見出し画像

【第10回】宮尾登美子 著 『天璋院篤姫』

今回は、13代将軍家定のもとに薩摩藩から輿入れした島津斉彬の養女・篤姫の物語、宮尾登美子氏による長編小説『天璋院篤姫』を紹介します。

最近、投稿が長くなってしまっているので(汗)、あらすじは講談社文庫の裏表紙からのご案内です。

18歳で藩主斉彬の養女となった篤姫は、薩摩島津家分家に生まれた学問好きな姫であった。その才覚、器量を見込んだ斉彬は画策の末、篤姫を13代将軍家定の正室として送り込んだ。
形ばかりの結婚に耐え、病弱な夫を支え将軍御台所として大奥3千人を統べる篤姫には、養父斉彬の密命が…。
宮尾登美子『天璋院篤姫』 上巻
将軍家定の急死、継嗣をめぐる幕府内の対立、養父斉彬の死。篤姫は、家定との結婚が斉彬の遠大な野望であったことを知り慄然とする。天璋院となったのちも総帥として大奥を統べ、皇妹和宮の降嫁、大政奉還等、激動の幕末を徳川家の人間として徳川宗家のために生き抜いた篤姫の偉大な生涯を描いた歴史長編。
宮尾登美子『天璋院篤姫』 下巻

大河ドラマ化

この作品は2008年の大河ドラマ「篤姫」の原作です。宮崎あおいさん演じる篤姫は、とてもキュートで、そして力強くて、多くのファンの心を掴んだのではないでしょうか。
ドラマも高視聴率を記録したとか。
宮崎さんの他にも素敵な女優さん達が迫真の演技を披露しており、目の保養になりました。

斉彬の密命

篤姫の輿入れの目的、斉彬の密命とはずばり、将軍家定の継嗣に一橋慶喜を薦挙すること。病弱のために自らの後継の子を生ませることはできないだろうとされた家定の後継問題に、篤姫が行動するということは、篤姫自身の懐妊は期待されていないということを意味します。
この使命と運命をどう受け入れるか…女性としては、心にきりを突き立てられるような問題のように感じてしまうのは、私だけではないのでしょうか。

篤姫は家定と、少なくとも信頼関係を築いていくように見受けられます。
プラトニックな夫婦愛、ここも静かな感動を呼ぶものの一つです。


大奥の世界

最初は外様の田舎者と蔑まれることもあった篤姫が、大奥を統帥するまでに成長していく経緯も見どころです。
自身を律して厳然と大奥の長たろうとする姿が想像させられ、どうも共感とか尊敬してしまうのは作家宮尾登美子さんの筆の力ではないでしょうか。
14代将軍徳川家茂の正室となった孝明天皇の妹、和宮との確執も大変興味深く、和宮の物語にも興味が湧いてしまいます。

篤姫と幕末明治維新

幕府の瓦解、江戸開城を見届けた篤姫。その時彼女は何を思っていたのか…。
彼女の生涯に幕が下りるのは、明治16年のこと。薩摩を懐かしみながらも、明治維新後も徳川の人間として東京に生き続けました。
類稀なる女性の生涯を通じて、幕末維新期を読み取ることができる骨太の作品世界を、ぜひ小説でもご堪能ください。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?