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イラストの描き方、その2 アナログ作業

 こんにちは、船津です。
前回はアイデアからラフの書き方までについてを、「私の名前はルーシー・バートン」の装画の実際のラフを使って説明ました。

 今回は、またそれとは違うものになってしまいますが、例を挙げて説明をしたいと思います。
 下の絵は小学館STORYBOXという小説誌2019年4月号 日明 恩さんの連作シリーズの扉絵です。このお話は、空港を舞台にした税関職員の小説です。クールな主人公とちょっととぼけた相棒の組み合わせが面白いので、よかったら小説の方もぜひ読んでください。

さて、この絵で制作過程をお見せしようと思います。

パレットについて

 絵を描く前にあらかじめ、モノクロ5階調、できれば10階調の絵具を作り、その絵具をタッパーに並べておきます。タッパーの底には水分を調節するため厚手のキッチンペーパーを敷き、それに水が滴るくらいに水分を含ませておきます。
 タッパーに入れるのは描くのが終わったらフタをして乾燥を防ぐためです。多めに作っておくと、一か月から冬場は3か月くらい置いておけます。また作業をしたいときはふたを開けるとすぐに作業できるので、とても便利です。

 絵具は好みのメディウムなどを混ぜて好みの硬さに練っておきます。私の場合は乾燥を遅くするメディウムを混ぜておき、そして絵の具が固くなるメディウムも混ぜ、かなり固めに練って置きます。油絵具の感じに近くするためです。筆にとってキャンバスに載せるときに筆が重くなる感じが好みです。
 そして、ふたには色見本を作って張っておきます。アクリル絵の具は乾燥すると濡れていた場合より明度がほんの少し変化します。これが微妙なトーンの違いを画面上で出したいときに困るのですが、色見本があれば、乾くとこの明度になるというのがいつでも確認できます。

 このタッパーのセットのことを私はパレットと呼んでいます。上の画像は私の使っている白黒のパレットです。(だいぶ使った後なので汚い画像ですみません…)
このほかにもカラーのパレットを何個かの色調で作って持っています。
それについては、またの機会に詳しくお見せしたいと思います。

 新聞の仕事や挿絵の仕事が重なっている時期に、このパレットを作ってとても助かりました。

ラフを絵の画面にトレースする

 前回のように、この絵のラフはもう作ってあります。
編集部の方にお見せしたのがこちらです。

 そして、本番用にイラストを描く前にラフをブラッシュアップしておきます。それがこちらです。より視線が主人公に集まるようにしました。また適度に前の人物などを描きこみます。

 さて、ここからです。
このラフを絵を描く支持体、今回はイラストボードに、トレースしていきます。
 トレースは以前は、ラフを絵のサイズに合わせてプリントアウトし、それをカーボン紙などで転写します。
しかし、大きいキャンバスに描く時などはとても骨の折れる作業で、しかも繰り返し同じものを描くのが嫌いな私にはモチベーションの下がることでした。

 そこで思いついたのは、映画などを投影するプロジェクターを使ってラフを投影し、下書きなしで、そのまま絵の具を乗せて絵を描き始める方法です。

 ちょっとアホかと思いますよね? この作業もキャンバスのサイズに合わせて絵を映すのが結構大変で、全然カーボン紙でのトレースで十分ですので、マネしないでください。
しかも小さい4Aくらいのサイズの画面だと、カーボン紙のほうがはるかに楽で経済的です。

 何故私がこの方法でラフをトレースしているかというと、いろいろな方法を試している最中で、今はこの方法が面白いと思っているからです。あとF15以上とかのキャンバスに描く時はこの方法が結構楽です。
この話もまた別の機会に…(興味がありましたら)

 下の動画は書き始めをタイムラプスで録画したものです。
光がチカチカ点滅するので注意してくださいね。
ちょっとわかりにくい動画ですみません。
これはアナログ作業の描き始めで、プロジェクターを投影しながら描いているところです。一時停止しながら見ていただくと、動画の最初のほうは手の影になったところが何も描かれていないのが分かると思います。最後のほうはプロジェクターを止めて描いています。

 このように、ラフが決まってしまえば、あらかじめ作ったパレットとプロジェクターを使ってシステマティックに下り坂のように楽に作業していけます。

うそです。アナログ作業はいろいろ大変です。毎回泣きそうです。

 将来的には、ラフを描いたものをそのままPhotoshopで描き続け完成させる完全デジタルになりたいと考えていますが、今のところ研究不足でPhotoshopだけだと納得できるものが出来ません。

塗り方

 動画を見ていただけると少しわかると思いますが、筆はデザイン用のアクリルの平筆を多用しています。面で塗る意識が出るからです。
イラストを描くぞを意識した時から、絵画的な構図や少しの立体感を保ちつつ、どうにか画面を平面的にしたいといつも考えています。

仕上げ、絵を詰める

 さて、途中経過のタイムラプスです。何十秒ほどの動画ですが、これで一時間から二時間は描いていると思います。動画は早回しなので、さささっと描いているように見えますが私は描くのはそれほど早くないと思います。時間はモノクロでのアナログ作業で描き始めから終わるまで6時間~10時間くらいかかると思います。

絵の形がすべて整いました。

 これで完成・・・

 では、ありません!

また明度のちょうせいをしたいです。でもこれ以上アナログで塗りなおしながら調整していくと時間がかかりすぎます。出来ればアナログですべて完結したいところですが、今回は締め切りが間近で時間が限られています。

 ですので、ここからPhotoshopで調整に入ります。それについては次回以降に描きたいと思います。

それではまた~!

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