直樹くんの夢
夢の中で夫と民宿に来ていた。
そこは私たちの定宿なのだが、なにかの理由で泊まるのは今回が最後だった。
家族経営で、適度に客を放っておいてくれる良い宿だ。押さえるべきところはキチンと押さえてくれる。その家庭的雰囲気も誰かの家に泊めてもらってるような親密さがあって私たちは気に入っていた。
民宿をやってる家族には小学校1年生くらいの息子がいた。
その子が夜、部屋に遊びに来たので「ここに泊まるの今日が最後なんだ」と告げた。
男の子は一瞬寂しそうな表情を見せたかと思うと、さっと部屋を出ていった。
あれ。
懐かれてると思ったけどそうでもなかったか。
布団に入って寝ようとしていたら、その子が寝巻き姿で戻ってきた。
最後だから一緒に寝たい、ということらしい。
手には、朝食で食べるための小分けのバターやジャムを持っている。
明日、パンに塗って一緒に食べたいのかな?
なんと可愛い。
しかし、親御さんに了解を取らずに寝させるわけにもいかないな。
そう考えている間に彼はさっさと布団に入ってくる。
自然と腕枕をしてあげる形になる。
「そういえばお名前なんていうの?」
「なおき」
「なおき君ていうのかぁ」
私はぎゅううぅっと彼を抱きしめた。
「大好き」と囁くと、直樹くん(夢の中ではこの字であるとなぜか分かる)は嬉しそうに私の胸できゅきゅっと動いた。
幼い男の子のこの甘やかな感じ、久しぶりだなぁ。
息子が小さかった頃以来だ。
ありあまる母性を持て余しているとはいえ、他人様の息子さんをこんなふうに甘やかしていいのかなぁ。
でも他人だからこそ嬉しいということもあるやもしれん...
などと、まどろみながら考えたのだった。
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