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アセクシャルの人がレンタルなんもしない人に依頼した件、ざっくりいうとよかったよね

とあるアセクシャル(以下、アセク)の人が、レンタルなんもしない人さん(以下、レンタルさん)に依頼をした。
その内容が、2019年8月18日のレンタルさんのツイートで発信されたのだが、わたしはそれを見ながら、なんだかよかったなあ、という大雑把な感想を抱いていた。
普段LGBTQないしマイノリティについて関心がない人にも、当事者の言葉がダイレクトに伝わったからだ。


念のため説明すると、「レンタルなんもしない人」さん(https://twitter.com/morimotoshoji)は、2018年ごろからツイッターで活動している方で、名前のとおり、「なんもしない人を貸し出します」というのが活動内容だ。
レンタルさんがすることは、依頼人の許可がおりれば、依頼内容やメッセージのやりとりを自身のツイッターで公開することと、その依頼の簡単な感想をつぶやくことくらい。
これがツイッター上では大ウケしている。
世の中いろんな人がいるんだ、と言うのを実感させてくれるので、興味のある方はレンタルさんのアカウントをのぞいてみてほしい。


さて、2019年8月18日にツイートされた、アセクの人からの依頼内容は、簡単に言うとこういうことだった。

自分はアセクのため、恋愛感情や結婚願望を抱いたことがない。
それで生活には困らないが、友人や同僚の惚気や相談が理解できず、困惑することもある。
しかし、人に聞こうにも、自分のことを説明するのが煩わしいし、まじめに取り合ってもらえない可能性もある。
そこで、レンタルさんに、恋愛感や結婚について、話を聞きたい。

あわせて、依頼人からのお礼メッセージも掲載されている。
この方は、レンタルさんの話を聞きながら、世間一般でいう恋愛感情や、自身の持つ他者への友愛の情に、ついて色々と考える機会を得られたようだった。
また、「世間からどう見られるか」を実は気にしていた、という気づきもあったとのことだ。


このツイートは、普段のレンタルさんのツイートと同様、すぐに拡散された。
2019年8月25日の時点で、いいね数は7000を超えている。
コメントも多くついているが、それらも概してポジティブなものだった。

「わたしもそうです」
「世の中にはこういう人もいるのか。知れてよかった」
「依頼人の言う感情、なんとなくわかる気がする」


セクシュアリティーというセンシティブなネタにしては、落ち着いた反応だなあと思う。

レンタルさんに依頼をする人たちを見てみると、大抵の人が「友人知人には引かれるかもしれないので、知らない人に話を聞いてほしい」という理由でレンタルさんに行き着くようだ。
内容は、惚気であったり、萌語りであったり、悩みだったり、無言の空間であったりと様々だ。
そして、「知り合いには言えない」内容であるため、結構濃密な話が、ごろごろ出てくる。
濃密でありながら、「あ、わかる」と共感できるものも多い。
わたしも、おそらく多くのフォロワーも、「人には言えないあれそれ」を多く抱えて生きているのだ。

だからこそ、今回この話が、レンタルさんを通して拡散されたので、よかった。
レンタルさんのフォロワーの多くは、他人事ときちんと距離を保った状態で、その人にとっての事実を受け入れる訓練ができている。

また、当事者の個人的でリアルな言葉が読める反面、間にレンタルさんというワンクッションを挟んでいる。
それによって、依頼者本人へ語りかけるような言葉(ポジネガ双方)が、あまりないのだろう。
ちょうどいい距離感だ。


レンタルさん自身も、依頼についてコメントをしている。
この人の偉いところは、自分なりに知ったことをまとめようとしているところだ。
アセクやノンセクシャルについて触れ、適度なネタを挟みつつ、自分の分かった範囲内のことを、淡々と述べている。

わたしの受けた印象だと、レンタルさん自身の反応は、「へー、そういう人がいるのか」という大変フラットなものだった。
レンタルさんと依頼者の距離感のためかと思うが、「ふうん」で済んでいるのがいい。


どういうことかというと、この手の話が出たときに、「理解してあげたい」という無自覚マウンティングのような反応が出ることが多いのだ。
「わたしの友人にもいる、理解してあげたい」
「知り合いがそうだが、理解してあげられない」
など、言われたことがある人も、いるのではないだろうか。
あるいは、「あなたはそれでいいんだよ」というような、“存在を認めてあげる”系の発言。
心が荒んでいるときは、誰目線ですかね、とトゲトゲしい反応を返したくなる、あれだ。
レンタルさんからは、そういう雰囲気を感じなかった。


一番の大きなメリットは、先にも書いたとおり、普段セクシャルマイノリティーについて情報を求めていない人たちにも、アセクの話が届いたことだ。
コメントやリツイートの中には、「今までアセクというものを知らなかったが、自分がそうではないかと気づけた」、というような発言がいくつかあった。

わたしも自分がアセクだとカテゴライズできたのは、この数年のことで、それまではその概念自体を知らなかった。
知らなかったから、自分のことをおかしいと思ったり、それで悩んだりもしてきた。
自分のセクシャリティーについて、多少の悩みや違和感を覚える人は多くいるかもしれないが、それが知識と結びつくことはなかなか難しい。
わざわざ知識を求めて行動すべきことだとは、思わないからだ。

だからこそ今回、日常の無作為な情報の中で、アセクのことを知れて救われた人は、それなりにいたと思う。

また、コメントが総じてニュートラルまたはポジティブなものなので、自分の気づきに後ろめたさやネガティブな印象をそれほど受けずに済んだのではないだろうか。


ネットで情報をいくらでも得られるとはいえ、その存在を知らなければ、調べることはできない。
日常の無作為なエンカウントは、だから大事なのだ。
レンタルさんを通してアセクを知った人たちが、これから少しでも、関心と平常心を持ってマイノリティーについて考えたり語れればいいなと思う。


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