中尾

”言いたいコトがうまく言えた”という快

世の中、いろいろな場面のいろいろな種類の「表現」があるわけで、表面的にはどうも、それはその表現に触れてくれるであろう人をどうのこうのしようというたぐいのモチベーションでされていると思われがちですね。ダンスでも歌でも絵でも、プレゼンでも文章でも会話でも。「あっと驚かせたい」「感動させたい」「問題意識を啓発したい」とかとか。相手の心を動かしたいと。ただ、個人的には本当は、表現されるアウトプット以前に、表現する本人のことを「わかってほしい」「知ってほしい」というモチベーションがまずはあるんじゃないかなあと思うし、もっと言ってしまえば、「表現者本人が、自分が表現したかった事や、その背景にある動機そのものを、自分で知ることができるってこと」が、大きな快を占めているような気がするわけです。ああ、自分が言いたかったこと、やりたかったことは、こういうことだと。うまく表現できたときにまず出るアドレナリンって、それなんじゃないかなあと思ったりします。

自分も、文章を書いたりプレゼンをしたり、人にモノゴトを伝えようとメタファーを使ったり、図にしたり、仕事でもプライベートでも多くの表現をしていて。ごくたまに、いま自分が言ってることはもう2度と同じように言えないなあという軌跡を、自分の言葉が描くことがある。ごくたまに、ですよ。そういう時が、一番うれしかったりする。ああ、自分の思いにうまく輪郭を引くことができた、と。同じように、翻って人と接しているときも、相手が「僕自身のことをわかってくれた」とき以上に、 「相手が考えていることを、よりよく考えるために、相手自身が自分のことをわかるお手伝いができたとき」のほうで。 メタファー使ったり、構造化したり、 コピー書いたり、質問したり。 一人では行けない考えの地点に 行かせてあげるのが好きなんだな。「そうそう!そういうこと!そう言いたかった!」と言ってもらえるうれしさとでも言いましょうか。自分が表現したいこと、表現を通じて、自己認識を高められたときに喜びを感じる人間なんだなあと。

新著「アンテナ力」を制作する作業に、イラストレーターとして中尾仁士さんに入ってもらって。イラストレーター、と書いたけど正式には「イラスト可視化士」と名乗っていらっしゃる方で、ワークショップやトークイベントでグラフィックレコーディングをすることで、話している人やオーディエンスの「わかる」を数段上のレベルの解像度に引き上げてくれる人なのです。こんなのとか見ていただけるとわかりやすいかも ↓

今回の本は、その内容自体が「自分の”好き”を知ること、そしてその”好き”を高める仕組みを有効に活用すること」という自己認識についてのものなのですが、その執筆作業こそまさに、著者である僕自身の自己認識の作業だったりしたわけです。日ごろどんな所作を意識的・無意識的問わず自分はしていて、それがどういう効果を及ぼしていて、それを客観的に仕組みとして説明するとしたらどういう言い方ができるか。これをずっとぐるぐると煮詰めながらだんだんとエッセンシャルオイルのような一滴にまでもっていった。その持っていく作業で、中尾さんにイラスト可視化してもらえたことが、とても助かったわけです。多分に抽象的な内容だったので、その抽象的な僕の有象無象の話を、その場でやりとりしながら、「こんな感じですかね」と絵にしていただき、それを見たことによってさらに高まった自分の考えに対しての自己認識度に基づいて「ここはもうちょっと、点と点というより、線でつながっているイメージです」みたいにラリーを返す。それを繰り返すことで、そうして出来上がった本なので、まだ店頭にも並んでないけれど、自分としては表現欲求の根底にある、「自分の言いたかったことはこういうことだったんだ」という快が、とても充実してしまってたりするわけです。

自分が思っていることを、自分が納得のいく形で表現できることへの快。
これをもっと大事にしていいし、そのことをサポートするという価値がもっと認められていけば、多くの人の「好き」がもっと見えるようになって、何となく社会の「陽の要素」の総量があがりそうだなあと改めて思えた、そんな幸せな制作作業でした。この本も、中尾さんがしていることも、いろんな人に伝わればなあと思って、そんなnoteでした。

中尾仁士さんのnoteはコチラです


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