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政治学/政治思想/劇場勤務(施設管理・広報)/出版宣伝⇒組織人事に興味を抱き転職。たま…

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政治学/政治思想/劇場勤務(施設管理・広報)/出版宣伝⇒組織人事に興味を抱き転職。たまたま受けた人事関連会社で色々覗いている途中。

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私の国の理想の一日

ここのところ自分の仕事の軸を見つけたくて、未着手だった自己分析ツールを使ったり、意図的に自分の考えを職場の人に暴露してみたり、コーチングを受けたりなどしている。先日のコーチングセッションで、私にはこの国がとにかく生きづらいことを吐露したら、「もし、maiyaさんの国をつくるとしたら、それはどんな国ですか?」、「そこでの理想の1日は、いったいどんな1日ですか?」という拡大質問をされた。 そんなこと今まで誰にも訊かれたことなかったけれど、するする出てきた。特に理想の1日は鮮明な

    • 教えられたもの、育てられたもの

      久しぶりにnoteを開いたら、下書きに保存していた書き散らかしがあった。多分2年くらい前? せっかく世に出かけていたのにかわいそうという気持ちになったので、とりとめがなさすぎるが少しだけ整理を加えて公開してみる。 ーーー 自分が避けようと思っていた教育業界に身を置いて、しばらく経ったからだろうか。あるいは、もう子育ての季節を迎えている友人が多くなった環境の変化だろうか。 幼少期に与えられたもの、教育について、考えることがこの頃多くなった。 幼い頃、社会人というものがま

      • 桃色岩塩

        味気が足りない とあなたが言うので 私は焼き上げた魚に 特別な塩を給した 歪な形 それを力でいなせば 後で整えたものとして 刺激は降り積もる 美味しいね そうだね そうでしょう なぜならそれは特別だから 削っていたのは恐らく我が身 だからだろう 真摯な命を食せば 塩辛い涙が食卓に沿う 歪な愛を削って誰かに捧げた 虚無への供物

        • 母に

          冷凍の肉まんを食べて 突如思い出された記憶 ずっと忘れていた 思い出す必要もなかった 辺りは暗く、 家族向けの車のシートを 寝床代わりにしたこどもたち 運転する父に 母は何かを抱えてきた ほかほかの食べもの 肉まん 私はこの非日常が嬉しくて ぱくりとかみつく すぐさま母が言う あ、紙ごと食べた、と 紙を食べている自覚など一切なく いわれて初めて気づきへらへら笑う なにがそんなに大切なのか、よくわからなかった。 母よ あなたは不断の努力を続けてきた 正しいことを伝えた

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        私の国の理想の一日

          どろどろ

          こどものころ ねぎが嫌いだった おとなになり ひとり暮らせば あえて買うほど なぜ苦手なのかと 告げる必要もなかったが 整えられた生き物の くせのないものばかりだから その悪意にふれずにきた ということなのだろうか たまたま 生活を大切にしようと思い 今日、手に取り ぴんと伸びた 手提げ袋に余るねぎを家に持ち帰り 包丁で 容赦なく ざくざくと刻めば 断面に見える かつて苦手だった粘り こんな葱がまだあったか そう思いながら しかしそれを除く あるがままを頂けば それは自然

          どろどろ

          静かに、爆ぜる。

          なんの目的もあるわけではなかった。 ふと、クラシックを聴きたいな、と思ったのだ。 初めてのことである。 なので、辻井伸行のコンサート映像をアマゾンプライムから再生したのは、そんな心持ちが成した技なのだろう。感動した。何に心打たれたのかはよくわからない。私は時々、これまでも急にピアノ曲を聴きたくなることがあり、そのなかでも印象的なのがラフマニノフなので、youtubeで検索すれば彼のコンサート映像はすぐに出てきていた。だから、アマプラで彼の名前をタイトルに観たとき、再生し

          静かに、爆ぜる。

          こまぎれの記〜「愛の不時着」を観て考えたこと、一人では至れない高み

          頭も体もすっかり怠けてほわんほわんしているので、活字リハビリがてら去年から今年にかけて考えていたことをつらつら書いてみようかと思う。 副題に盛り込まれた「愛の不時着」とは、随分前から話題の韓国ドラマである。私の周りにはこれにハマった人がとても多く、夏頃からあちこちで話題に上っていた。「21世紀におけるドラマの最高傑作」とまで評した人もいる。Netflixでしか観ることができないのだが、仕事の繁忙期に突入してしまい、今観てはいけないと必死に自制心を利かせて年末まで耐えていた。

          こまぎれの記〜「愛の不時着」を観て考えたこと、一人では至れない高み

          地を駆ける夕陽【7】

           平日午後の山手線の車内はずいぶん空いていた。まるで数時間前のラッシュが嘘だったかのようだ。空席もいくつかあるが、美月が最も落ち着くドアの脇、ちょうどステッカー広告が目に入りやすい隅に立って背をもたれる。スマホで社用メールのアカウントにログインすると、徳山さんからメールが入っていた。後先考えず勢いよく飛び出したものの、それからものの数十分で会社メールを確認する自分の小者加減にも、自嘲の笑みが浮かんだ。 「部長や周りの人のデリカシーのない発言は、気にしないほうがいいです。気に

          地を駆ける夕陽【7】

          地を駆ける夕陽【6】

          「ねえ美月、生まれ変わったら何になりたい?」 高校二年の夏休みの部活帰り、ジャージを膝の上までまくった久美子が海辺沿いを歩きながら波に足を浸して訊く。 「なに急に。そんなこと考えたこともない」 小学校の頃からの長い付き合いだが、いつも陽気な久美子が急に殊勝なことを言い出した気がして、らしくないな、と美月は思った。  はは、そっかあ、まあそうだよねー、と久美子はにかむ笑顔で斜め後ろを歩く私を見遣る。湿気を含んだ海風にショートボブの髪が頬に張り付き、彼女の輪郭越しに水平線と太陽が

          地を駆ける夕陽【6】

          地を駆ける夕陽【5】

           小さな組織の嫌なところは、世間話のように交わした冗談交じりの雑談が、それぞれの勝手な妄想で大きく尾ヒレを成長させ、それさえも水族館の珍しい魚のように群がって鑑賞し楽しむ癖があるところだ。  私の隣デスクに座る、歳は二つ下だが入社時から経理担当の、仕事面では先輩にあたる服装も化粧も若い女性の同僚に、橋本さん、昨日のデートどこ行ったんですか? と、きゃいきゃい仕事の依頼の合間を縫うように尋ねられる。  早く上がりたいから、「ごめんなさい、今日はちょっと」、と昨日軽くついた自分の

          地を駆ける夕陽【5】

          地を駆ける夕陽【4】

           家についたのは午後十時を少し過ぎたころだった。  鉄筋コンクリート三階建てアパートの二階、角部屋のドアノブに鍵を差しまわすと、金属のかみ合わせがずれる鈍い低音が響く。  振り返ることもなくチェーンと鍵をかけ、靴を放り出すように脱ぎ捨てて整えず、おままごとのような小さいキッチンを過ぎた。窓枠の桟に吊るしたハンガーにコートとストールをかける。伝線するかもという配慮のかけらもなくストッキングを乱暴にずり下ろし、ミモレ丈のタイトスカートのフックをはずす。ベッドの上で無造作に今朝脱が

          地を駆ける夕陽【4】

          地を駆ける夕陽【3】

           胸のあたりでだれたストールの端を首後ろにまわし、トレンチコートのポケットに手を突っ込んで、都会の夜道を一人歩く。  駅までこんなに遠かったろうか。  人も車も広告も雑音もこの街は多すぎる。コンタクトを外して裸眼で歩けば、この喧噪も多すぎる光もぼんやりゆがんで少しは綺麗に映るかもしれないのに。  エンジン音や行き交う人々から発せられる意味を拾えない雑音の合間を縫って跳ね返る自分の足音に、靴の買い替え時を悟る。アスファルトをヒール5センチのパンプスで進みながら、通勤ですり減らし

          地を駆ける夕陽【3】

          地を駆ける夕陽【2】

           その日、退勤後に徳山さんと向かった先は今日と同じ渋谷だった。移動する道程、山手線の車内、自分からは積極的に話しかけてこない先輩にどうしていいかよく分からず、今日お会いする方はどんな方ですか? と尋ねた。まあ、高校時代の部活の後輩だね。おいくつの方なんでしょう? 学年一つ下だから、今年三十四かな。 と、一問一答集のような会話をしたことを覚えている。  何の部活だったんですか? とかぶせたところで、最低限の答えしか返ってこないなら、その先も続かないだろう。もう細かいことは事前に

          地を駆ける夕陽【2】

          地を駆ける夕陽【1】

          「こんなふうに言うのは反則というか、たぶんとても失礼なことだと思うんだけど……」    互いのオフィスと自宅の中間地点の渋谷。木曜日の午後七時半。道玄坂近くの一角に小さく構えた、創作バルとでもいうのか何屋なのかよくわからない、木目調をベースとした内装の店で、向かいに座る孝之が小さく遠慮がちに口火を切った。  美月がスマホの地図アプリを頼りにここに合流する数十分前、先に到着していた彼が所在ない空気感を纏っていた意味に合点がいく。今からこの人は、意を決して大切な何かを言うに違い

          地を駆ける夕陽【1】

          無の中へ刻々と

          生まれ変わったら何になりたい? と訊かれたとき、瞬時に、「生まれ変わりたくない」と答えていた。人間はもう十分、と。 私は、生まれ変わりとか前世とかをきっと信じていない。信じている人を否定もしないけれど。個人的には、命の源泉は無であり、死んだらまた無に還るのではと思っている。宇宙の始まりと終わりのようなイメージ。真っ暗闇から私はこの世界にやってきて、またそこへ戻る。次はない、という事実によってはじめて永遠を体感するだろう。完全なる喪失と、ジ・エンド。 でももし、どうしてもま

          無の中へ刻々と

          こまぎれの記〜「生きねば。」と「生きろ。」の狭間で

          文章になる前の言葉が、私の頭の中でバタバタと駆け巡っている。それはまるで無邪気な幼子が障子に穴を空けたり、靴を脱ぎ散らかしたり、駄々をこねて泣き喚いている様にも似ている。抱きあげるとのけぞるようにぎゃーと自己主張したりなぞする。なんというエネルギーだろう。 しかし日々の糧のためには、現実の仕事も多少なりともこなす必要がある。私はこの悪戯っ子たちと目線を合わせ、ピンと張った和紙を蹴破ることを一緒に楽しむ時間がなかなか持てない。ほんとは君たちと共に渡り廊下をバタバタ駆けて、大人

          こまぎれの記〜「生きねば。」と「生きろ。」の狭間で