【本の感想】9割の社会問題はビジネスで解決できる / 田口一正

タイトルに惹かれて購入。社会課題に取り組む人間としては読んでおかなければいけないかな、と思い。

本の構成としては、筆者である田口さんが代表を務めるボーダレス・ジャパンの会社の仕組みやどのようにビジネスが展開されているかを紹介しながら、「ソーシャルビジネス」の在り方・取り組み方を解説する、というもの。ご自身の経験や実際のケースを例示しながら解説されているので、とてもわかりやすい。サクサク読み進めることができた。
タイトルだけ見ると各種課題の解決の仕方が書いてあるように思えるが、どちらかというと「社会課題解決ビジネスの始め方」のような印象。

Jリーグのホームタウン担当として、きっと僕だけでなく多くの方が頭を悩ませているのが「活動をどうやって評価するか」だと思う。
「それってクラブのためになってるの?」
「それでどれだくクラブの利益は増えるの?」
「なぜクラブがそれをしなければならないの?」
こんな質問をクラブ内で受けたことがある人はきっと一人や二人ではないはず。「ホームタウン活動」ってJリーグに所属するクラブである以上やらなければいけないことだし、なんとなく「いいこと」だとは思えるけど、こと「評価」となると難しいものになる。

それはなぜか。
そのヒントが本書にはあるなと。
本書では、「ビジネス」と「ソーシャルビジネス」の違いをこう定義している。
「ビジネス」→「ビジネスモデルに立脚したもの」
「ソーシャルビジネス」→「ソーシャルコンセプトに立脚したもの」
出発点が明確に違うし、「ソーシャルビジネスの対象者は効率の追求から取り残された人たち(従来のビジネスでは対象になりえない)」とも述べられている。つまり、ソーシャルビジネスと従来のビジネスは同じ物差しだけで測られるべきではないのだ。

先ほどの、
「それってクラブのためになってるの?」
「それでどれだくクラブの利益は増えるの?」
「なぜクラブがそれをしなければならないの?」
という質問はすべて主語がクラブになっている。もちろん、この観点で見なければいけないものもあるが、「社会にとってどうだったか?(ソーシャルインパクト)」の観点での評価も必要なはずだ。
それを振り返るのに必要なのがソーシャルコンセプト。
解決したいと思った課題。思い描いた理想の未来。それにどれだけ近づけているか。どれだけの現状を変えられたか。課題や対象の解像度が高ければ高いほどそこもはっきり見えてくるはず。

この「ソーシャルコンセプト」の立て方、そしてそこからぶれずに推進していくことが重要であることを本書で再確認することができた。紹介されているフレームワークも腹落ちできた。(前職で学んだ課題解決のフレームワークにも近いものを感じた)

・・・という実務的な部分でも大きな学びがあった本だが、
「自分が味わった苦労を人に味合わせたくない」という考え方は改めてとても素敵だと思ったし(なぜか日本は人に同じ苦労をさせたがる人が多い気がする。)、なにより最後の、

「僕たちは微力かもしれないが、無力ではない」

という言葉には大きく感銘を受けた。
モチベーションをもらえる本でした。よき!

私的おススメ度
★★★★★ 5/5

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