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6. ミーティングって奥が深い、な3本

ほんと、タイトルのとおりで。

答えが一義的に定まるものでもなく、こうすれば間違いないという必勝法があるわけでもなく、相手にもよる、タイミングにもよる、議題にもよる、なんとも難儀な行為「ミーティング」。ちょうど最近、学生たちに「ミーティングとはなんぞや」っていうのをある程度体系化して教えないといけない機会があって、これがまた難儀でした。ミーティングって、確実にうまくいくやり方っていうのはないんだけど、確実に考えておくべき、押さえておくべきポイントとか、「考え方の考え方」はあると思っていて、それを中心にまとめたわけです。演習も織り込みつつ。ただどうしても最後は「場数」なのです。考えて挑み、場数を生み、またその踏んだ場を反省して、次回新たな実験をしてみる。それの繰り返し。なのでなかなか「講義で教える」だけで何とかなるもんでもないわけ。すーん。ただ、いろんな角度からミーティングという行為行動を客観的に見て考えることって大事で、というのもミーティングって要するに「人と人とが複数人で会話して、一人で考えるよりいい結論を導き出す」ことすべてを指すので、そういう意味で、角度を付けた理解で面白い輪郭をミーティングっていう概念に回りに引いてほしいなあと思います。なので、映画から考えるミーティング論。やってみます。

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ラジヲの時間

1997年公開
監督:三谷幸喜
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一般公募から選ばれた素人脚本家が、自身の書いた作品のラジオドラマ生収録現場でのドタバタ劇に翻弄されるお話。

本性で大事に思っていることって人それぞれで、それをコントロールできるのはリーダーシップと共通の目的設定のみ、っていう話かと。リーダーも、共通の目的も不在のカオスな現場は、その場その場で個々人の「あれはやだ」「この方がいい」に振り回され、案の定、あちらが建てばコチラが建たずの混沌とした状態になっていくわけ。ただ一方で、個々人のわがままの果てにミラクルクリエーティブジャンプも起こるかも?という希望も少し残して話が進んでいくので、「我は抑えればいいものでもなく、うまく方向付けして発露させるべし」ってことなんでしょうね。やはり個人的にはこれが三谷映画の最高峰な気がします。彼は、やっぱりこういう密室劇というか、定点的なお話の方が、本来の劇団屋としての妙が活きると思うのですよ。こっちの方が好き。豪華キャストを惜しげもなく使い、全力でくだらないことをぶちかます芸風も、この頃から。笑いました。この映画から学べるミーティングの教訓は「結論の合意よりも、決め方の合意を、なによりまず”何が大事なのかの合意”を取り付けるべし。」ですね。赤いクルマと早いクルマは比べられないし選べない。まずは決めるための軸を決めようってことかと。

インサイドヘッド

2015年公開
監督:ピート・ドクター
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ある11歳の女の子の「こころの中」の5人の感情が、その子を幸せにするために頑張るお話。

感情を司る脳内の5人が常にミーティング?をして本体の女の子を操縦しているわけだけど、まあまとまらないw というか初めからまとまるような設定にはなっておらず、誰かが我慢したりゆずったりして、行動が決まっていく。ふつうに考えれば典型的な「ダメなミーティング」なわけだけど、唯一彼らが大人なのは、ちゃんとお互いのキャラクターを理解しているってことで、これってできてるようでできていないことだなあとわが身を振り返ると思います。ストーリーはあざといくらいの分かりやすいお涙頂戴ポイントも、それでも乗り越えて泣かせてくるピート監督は流石ピクサーのエース。どうやったらここまで共感を作れるんだろうかと。深い人間理解と洞察の賜物なんだろうと思いつつ、多分変態なんだろうなと思う。原題「Inside Out」は、”裏返し”の意味。描きたい主題はこちらですが、邦題で隠したのはある意味よかったのかもね。興行的にはあかんかったかもしれないけど。あと、ブロッコリーをピーマンと訳すのはさすがに嘘だからダメだとおもうw 吹き替えも見たんだけど、竹内結子ってすごいね。この映画から学べるミーティングの教訓は「自分以外のメンバーの思考のクセを理解するとラクになるよ。」

インセプション

2010年公開
監督:クリストファー・ノーラン
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人と夢を同期しその夢からアイデアを盗み見ることのできる男の、苦悩と愛とチームプレイのお話。

いわずもがなの大名作ですが、あえて「ミーティング」の文脈でとりあげてみる。まずそもそも「チームプレイ」の映画であることは間違いないんだけど、結構象徴的なのは、「スーパースターが、寄せあつめだけど超能力だけでなんとか押しきっちゃう」みたいな、〇ーベル的な話ではなく、ほんとに愚直になんどもミーティングしてシミュレーションして、ジオラマ作ってリハして…っていう、地味で地道な下準備をしているとこ。えらい!w 仕事しているといろんな想定外が起こる。で想定外の一番厄介な問題って、プランがその通り運ぶ確率が著しく下がるってことですが、それって、「チーム感の意思疎通を時間が取らせてくれない中、個々で臨機応変に対応して、でもそれがちゃんと連動している」っていう、今までの信頼関係が試されまくるってポイントだと思うんです。この作戦も「想定外」がたくさん起こるんだけど、そこはやっぱり、ミーティングたくさんやっといてよかったね!っていうことかと。2時間越えの作品ですが、まったく長いと感じさせず。ダークナイトでもそうでしたけど、この監督は畳み掛ける展開がすごい上手い! 今回はかなりIQが高い設定で、そのための説明的台詞も前半たくさん出てくるので、そこを頑張ってきかなきゃ!っていうあれはあったけど。 ディカプリオよかった!あとエレンペイジもいそうな感じで。この映画から学べるミーティングの教訓は「会話と準備の総量は、チームワークの結果と比例する。」ってことに尽きるかと。

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まとめて思ったのは、結局はちゃんとミーティングを一緒にする相手に敬意があるかどうかなんだと思います。敬意がないとラヂオの時間コース、敬意があればバラバラでも最後なんとかなるのがインサイドヘッド、敬意と共通の目的設定がそろえば最高のインセプション、この3本ならそんな感じでしょうか。目標の共通化は個人的には、実は結構難しい奥の深いことだと思っているので、まあまずは敬意の部分から始めてみるのがよいかと思いますです。とかいって、なかなかうまくいかないのでたまには、カオスを楽しむくらいの余裕と傍観精神も許されると思います。はい。そんな3本でした。


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