橋本素直

2005年

橋本素直

2005年

最近の記事

      • 原体験

        夢を見た記憶はほとんどない。見たことがないのか、それともなけなしの感情を揺れ動かした、その時には自分の全てかの様に思われたものを忘れてしまったのか。はたまた結末があまりにつまらないもので、生命力に一握の需要も無い為に、海馬からその他多くの知覚情報と同様にかつての所有者など分かるはずもない様な大海に流れ出て、その後奇跡的な再会を果たしているのかも知れないとの妄想が否定できない様に、この世界の一部になったのか。 眠りについてから次に自分がこの世界に復帰するのは目が覚めた時だ。目

        • 星になれたら

          少女は歩道橋の手すりに体重のほとんどを預け、ブロンドヘアを靡かせ、綺麗な横顔を夜風に晒していた。 目を閉じて、呼吸を落ち着ける。もう何時間もそうしているのに、なかなか私の意識は落ちない。昔好奇心からオーバードーズした後覚えた嫌な不快感に似ている。自分が不安定になっていく恐怖と、肩の荷が降りる様な快感が交互に訪れ、やがて快感の方だけが薄れていく。6畳の寝室も無限の大きさを持ち、何故か壁だけが不気味な圧迫感を示す。とにかく遠くに行こうと、無意識に思った。 初めて来た時は骨抜き

          カラフル

          ブラック あいつは頭が悪い。あいつは耳が聞こえない。あいつは腕が無い。あいつは頭が悪い。あいつは明日死ぬ。一通り街を歩く人々に不幸を割り振った後、私は飲み終わったコーヒーをそのままにして席を立つ。周りからの視線を感じる。気にしない。どうせお前らも明日死ぬ。この街に浮かぶ幸運(ラック) グレー 私の視界に訪れた初めての色。何も感じない。今日も夕暮れ ブルー 今日は母に会ってきた。刑務所の門から出た所で少し泣いた。でも私は達観者ぶる ピンク いつからか、隣に人が1人。懸命に

          マゾの宅急便

          ある祝日の昼、僕は惰眠を謳歌し、起きてはTwitterでどうでも良い情報を追うか、卑下をする。そんな事を繰り返していた。起きてヒゲを剃る、それすらも億劫で、昼飯を食う事もしないまま日が沈もうとしていたその時、仲良く手押し相撲をしている妹達の先にあるインターホンが鳴った。見向きもせず、聞いたことあるような無い様な内容の曲を歌い始める妹達を横目に、パジャマのまま僕が応対した。ドアを開けると、紺色のワンピースに赤いカチューシャを身につけた上品な少女。ラボコフの『ロリータ』に登場しそ

          マゾの宅急便

          『イケメンブルゾンチエミ』

          男の失恋ソングが少ない事に気づいた アンビシャスで居られないこの傷を 治癒するのは女神のチューか いつか2人で行ったあの中華 女の失恋ソングじゃ意味なんてないよ 君はロックなんて聴かないんだろ ロクな人間じゃ無いな俺もお前も お前の前でだけ俺だった一人称 たった1人さ生まれ落ちた時から いつか会って話すか互いの悪い所 忘れない様メモしておくか 良いところもついでに お前は早く忘れろよ俺の事なんて いつまで味のしないガムを噛むの? 新しいガム、食べたく無い? 世界に男は何

          『イケメンブルゾンチエミ』