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少年サッカー 自主練のメニューってどうやって決める?

少年サッカーを楽しむパパコーチ体験記の第7弾!

今回は、みなさんご存じ、風間八宏さんの話をします。
その前に、少しお長い前書きがあります。


少年サッカーの育成に、正解なんてない

「少年サッカーの育成に正解はない」と、僕は思います。
スペインだろうが、アルゼンチンだろうが、ドイツだろうが、世界中探してもそれはない。

もう少し言うと、才能のある選手たちを、1/10,000の確率でプロにする方法論はあるかもしれないけれど、どのくらい才能があるかもわからない(自主練もそこそこしかしない)自分の子どもの興味を惹きつけて、上達させるための正解はない、と断言できる。

そもそも、正解だったどうかは、「結果がでた後」にしかわかりません。
望んだ結果が出た後、振り返ってみて初めて「あのやり方で正解だったな」とわかるしかない。
つまり、少年サッカーの育成に関して、どんなに早くとも結果が出るのは10年後で、正解がわかるのも10年後になります

しかも、ある子どもにとっての正解が、わが子にも当てはまるかどうかはわかりません。
子どもは、一人ひとり違うからです。性格、体格、足の速さ、好きなプレー、好きな選手、サッカーを通じた仲間との関係がどのぐらい大事なのか、どのくらい本気でプロになりたいのか。

そして、サッカー少年の親である僕たちは、育成に正解がないこと、正解があったとしても検証できないことは、百も承知です。(ですよね!)

僕たちは、そんな不確かな情報しかない環境の中で、少しでも子どもに、うまくなってもらうために足掻いているのです。(半分以上は、それを見て楽しみたい自分のためですが)


将来のために、何をすればいいの?

そんな正解がない育成環境の中で、将来のために何から取り組めばよいのでしょうか?

これは、難問です。
「将来」はいつなのという点については、僕は「長男が高校卒業した後」と決めました。詳しくは後述します。

そうすると、今のサッカートレンドにあわせるのではなく「子どもが高校を卒業した時点の、”未来のサッカー”でどんな選手になっていたいのか」を考えなければいけないのですが、”未来のサッカー”に焦点を当てることが難しい

この数年でもサッカーはすごい勢いで進化しています。攻撃戦術、守備戦術、フィジカル要素、すべてが変わっています。
長男が高校を卒業した時点で、どんなサッカーが行われているのかなんて「よくわからん」のが正直なところです。
アリゴ・サッキのプレス戦略がこんな形で進化するなんて予想していなかったし、あのペップのサッカーで、ロングパスが重要な戦術要素になることも考えられませんでした。

そんな「よくわからん」不確実な将来のサッカーに向けて、いったい、どんな練習をすればよいのでしょうか?

できることが限られている中で、僕は下の二つを育成の方向性として設定しました。

どんな方向に戦術が進化したとしても、それに対応できる基本技術を身に着けること
❷そして、そこで選ばれるための、明らかな特徴をつくること
(これは、子どもの個性よる部分が大きいので今回は❶について書きます)

これ自体は、極めてフツーの考え方だと思います。
でも、「どんな方向に戦術が進化したとしても、それに対応できる基本技術」ってなんでしょうか?

これも、合理的考えると正解がでるというタイプの問題ではありません。
自分が何を信じるのか、というタイプの問題です。
そして、信じるためには、みんなにとっての合理性はなくとも、自分にとっての合理性が必要なのです。


で、何を信じるの?


長々と前置きを書きましたが、
ここから長男の育成時の僕の考えについて書きます。
(あくまでも一つのケースとして見てください)

結論から言うと、僕が信じたのは、風間八宏さんの技術論です。

これを書くために家の本棚を探してみると、風間さんの本は7冊ありました。
はじめに読んだ2010年の『1対21のサッカー原論』から、2022年の『サッカー外す解剖図鑑』までです。(もっとあったようなような気がしますが、探せませんでした)

風間さんの考える技術論の肝は「見えるようになる」ことだと思います。

『1対21』でも、風間さんが中田英寿さんにインタビューする際に、テレビ画面に映っていない試合中の動きについて会話するエピソードがあります。(どこまで見えているのかを、張り合っている感もあって、ちょっとおかしい)
風間さんの考え方では、まず「見えるか」が根本にあり、次に「見えた所に出せるか(蹴れるか)」があります。

「どんな方向に戦術が進化したとしても、それに対応できる基本技術」とは、「見えるようになる」技術だと僕は思いました。

風間さんの本を読んで、そう信じるようになったのです。

長男と本格的に自主練を始めたのは2014年ごろ。長く続いたバルセロナのポゼッションにこだわるサッカーの勢いが衰え始めていました。2012-13年のチャンピオンズリーグの決勝は、バイエルン対ドルトムントというドイツ勢同士。2013-14はカウンターを得意とするレアル・マドリーが優勝し、さらに2015年からCLを三連覇しました。
トップレベルでは、様々なサッカーが行われていましたが、大きな方向性として捉えると、スペイン的なポゼッション志向と、ドイツ的なインテンシティ志向が大きな潮流としてあるように感じていました。

これが、これからのサッカーの大きな潮流になっていくとすると、必要な技術は何なのか。それは、バルセロナのように狭いスペースでもボールを扱える技術と、バイエルンのようにトップスピードと強度の中でプレーできる技術と身体能力だと思いました。(身体能力の話はまた別で書きます)

そして、これらのプレーをする上で大事なのが、プレーをしながら周りを見られることです。
狭いスペースでプレーは相手が近いので、奪われないためには相手を見て、その足の届かない場所でプレーすることが絶対に必要になる。
トップスピードでのプレーは、ショートカウンターやロングカウンターの場面で多く、そこでは空いたスペースを有効に使うことが成功要件になります。トップスピードでプレーすると、どうしても周りが見えにくくなってしまうため、スペースと相手を見ることを、より意識的行う必要があります。

これが、ポゼッション志向とインテンシティ志向を想定しつつ、どちらの「方向に戦術が進化したとしても、それに対応できる基本技術」とは、「見えるようになる」技術なのでは!?と、僕が(迷いつつ)考えた理由です。


風間八宏の技術論って何?

これを正確に知るには、しっかり本を読み、動画を見て理解する必要があります。ここでは、あくまでも入口として、その考え方をざっくり乱暴に書きます。

先ほど、風間さんの考える技術論の肝は「見えるようになる」ことだと書きました。

たとえば、
「止める」では、完全にボールを静止させます。ボールが止まっていると、ボールを見る必要がなくなり、その分まわりを「見えるようになる」からです。
「止める」のは、風間用語でいう「自分の位置」です。ここに置けば、パスでもドリブルでもなんでもできる、という位置のことです。

ボールホルダーがこの位置に置いたタイミングに合わせて、周りの選手はパスを「受ける」動きをはじめ、マークを「外し」ます。
(僕が風間さんの本を読みだした2014年当時、風間さんの定義する技術は、 「止める」「蹴る」「運ぶ」「外す」の四つでした)

フロンターレの監督になった練習初日で、中村憲剛選手に「止まってないな」と言ったという有名すぎるエピソードがあるように、風間さんに「止める」に対するこだわりは強い。そして「止める」が、風間技術論のすべての起点になっています。

僕の個人的な解釈ですが、
相手と仲間の動きが「見えるようになる」状態になるために、ボールの「止める」「蹴る」「運ぶ」を、ボールを意識することなくできるようにすること、これが基礎技術だと思いました。

そのためには、あまり難しいことをするのではなく、試合中によく使う基本技術を無意識にできるレベルに持って行くこと、ボールを見る時間を最小限にすること、を目指しました。
たとえばそれは、ステップを踏んだインサイドのコントロール、強いインサイドキック、直線の高速ドリブル、左右のターンなどです。

また、「自分の位置」は人によって違いますが、大体利き足の前になると書かれています。

『「1対21」のサッカー原論』より

こうなると、必然的に利き足重視のプレーになります。
なので、風間さんは利き足重視派です。(こちらを参照)

長男がそれほど器用でないこともあり、無意識にできるようにするのであれば、利き足を優先した方がよいと判断して、ドリブルやロングキックは利き足中心で練習しました。


具体的に、どんな練習をしたの?


その練習の一部は、こちらに書いています。
(トップスピードのトレーニングも入ってます)

ここでは、「止める」について、長男と実施した「やっててよかった」練習を二つ書きます。
これらは、試合の中でパスをつなぐ意識がみられるようになった、U9ごろに練習しました。

一つは、バックステップからのコントロールの練習です。

これは試合で本当によく使うコントロールだと思います。
はじめはバックステップに慣れないので動きがぎこちなかったのですが、しばらくすると自然にできるようになりました。バックステップはどのポジションでも使うので、練習の中で動きとして取り入れるとよいと思います。

  • 細かいですが、「1」の動きだしは、軽くステップを踏んでどっちに動くのかをDFに読まれないように意識していました。

  • 可能であれば、ボールが動いている間にミニコーンを見るようにしたい。

  • バリエーションとして、DFがプレッシャーをかけてきたことを想定して、「止める」のではなくインサイドでボールを内側にはじいてかわすプレーも練習していました。

  • この練習だけでなく、練習をする時は、長男に試合の想定場面を説明していました。そしてその時は、DFがこう来たらどうする?」というように、DFの動きを数パターン考えて、子どもがどちらかの動きを選択して行うようにしていました。

「止める」を、もう一つ。

こちらは、ボールの止める位置をズラすコントロールです。

これは、下の画像が見た方がわかりやすいと思います。
ここでは、普段止めているポイントから、「一歩前」か「一歩後ろ」にずらしてボールを止めます。
ボールを止めたら、身体を動かして「自分の位置」に置くようにします。

『風間八宏のトラップが身につく本』より

風間さんは、このようにズラしたり、ターンしながらコントロールする時、ボールを「自分の位置」に動かすためには、ボールではなく、身体を動かす、という考え方をとります。
たとえば、左足でボールをコントロールして、それが自分の位置からズレて止まった時に、ボールを動かすのではなく、身体を動かして「自分の位置」に持って行くということです。
その方が速いし、ミスが少ないということ。
また、身体を動かす間に周りを見ることができるというのもあると思います。


丁度、この記事を書いている時、たまたま10/7発売のサッカークリニックの特集が「風間八宏思考」だと知りました。早速、買ってみましたが、内容はアップデートされているものの、基本的な考え方は「やっぱり同じ」でした。風間さんの現在の考え方がコンパクトにまとまっています。ある程度風間さんの書籍を読んでいる方であれば、とてもおもしろいと思います。

ただ、子どもの自主練の参考にしたい(そして風間さんの本を読んでいない)というのであれば、詳しく書かれている『「1対21」のサッカー原論』か、『サッカー止める蹴る解剖図鑑』がよいと思います。

このサッカークリニックでは、指導者は映像を見せることが大切だ、という話があったので、「見えている」プレーの参考となる映像を探してみました。
それが、レアルに入ってからのベリンガムのプレーです。「見えている」プレーが本当に高いレベルでできるようになれば、こんなプレーができるのだな、と思いました。

※20秒と2分50秒のゴールのどちらも、「見えている」プレーです!


サッカー少年の育成で、どこを目指すの?


最後に、長男にとっての「将来」を、「長男が高校卒業した後」と決めたことについて書きます。

サッカー少年の育成を考えるにあたって、まず決めなければいけないのは、どこをゴールにするのか、ということです。小学生で上手ければ中学以降はどうでもいいなんて親はいないでしょう。

僕は「長男が高校を過ぎても、本気でサッカーができる環境にいること」を目指そうと思いました。

長男は、スプラトゥーンの腕前は日々着実に上げながら、サッカーの自主練は大してしないにも関わらず、「プロになってプレミアにいく!」と自信満々に言います。(なんのプロに?)
それでも、この根拠なく自分を信じることは(言いたいことはあるとしても)良いことだと思っています。

そして、成長とともに、ちゃんと努力して、ちゃんと挫折して、そこから立ち上がる経験をするのがスポーツの最もよい部分の一つだと思っています。
「ちゃんとした挫折」から立ち上がることができる人間になれれば、その子の人生は何があっても大丈夫、と思うからです。

選手の登録人口を小学生の4種から、大学のある1種までの間に、
JFAの選手登録の人数は半減します。
「本気のサッカーを続ける環境」は、どんどん少なくなって行きます。

「高校をすぎても本気でサッカーができる環境にいる」というのは、2種のユース年代でそれなりに活躍して、大学からスカウトが来て、大学サッカーの試合に出れるレベルをめざそう、ということで、これは結構難しい目標です。
それでも、プロを目指すよりは、まだ可能性は高いですし、仮に大学の競技レベルのチームに行けなかったとしても、挫折を乗り越えて、人生を立て直すことができると思いました。

一方で、「親までプロをゴールに目指してしまうのは、よくない」と思っていました。子どもが「プロになれなかった時」「ちゃんとした挫折をした時」に、サッカーをした時間に対して「失敗」というレッテルを張ってしまうような気がしました。
少年サッカーは本当におもしろいと思います。
しかし、それでもサッカーをすることが幸せでない結果になっていまうのも見てきました。「親が子どもに期待しすぎないこと」は、親にとっても子どもにとっても大切だと思います。

また、プロを目指すと、生活できないレベルの給料でも、環境の悪い海外でも「プロでさえあればよい」というようになってしまう可能性があると思いました。
成長した子どもが納得した上でそれを選ぶのであれば、もちろんよいのですが、「子どもの頃に立てた夢をかなえる」ことが呪縛となって、子ども自身の冷静な判断ができなくしてしまう可能性もあると思います。

子どもが「プロになりたい」というのを全力で応援はするけど、期待はしすぎない。(万が一プロになれたら、ラッキーだけれど)長い間、本気のサッカーを楽しむことができたら大成功だと思いたい。
そして、長男にはいつまでもサッカーを楽しんで欲しい、と思います。


読んでいただきありがとうございました。

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