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少年サッカー 利き足派、両足派。  あなたはどっち派?

少年サッカーを楽しむパパコーチ体験記の第五弾!

育成のシーンでだれもが一度は通る道、そして熱く語る人が多そうなテーマ、利き足重視、両足重視について書きます。


何度も言いますが、サッカー少年を持つ親の最大の関心は、
いかにして、子どもを上手くするのか、ということではないでしょうか。

そのためには、親と子どものタッグチームによる自主練が有効であり、
どんな考え方で、何をすればよいのか、について、こちらこちらに書きました

そして、その大事な自主練に、大きな影響を及ぼすのが「利き足」問題。
最近出版された、三苫選手の本の中で「利き足重視」の記述があったので、今再び注目を集めているようです。

この記事を読んでいるよう方は、これまでにも一度や二度は、このテーマについて考えたことがあると思います。

僕も、長男がU5、6の頃に、もれなくこれについて考えました。
そして、そこで方針をエイヤッと決めて、練習方針はそこからブラしていません。これは、自主練のすべての土台となることだからです。(大げさ)

ですが、その後も自分の心の揺れはありました。

「利き足を中心に鍛えると、利き足は上手くなるのが早いけど、
 本当にそれでいいのかなぁ」
「両足使えた方がいいと思うのだけれど、逆足がなかなかうまくならん。
 意味ないんじゃないの」
という気持ちの間を、動物園のトラのようにうろうろするのが親の心情です。
みなさんはいかがでしょうか?

利き足派って、いつ頃でてきたの?

僕が子どもの頃は、利き足派なんておらず、だれもが両足派でした。

利き足だけでプレーするのはスペシャルなレフティーのみ。
たとえば、リベリーノ、オベラーツ、マラドーナ。(古い)
彼らは、ものすごくカッコイイプレイヤーで、真似もしましたが、自分が目指すべき対象だとはなりませんでした。
なんたって、左利きですから。

右利きに生まれついた凡人は、両足を練習するしかないので、苦手な左足を練習する。それでも、左足の上達が遅く、使い物にならないため、結果として右足中心のプレーにならざるを得ない。
当時は、そんな「結果としての利き足派」はたくさんいました。(残念)

しかし、10年ほど前に「利き足にフォーカスしてトレーニングした方が上達が早い」ということを言いだす人が出てきました。

もともと誰が言い始めたのか、僕にはわかりません。
当時、長男の練習方法を模索していた僕は、ネット上でいろんな意見を見ました。

たとえば、リトバルスキーが「香川のプレーはもっと右の利き足を中心にすべきだ」と言っていたり(うろ覚え)、ネイマールが幼少期に「利き足をもっと使うように指導されたが、反発した」というような話を読んだりしました。(うろ覚え2)
「右利きなのに利き足中心にプレーしてもよいのか」と感じたことを、覚えています。

しかし、利き足重視派の存在が明確になったのは、風間八宏さんの登場からではないでしょうか。

風間さんについて説明は必要ないと思いますが、技術からサッカー全体を考えていく、という独自の視点を持っている方です。

僕は風間さんの本が好きで、ほぼすべて買っています。
(書いている内容の根本はそんなに変わらないのですが、時々のトレンドの 読み解き方などがおもしろい。あと独自の言葉を開発して使うのでマーケターとしても勉強になります)

一番初めに読んだ風間本は、こちらです。

2010年のこの時点で、「止める・蹴る・運ぶ・外す」が、基本技術だといっており、中でも「止める」へのこだわりを強く語っています。

風間本には、「風間八宏のトラップが身につく本」というものもあり(購入済み)そのトラップへの強すぎるこだわりが現れています。実際の中身も8割以上がトラップ中心の練習になっています!

風間さんがここで言っているのは、こんなことです。(超ざっくり翻訳)

・「止める」ためには、自分の「ボールを置く位置」がわかっていることが必要。
・そして、この「自分のボールを置く位置」は利き足の前である。
・ボールを「置く位置」とは、自分が蹴ることも運ぶこともできる位置、次に何でもできる位置のこと。
・ここに一発でボールを置くことができるとプレーが格段に速くなる。

『「 1対21 」 のサッカー原論』 より

2017年の『技術解体新書』では、利き足重視について、もっとはっきり言っています。

利き足が完璧にできないのに利き足でないほうで蹴ろうとする人は多いけど、1がないのに2にはならない
  利き足は右足だが、右足のキックが完璧にはできない。そういう選手が左の練習をしたところで、当然左も不完全になるだけである
「逆に、利き足が完璧だと逆の足はあんまり必要なくなる

ちょうどその頃、川崎フロンターレのアカデミーが、利き足重視の育成方針を打ち出した、という記事を読みました。フロンターレは2012-16まで、風間さんが監督していたチームです。

その後話を聞かないので、忘れていたのですが、先日三苫選手の本を読んで、三苫選手が「利き足重視」の指導を受けていたことを知りました!


利き足派の言い分は?

利き足派の主張は、ほぼ三苫本に整理されています。


  1. 世界の一流選手は、ほとんど利き足でプレーしている
    ・イニエスタは試合で600回以上ボールタッチするが、左足で触るのは20回だけ。メッシやシャビは逆足では一試合で一桁回しか触らない。

  2. 体の向きや動きを意識すれば、利き足だけでプレーできる

  3. 運動神経が発達するゴールデンエイジに効き足を多く使って感覚を養う
    ・技術が伸びやすい時期に、試合で使う利き足の技術を伸ばす。
    ・「利き足に関係なく、両足で自在にボールを操れるようにする」よりも、「得意な利き足をさらに上手く使えるようにする」方が、能力が伸びやすい


特に、「1.一流選手は利き足でプレーする」が最も大きな論拠となっています。実際に、ここ10年間世界最高のプレーヤーだった、メッシはほぼ左足。クリスティアーノ・ロナウドはほとんど右足でプレーしています。

「実際に試合で使う技術を練習するのがトレーニングでしょ。
だったら、利き足を磨くのが大事だよね」というわけです。

フリュマンス・ビッシュ氏、キックする

両足派の言い分は?


では、主流派であった両足派の言い分は、何でしょうか。


  1. 両足を使えると、プレーの選択肢が広がる
    ・片足だとプレーを読まれやすく、上のカテゴリーに上がった時に、行き詰りやすい。
    ・読まれにくいことで、利き足がより活きてくる。

  2. 複数のポジションでプレーできる
    ・片足だと、チームの戦術の中でできるポジションが限定される。

  3. 身体のバランスを整え、利き足をより上手くする

  4. ディフェンス時には、逆足でボールを奪える必要がある
    ・現代サッカーでは、すべての選手にディフェンススキルが必要。

  5. ゴールデンエイジに、両足を使える感覚を身につけさせる


上の3と4は、元サッカー選手の中西哲夫さんを指導するときに意識していたことだそうです。中西さんは、久保建英選手が子どもの頃からパーソナルコーチとして指導をしています。

中西さんは、久保選手に対して「左足と右足の両方均等にトレーニングさせていた」とこの動画の中では語られています。
(中西さんが見ていたのが久保選手の練習の中のどれ位の割合なのかは不明です。ただ、その成長過程の中で逆足のトレーニングに相当の時間が割かれたことはうかがえます。)

該当箇所は10:23から。
この動画の中にある、ティエリー・アンリやベルカンプとの練習エピソードはしびれます。ぜびご覧ください。

結局、どっち派なの?


改めて、両者の言い分を見てみると「どっちもあり」という気がします。

プレミアリーグで、得意の右足のドリブルで勝負している三苫選手、今期チャンピオンズリーグに出場するラ・レアルの主力となったレフティーの久保選手。
右利きの三苫選手が利き足にこだわり、左利きの久保選手が逆足でプレーを広げようとしているのはおもしろいと感じました。

ただ、この今最も世界で活躍している日本人の二人が、異なる道筋を辿ってきたとすると、利き足派も両足派も「どっちもあり」だし「どっちも正しい」と思います。
そして、三苫選手には、利き足中心の練習が合っていたし、久保選手には両足を磨く練習が合っていたということでしょう。

つまり、誰にでも当てはまる一般解はないということ。
あとは、「自分の子どもに、どっちが合っているのか」の判断です。


我が家の結論として、僕の長男は、利き足重視の育成を取りました!

理由は、長男が運動神経が高くなく、器用でなかったことです。

長男は、足はそれなりに速かったのですが、それほど器用なタイプではなく、パッとみたことがすぐにできる、という感じではありませんでした。
あと、べた足気味でステップワークが軽い方ではない。なので縄跳びなども得意ではなかった。
サッカーの練習でいうと、キック練習が好きで、ドリブル練習はあまり好きじゃない。
性格は、勝負には絶対に負けたくない方。

こんな長男を見て、なんとなくですが、将来の目指す選手像をこんな風にイメージしていました。
技で勝負する選手ではなく、チームのために身体が張れる選手。
たとえば、ポストプレーや背後をつく動きで相手センターバックと身体をぶつけながら勝負するFW。攻守で戦うボックス・トゥ・ボックスのMF、相手のエースを抑えるCBなど。サイドではなく、プレッシャーのきつい真ん中で踏ん張るプレーヤーのイメージです。
(今振り返ると、長男が当時好きだったチェルシー時代のジエゴ・コスタに、かなり引っ張られてますね)

ですので、キックやコントロールなどの技術を磨くことに加えて、相手に身体をあてながらのプレー、身体操作のトレーニングも必要かな、と考えていました。(このあたりは、ジュニアユースに入った今、やっててよかったと思います)

こうして、利き足重視にしたのですが、逆足練習まで手が回らなかったというのが正直なところかもしれません。(なし崩し的)

加えて、長男には思ったよりも早く、成長期が来ました。
小学生の間は、毎年の伸びが大きかった。体が大きくなるのはよいことですが、その一方で身体のバランスは崩しやすくなります。
もともと器用でないのに、さらに技術の習得に時間がかかるかも、と思いました。

成長期に起こる、クラムジーという症状があります。
ざっくりいうと、身体の急激な成長に脳がついてこれず、頭の中でイメージする身体の動きと実際の身体の動きの間にズレが生じて、これまでできていたことができなくなる、という状態です。
本田選手や鎌田選手も、クラムジーで悩んだという記事を読みました。

小学生時の利き足(右)と逆足(左)の練習バランスは、こんな感じです。

  • コントロールは左右両方
    コントロール時の身体の向きに関わるのでこれは左右のインサイドで止められることが絶対必要です

  • インサイドのショートパスも左右両方

  • ドリブルは、はっきりと利き足重視
    ダブルタッチなど、左足を使うものも少しはある

  • シュート、ロングキックは利き足9対逆足1
    結果、左足は使い物にならず

フリュマンス・ビッシュ氏、リフティングする

ということで、小学時代には利き足重視でしたが、
ジュニアユースになって後ろ目のポジションにコンバートされると、すぐに左足のキックを練習させられていました。
なんだかんだいっても、チームの方針によって自主練の方針も変わります。

左足と右足のキックは回転が変わります。左足で右に曲がる回転のキックができると、より多くのポジションを担えるということでした。
アーセナルの冨安選手が左右のセンターバック、左右のサイドバック、アンカーまで守備的なポジションは、ほぼできる。そんな育成の成果をめざしているのだと思います。(目指すことの自由、できていない現実)

左のロングパスに苦戦していたようなので「左足も、もっとトレーニングしておいたらよかったかな」と思わなくもないですが、右足のキックと対人の強さが強みとして評価されているので、難しい所です。

子どもは一人ひとり違うので、育成は常に結果論にならざるを得ません。
なので、小学生の頃から、練習の意図をできるだけ長男に説明するようにしていました。
親子は同じ目標に向かうタッグチームなので、長男にも納得して練習してもらいたいと思っていたからです。
(妖怪ウォッチやベイブレードに夢中の小学生に、どこまで伝わっていたかは別にして)


読んでいただきありがとうございました。

今後も続けて、子どものサッカーに関するあれこれを書いていきたいと思います。

おもしろかったら、いいね ♡ してくれると嬉しいです。

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