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#88 北欧へ

※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです

ヨーロッパに行ったら絶対に行こうと決めていた場所がいくつかあって、その中のひとつがフィンランドのラップランド。一番の目的は人生初のオーロラを見るため、二番目の目的はサンタクロースに会うため。結論から言うと、サンタさんには会えたけれど、オーロラを見ることはできなかった。
フィンランドの首都ヘルシンキに来たのは実は二度目。前回は大学4年の春に、高校時代からの親友と一緒に卒業旅行でやって来て、彼女の知り合いのヘルシンキ郊外に住む家族の家に一週間ほどホームステイ。その時のことがわたしの中ではものすっごく良い思い出として残っているせいか、実際それほど多くの見所がある訳ではないヘルシンキ自体に、正直、今回は少し味気なさを感じてしまった。ただ、初っぱなのシベリア鉄道で散々なめにあったせいか、安全度が高いと言われる北欧の国に来て、整然と落ち着いて見える街並みや人々に大きな安心感を得て、旅のモチベーションが復活したのは事実。
ヘルシンキの郵便局で、わたしは実家に頼んでいたある小包を局留で受け取ることになっていた。
毎日チェックしていた郵便局のWEBサイトではまだ「未着」の表示だったけれど、待ちきれずに窓口へ行くと、案の定まだ届いていなかった。ガックリと肩を落としていると、突然、窓口の女の子から日本語が飛び出した。
ビックリして「日本語話せるの??」と聞くと「スコシダケ ガッコウ デ ベンキョウ シマシタ」と。それから彼女はしきりに電話番号を書くように、そうすれば到着したら郵便局から連絡するから、と言ってくれた。
わたしが「Actually I don’t have phone…」と言うと「エ〜? ナンデ~~??」と言いながら、ガクッあるいはズコッというまさにずっこけるような格好をした。日本人はよくやるけれど、外国人がそんな仕草をするのを初めて見たので「うわぁ~! なんだこの日本的な感じ!」と懐かしくて、可愛くって、おもしろくって、うれしくなって、思わず「せっかくなのにゴメン~」と言って、笑顔で彼女の手を握ってブンブン振り回してしまった。
オーロラとサンタクロースを求めて行ったロバニエミ。12月の北極圏は、当然のごとく連日気温はマイナス。
それでも高いタクシーを利用する気には到底なれず、滞在中は毎日5km以上は歩いていた。
ある時、信号待ちをしていると、前を通った車に思いっきり水をはねられた。「うわぁ!」と叫んだ時には既に遅く、カバンとジーンズがビショビショに。でも歩道の前に出すぎて立っていたわたしが悪い…と自分を納得させて、みじめな気持ちで濡れたカバンを拭いていた。突然後ろから肩をたたかれ振り返ると、初老の女性がフィンランド語で何かを話しかけてきた。訳が分からず「I don’t understand Finish language…」と言うと、「Oh, I’m so sorry!!」そう言って去って行った彼女が乗っていたのは、先ほど水たまりの水を跳ねた件の車。わたしに謝るためにわざわざ戻ってきた彼女に驚き感動して、しばし呆然としてしまった。
ロバニエミで泊まってた宿のオーナーは、わたしがヘルシンキから来たと言うと「ここに比べるとヘルシンキは大都会でしょ? わたし達はヘルシンキのことをBig Churchと呼んでいるの。ここで生まれ育ったわたしにとってあそこは都会過ぎるわ」言っていたのが印象的だった。
異国の地で人々の素朴さや誠実さに触れると、わたしの心にはいつもフワッと温かいモノが広がる。
その瞬間がとても好きだ。
ヨーロッパの旅の早い段階で北欧に来たことで、これまでよりも北欧をうんと身近なものに感じられるようになった。時間や予算の関係から、今回はフィンランドしか訪れることはできなかったけれど、次はスウェーデンやノルウェー、アイスランドにも必ず来よう、きっと来ることができる、そう思えるようになった。

ヘルシンキ大聖堂の前に飾られたクリスマス・ツリー
ハカニエミ・マーケットの前にもクリスマス・ツリー
この川沿いを散歩するのがとっても楽しかった
港の近くで見つけたキュートな自転車止め

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