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ニコニコと好感度高い人たち(第一印象)


常に笑みを絶やさない人がいる。眉を曇らすことすら滅多にしない。何が起きても笑っている。
「いつもニコニコしていて、本当に『いいママ』だよね」
「本当だよねぇ。怒ったのみたことがないよ」と、みんなでため息をつく。
そんな人は、今カウントしても人生の中で10人は思い当たる。
いつも飛びっきりの笑顔で接してくれて、あの人がいると場が明るくなるからいいねぇ、と思う。
見習わなきゃなぁ。それに引き換え、オイラはあっちで怒り散らし、こっちで憤慨し……と反省しきり。


しかし、ある日のことだ。
そのニコニコさんAのお母さんが亡くなられたとき、それでも笑っていたので、私はドキッとした。いや、本当に申し訳ないが、ゾッとが正確な表現かもしれない。
それは、病院から訃報が届いた数時間後のことだったのだが、散々泣いてもう腹をくくったとか、母は闘い切ってむしろ清々しいだとか、そういう感じでもなかった。
もちろん、あまりの突然のことにどういう表情をしていいかわからない、ということはある。それだったらわかるのだが、無理して笑っているようでもなかったのだ。
そのときは、幼稚園のお迎えの道すがら、それまでニコAさんと普通の世間話をしていたのだが、ふいに
「明日から忌引きで幼稚園を休むので、係の交代をお願いしていいかなぁ」という、事務上の報告があったのだ。
「え。お母さん、亡くなられたの?」
と、目を見開く私。
「そうなんだぁ」と、相変わらずニコニコしている。 
心中はきっとボロボロだったに違いないが、あまりにも、セリフとその表情との乖離に、私はとても戸惑ったのを覚えている。泣けないのかもしれない。彼女は。


それが、だんだんと私の中でニコニコさんたちへの疑問が解けていった瞬間だった。
幼稚園や小学校、中学校と、彼女たちと付き合いを重ねているうちに、ほろほろと解けていく、その謎。
彼女らの多くは、自分を押し殺しているのだ。

ニコニコさんたちは、心の底では自信がなくてニコニコしている人もいれば、麻痺してニコニコしている人、感情や疑問を押し殺してニコニコしている人がいることが多いのがわかった。すべてではないかもしれないので、「その傾向の人が多い」と強調したい。
そしてこれも、すべてではないかもしれないが、亭主関白の家が多い。あるいは、お父さんがとても厳格だった人も。
争いを極端に好まない性格なのかもしれないが、結果、自分を殺しているのだ。抗うことを放棄して、笑うのが一番穏便な方法だと体に叩き込んでいる。

しかし朗報もある。
そんなニコニコさんたちは、ある日、突然豹変することがある。
ある日、何らかのキャパシティを超えると、連絡が途絶えたり、攻撃的になったり、逆恨みしたりする。
さすがに既読スルーを繰り返されたり、突拍子も無い批判をされたりすると、正直厄介だ。けれども、やはり笑顔で押し殺すのにも限度があったのだと、少しどこかでホッとする。ポジティブからネガティブに反動を起こして、バランスを取っているように見える。普段笑顔しか見ていないので、ちょっとびっくりするけどね。

しかしそういう牙城が崩れる人はまだ救いがあるのだが、なかなか崩れないで孤高のスマイラーも何人かいる。根が深い。そしてタフ。ニコAさんも、そう。

そしてその根深い彼女たちからは、ある「鈍さ」を感じることが多い。
やはり、感情を押し殺しているぶん、その自分の感情に寄り添ってあげることができていない。なぜ、こんな感情になるのかを無視してしまっているのだ。笑いで押し殺す。そして、それゆえにいろんなことに「鈍く」なっている。
もちろん、自分の気持ちに寄り添えないのだから、他人の気持ちにも鈍い。そして人付き合いが苦手になっていく悪循環。なぜ人が離れていっているかもわからない。いつもニコニコと笑顔で接しているのになぜ、と思い悩む。
それをこじらせて病に伏した友だちもいるので、それを見るにつけ、「あぁ」といいう気持ちになる。


笑顔でいることは素敵なことだ。
笑顔はその場を、明るくするパワーがある。不機嫌で場の空気を重くするよりは、ずっといいことばかりだ。

しかし、自分の本当の気持ちを押し殺してまで、笑う必要はない。何より大事にしなければならないのは、場の空気でも、なんでもない。
本当に守るべきなのは、自分の「心」だからだ。

常にポジティヴなことばかりを口にしてニコニコしているのも、ある意味「バランスの欠如」なのだな、と思って、見習おうという考えはやめた。笑顔でステキになろうなんて、しょせん私には無理だ。
まだ「今泉さん。相変わらず思っていること、顔にダダ漏れっスね(昔、職場で部下に)」と指摘されるほうが、私らしいのかもしれない(それは、それでどうだろうか、とも思うが)。



ここまで読んでくれただけで、うれしいです! ありがとうございました❤️