【オリーブの本棚】(少しネタバレ?)『黒牢城』米澤穂信著 KADOKAWA

読んでまず感じたことは以下の3つ。

① 籠城という閉鎖的空間における心理的圧迫に加え、希望が持てない状況は、人の心に疑心暗鬼を生む。

② 独りよがりな信念に基づく行動は、自分と周囲に滅びをもたらす。

③ 人から伝え聞いたことは必ずしも事実とは限らない。

以上のように書くと、何だか自己啓発本のようですが、これは荒木村重という戦国武将を主人公にしたれっきとしたミステリーです。単なる時代小説でもありません。

序章に続き、4つの短編、最後に終章という構成となっていますが、単にバラバラの話ではなく、連作になっており、最後にすべての驚愕の事実が明らかになります。

もちろん、一つ一つはちゃんと独立した話にはなっており、ひとつの事件が起き、それが一応解決はされるのですが、ちょっとした謎が残ったまま、次々話が進んでいきます。

章を追うごとに季節も進み、だんだん主人公の置かれた立場が追い込まれて行く様子も、うまく描けているように思いました。

時代物は全く興味もなく、取っ付きにくかったのですが、いざ読んでみると新しい本格ミステリーの世界に案内されたような気持ちになります。

あらすじなどはたくさんのページやYouTubeに挙がっているので、興味のある方はそちらをご覧下さい。

読了感はわりと爽やかで、少し忘れかけたころ、また手に取ってみたい一冊です。よろしかったら一読してみられてはいかがでしょうか?

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