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特別人間賞

僕らは特別人間賞を取らなければいけない。
それは、学問でも芸術でも、はたまた容姿や性格でも構わない。
世界のあるハードルを超えた瞬間に生きる意味を知る。

朝起きてまず一考するのは、今日が何を生み出すのか。
明日に繋げないといけないのはもちろんだが、
昨日を超えないといけないことも確かだ。
そして、何よりも重要なのは、誰かよりも有意義な時間かどうかだ。

「昨日、一日休みだったんだけどさ〜。もうずっとYouTube(笑)」
同僚の何気ない言葉に、ひとさじの優越感を覚える。それは安心でもある。
自分以外の誰かが、自分自身に負けているシーンを見たり聞いたりすると、自分を肯定してあげられるし、日頃のストレスの吐口にもなる。

お昼前なのにどこか薄暗いワンルーム。外からは犬と鳥が鳴いている。
何気なくSNSをスワイプしていると、色々な特別人間賞者と出会う。

年収5000万円の経営者。真っ白な部屋でメイクした顔を何枚もアップするインスタグラマー。何百人のファンと生配信中のYouTuber。一人暮らしの様子をまとめた収益アカウント。毎日更新されるほのぼの漫画アカウント。ゲーム配信者。作曲家。稼ぎ方のノウハウを情報商材として販売するクリエイター。海の写真。オシャレなカフェ。ファッションの自撮り。テーマパーク。

僕はもう恐ろしかった。それが正しいと正解だと感じる自分が恐かった。
なにか硬いもので頭を殴られたかのようにフラつく。
自分に個性が、人としての価値が備わっているのだろうか。

もうどっちが現実なのか分からなくなるほどに焦燥が芽吹く。
どこにもいけないまま、ひたすらに特別を目指すのだろう。


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