Pアイランド顛末記#5

★金太郎

 半開きになったフランス窓。古風な扇風機が微かな音をたてて回っている。窓から吹きこむ風が夕方の匂いをはこんできた。
 風が二人の女の髪の毛をゆらす。
 ここは大東京通りの一角にあるパンクショップ「NIPPON」の二階。この店を経営する金太郎1号と2号が住んでいる。鼻のもげたマネキン人形や種々雑多なパンクファッションのパーツが二人の横たわるダブルベッドを囲んでいる。
 二人はお揃いのオカッパ頭に金太郎の赤い腹がけ。真っ赤な頬紅。双子のようにそっくりだ。二人はベッドにならんで天井をみつめている。1号がぼんやりと口をひらいた。

「ねえ、神様っているのかしら。」
「いるわ。」
「どこに?」
「どこにでも。」
「たとえば?」
「あなたのお腹のなかに。」
「あなたの頭のなかにも?」
「ええ。あなたの背骨のなかにも。」
「あなたの眼のなかには?」
「いるわ。それに…。」

 金太郎2号は起き上がり、1号の腹がけをめくり上げた。

「それにあなたの乳房の頂上にもいるわ。」

 2号の手が1号の乳房にふれる。1号がかすれた吐息をもらした。

「ああ、いるのね。神様…」

 風が二人の髪をゆらした。二人の真っ白な皮膚が淡い緋色に染まった。窓辺の金魚ばちのなかで、一匹の黒い出目金がひるがえる。出目金のつぶらな瞳のなかに、愛し合う二人の金太郎の姿が反射した。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?