいことだと考えているを経営者や従業員もいます。そういった感情的な部分に対する配慮や誤解を解く努力は軽視しては鳴らない部分です。
また、M&Aは異なる2社の企業文化が融合する局面です。企業の従業員内で軋轢が発生する可能性も考慮しなければいけません。したがって、従業員同士の摩擦については特に考慮や対策をしなければなりません。

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ショートリスト

ショートリスト概要
ロングリストの作成で対象企業の大まかな選定プロセスを行ったのち、株式譲渡企業、M&A支援会社にてディスカッションを行いさらに候補先絞り込んでいきます。この際に、絞り込まれた企業リストがショートリストとなります。一般的に5社~20社ほどの企業を選定しており、この企業から優先的に打診を開始していくというプロセスとなります。

ショートリストの作成
ロングリスト完成後、M&Aの目的との適合性や成功する可能性などを考慮しスクリーニングをかけます。候補先の詳細な情報や、想定されるシナジー効果についてはショートリストを作成する際に記載します。結果、ショートリストはロングリストより詳細かつ綿密な内容のリストになります。ショートリストの作成後は、ピックアップした企業をもとに、打診実施する企業の優先順位を決定します。その際も、目的との適合性や実現可能性などを考慮しましょう。決定後は、全体を俯瞰しながら優先順位をつけ、打診や交渉を開始していくこととなります。

M&Aにおいてロングリスト、ショートリストの作成は、候補先選定を決めるフェーズの中でも非常に重要なプロセスです。リスト作成時に、M&Aの希望価格や獲得したいシナジー効果や一定の基準を設けることで、効率的な打診活動が行われ案件の早期の案件成約へとつながっていきます。また、M&A支援会社にロングリスト作成を依頼する場合には、自社の意向や希望条件に沿った候補先選定が行われているかをしっかり確認し意思決定する必要があるとともに、自らも主体的に関わっていく姿勢を持つことが大切です。

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