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延長線上

秋になるとふと思い出す場所がある。
片田舎にたった一つだけある中学校。

人口よりも大根が多いのでは?と自虐的に嗤う住民がいるほど木々や畑に囲まれたその地域は、シンとしていて静かだった。

部活がない日は一人で帰路を辿るのだけど、金木犀の香りに集中しながらバラバラな歩幅で帰るのがとても好きだった。

誰かと一緒にいるとたくさん考えてしまう。
今この子は楽しいだろうか、つまらないだろうか。
私の声音、話し方大丈夫かな?
バイバイを言うタイミングはいつがいいの?
歩く速度大丈夫かな。

誰かと歩く10数分の道のりは、別れた後ドッと疲れてしまう。
こんな自分はたぶん少数派で、この先生きにくいだろうな…とぼんやり思っていたことを覚えている。

大人になった今でも生きにくさは諸々あるものの、社会に揉まれた事であの頃よりはずいぶん柔軟になり「1人で歩く帰り道は案外心地よくて気楽なものよ」と足取り軽く歩いている。

あの時の少女も、秋風を吸い込み鼻唄混じりに歩く熟女も、同じ延長線上にいるのだと思うと面白い。

今も昔も変わらない点は、「一人でいる心地良さと柔らかな孤独」を知っていることだ。

今日もどこかで頑張り一人帰路へ向かうあなたへ、また明日ね と心の中で手を振る。

#日記 #エッセイ #帰り道 #会社 #学校 #ひとり
#HSP




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