見出し画像

Nintendo Switchに息子が震えた日

マレーシアで生まれマレーシアで育った息子が、今日9歳になった。

そんな息子が恋に焦がれたNintendo Switchをついに手にした日の話です。

ロックダウンでほぼ家から出ない生活にも慣れてしまった小学生男児、家でやることと言ったら、3つ上の姉と漫画を読んだり、描いたり、なんとなく縄跳びしてみたり。

つまんないと呟く日々が続いていたが、ようやく規制が緩和され、数ヶ月ぶりに彼の祖父母と叔母が我が家を訪れ、誕生日を一緒に祝えることになった。

久しぶりに祖父母や叔母に会える事を喜んで、楽しみにしている息子を尻目に(あんたが嬉しいことはそれだけじゃないんだよ。すごいもんが待ってるよ)とポーカーフェイスを保ち心で叫んでいたのはこの私。この家のどこかにNintendo Switchが隠されてるなんて息子にとっちゃ知る由もなければ想像すらしてないだろう。

まさか自分の親がゲームを買ってくれるとは、本人はこれっぽっちも思っていないのだから。

息子はずっとNintendo Switchに憧れを抱き続けてきた。同じ年頃の子どもが遊んでいる姿を見かけて、そのゲーム機に思いを寄せ始めたロックダウン前。ひとたびNintendo SwitchのソフトのCMがテレビで流れたら、どこにいてもすっ飛んできてCMに釘付けになって凝視するその姿。七夕の時には花壇の木にその願いをしたためていた。

しかし、私たち親はゲームは買わない、というスタンスでずっとやってきた。彼の通う学校では子どもにはテレビやゲームなどの媒体に触れさせることを強めに否定する方針を抱えていて私もそれに従ってきた。実際、息子は学校のクラスメイトとはゲーム類の話をしてきたことはほとんどないはずだ。学校も先生も大好きな息子、先生がゲームを勧めていないことは百も承知だ。

だけど、欲しいっていう気持ちは抑えられないんだよな。

だだ漏れなんだな。

二言目にはNintendo。三言目には気になるソフトの話。買ってもらえないんだったらサンタに頼んだらいい!と息子が意気込み始めた10月始め、とあるツイートに目が止まった。


画像1


このツイート自体の要点は優しい友達の存在って事だと思うのだけど、ファミコンを買ってもらえなかった思い出を抱える、このらいのさんと息子の姿が重なって、一瞬でなんか、買ってあげようかなと考えが180度転換したのだ。

思い返せば、私もゲーム機を買ってもらえなかった類の子ども時代を過ごした。時代はファミコン全盛期、値段は確か14800円だった。(念のため調べたら自分の記憶が間違ってなかったことに驚いた)。子どもながらに、ねだっていい金額ではないと思っていたし、親も全く買ってくれる気配を持たなかった。それでも最先端のゲームで遊びたい気持ちは抑えられない。ファミコンを持っている友達の家まで、遠い道のりを歩いて通ったこともある。


どんだけ息子が欲しいかわかるはずじゃないか。


ファミコンを持たない私と弟を不憫に思ったのか、親戚のおばさんからある日、ファミコンが実家に届いた。あの時の自分たちの狂喜乱舞を思い出した。息子がもしNintendo Switchを手に入れたら、どんなに喜ぶんだろう。


そう考え出したらもうワクワクしだすよね、こっちが。


すぐ夫にその旨伝えると、どういう風の吹き回しだと驚いていたけど、『子ども時代の良い思い出作りだ』と答えた。ほんとに理由はそれだけだ。

とはいえ、我が家からするとNintendo Switchはなかなか高額品で、おいそれと購入できるものではない。そこで、義両親にプレゼントの額を折半して一緒にプレゼントを贈ってもらえないかと聞いてみた。もちろん義両親たちはそれを快諾してくれた。夫はショッピーでNintendo Switchを注文し、二人して配達日には絶対子どもが荷物を受け取りに出ないように細心の注意を払う。

そしてブツは届いた。

果たしてNintendo Switchは家族全員からのプレゼントという名目を掲げタンスの中でひっそり贈られるのを待ち構えていたのだが、私は思った。このワクワク感を娘にも味合わせたい。

でも娘が誕生日当日まで弟に黙っていられるだろうか、いや多分無理だ。顔に出す。絶対いらんこと言う。

でも、弟がプレゼントを開ける前に中身を知っていた方が、弟のリアクションを数倍楽しめるはずなんだ。私は当日のプレゼントを渡す直前に娘を体育館裏(寝室)に呼び出した。

怪訝な顔を浮かべる娘に私は小声で言った。

『プレゼントはNintendo Switchなんだよ。ここに隠してる。』

娘がとまった。驚きと喜び(自分も遊べる)を隠せない。大興奮だ。私ときたら、息子だけでなく娘のリアクションまで楽しめるとは棚ぼただった。

そんなふうに母親がいい気分になってたところ、娘がポツリと呟いた。

『私、今までNintendo Switch持ってる子を憎んできたんだよ。』

おい!怖い!


娘も人知れず憧れてたんだね、Nintendo Switchに。そんな娘に弟にプレゼントを手渡しする使命を与え、その時が来た。

家族全員が見守る中、ラッピングされた箱を受け取り、まずは『ありがとう』という息子。『靴かな。』とか言ってる。

ご機嫌に包装紙を開いた息子の目玉が飛び出した。

『ウソでしょ!!』

嘘じゃあるかい!正真正銘のNintendo Switchだよ。

息子は喜んだ。もう泣きそうな勢いで。包装紙を全部外して箱を確認している間に心拍数がどんどん上がったのか、なんなのか唇がガタガタなり出した。

震えてるやん。

またまた、怖っ!


一旦、水を飲んで落ち着くように伝えて、そして誕生日のカードを渡した。家族全員からのプレゼントであることや、これからゲームを使うときに約束して欲しい事などを書いたのだ。息子は声に出して読み約束すると言っていた。

この後、息子は何度『ありがとう』と言ってきただろうか。ありがとうの大盤振る舞い出血大サービス。

娘はこの日を大人になっても忘れないと言っていた。子ども時代の良い思い出にいつかなるだろうか。

そうだといいな。


息子9歳の誕生日の思い出を忘れないように綴りました。

長文お読み頂きありがとうございました。


追記:ソフトは、無難だと思ったマリオカートを選んで買ったんですが、今のゲームってすごいね。一緒にやってみたら乗り物酔いするかと思った。


あ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?