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ポール・トーマス・アンダーソン「リコリス・ピザ」は70年代LAの一瞬を切り取った最高の映画だった

こんにちは、makoto です。

今週ラスト金曜日。
連日の酷暑にうんざりして、午後有休取って映画を観てきましたよ。
TOHOシネマズ 新宿、はじめて行ったけど歌舞伎町のど真ん中なのね。
昼間でよかったぁ。。夜の回は物騒で行きたくないな(先入観)

平日昼間の回とはいえ、ほぼ満席。
映画の日割引だからなのか、ポール・トーマス・アンダーソン(以下、PTA)の久しぶりの映画だからなのか。
とはいえ、見渡す限り20代〜30代までの若い方が8割くらい。
PTA世代は僕を含めて数えるくらい。HAIM人気なのか?
まあいいか。

僕にとってのPTA映画といえば「マグノリア」とトム・ヨークのANIMAのPVくらい。
今作で主役の1人、アラナ・ハイムの所属するバンドHAIM(他のメンバー2人=姉となんと両親合わせて家族5人がそのまま家族として出てきます!!)のPVもほとんどがPTA監督ですね。
HAIMのPVでは「Summer Girl」が好きです。


で、PTA映画は「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」もブギーマンもまだ未観賞。何やっとんじゃい。
なので、「PTAの作風は。。」とか「だからこのシーンがPTA的で。。」とか語る資格はありません。
なので、純粋に「リコリス・ピザ」という映画のファーストインプレッションを思うままに書いておきます。

舞台は1973年のロサンゼルス サンフェルナンド・バレー。
LAのどの辺り?どこ?
ってことでGoogle Mapで見てみた。

ユニバーサルシティがある地域がサンフェルナンド・バレー地域で、ハリウッドまでも車で15分。まさに映画の町。
劇中でも、大俳優、子役などの役者や俳優事務所など芸能関係の人が多く出てくるが、まさにそんな地域なんですね。

さて、上映開始直後なので細かいストーリーは省略します。
ネタバレとか特に全く関係なくて、事件が起きてどうこうというストーリーでもないですが。

主人公は2人。
彼はゲイリー。
子役出身で今も役者業をしながら、マネージャ兼務の母親と何かとサイドビジネスを仕掛けている。若くして稼いでいるので、高級レストランでも顔パスなのに、なんと15才!!
ガタイもデカイし、ぱっと見もっと年上に見えるやろ!
演じるクーパー・ホフマン君は今作が映画デビューみたいだが、そんなこと微塵も感じない余裕の演技で将来が期待できる。
お父さんのフィリップ・シーモア・ホフマンにも似てますね。

彼女はアラナ。ユダヤ教の家庭に生まれ3人娘の末っ子。決して裕福な家庭ではなさそう。
彼とは10才違いの25才。
演じるのはHAIMのメンバー 末っ子のアラナ・ハイム。
HAIMメンバーではPVとかでもメインを張るダニエルじゃないんですね。
(ダニエルだと印象的にもっと強気な面が前に出過ぎるのかな)

この10才違う2人がどうやって恋に落ちていくのか、というのがこの映画のメインテーマ。

ファーストインプレッションは、
「可愛くて、ピュアで、キラキラした映画」

ゲイリーは若さゆえに、どんなに地元で有名でも、高級レストランに出入りして背伸びしても、大人にはなれない。
だけど、まだ若過ぎて挫折も味わっていないから、だからこそ、大人なんかには負ける気がしていない。(勝ってるという風にも言える)
だけど、頭の中は女の子のことでいっぱい。

年上のアラナに一目惚れしても、目の前に素敵な女性〜女の子が現れるとすぎに子犬のようにしっぽを振ってそちらに目移りしてしまう。
そんな微妙な年頃の、少年から青年へ移りゆく青春にもまだ早い。
ガタイが大きくても所詮は15才、途中、アラナの知り合いが「手コキさせてる」みたいな話もあったが、本当はどちら?経験済み?性的にはまだ幼い? だけど、アラナの前では純粋で、手を触れることもなかなかできない(おっぱい触ろうとしてビンタされてたけど笑)。

アラナはもう大人といってもいい年齢だが、どこか大人になりきれていない。 末っ子だから?
15才の彼にまとわりつかれ、まだガキ(KIDS)のくせにと思いつつも、頼もしい時もあったり、結局ゲイリーに振り回されながら、徐々に惹かれていっている不思議な関係

いわゆる、ボーイ・ミーツ・ガール的な、胸キュン的な。ありきたりなラブコメものではないのが面白い。
おそらく10才違い(25才と35才じゃなくて、15才と25才という片方が未成年というのがキモだな)という設定が、単純な話にさせなかったのだろう。
その年の差と、2人の境遇がうまく作用して、付かず離れず、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、なかなかピタリと息が合わない。ラストまでは。

だけど、この2人はおそらくゲイリーが18-19才の青年期に入ったら自然消滅しているんだろうな、絶対。

LAという舞台と1970年代前半という世相を現したエピソードも散りばめられていて、元ネタなどを想像するのも1つの楽しむポイントかな。

アラナが「やっぱり私はもうガキの相手なんかしてられないわ、立派なオトナなんだから、政治にも関心があるのよ」とばかりにボランティアをするのが選挙事務所。
地元の議員ワックスは、ゲイをカミングアウトした最初の議員ハーヴェイ・ミルクがモデルなのかな?と思ったけど、ミルクは1978年にゲイとして初当選してすぐに射殺されている。
リコリス・ピザの舞台は1973年。
映画の中でのワックス議員はゲイであることをカミングアウトするどころか、スキャンダルを狙って付け回されている記者(?)からの目くらましにアラナを利用する。
議員がゲイであるなんてことは決して知られてはいけない時代だった。

ちょい役で出てくる多くのキャストも、映画の街が舞台になっている艶やかさを演出していた。

アラナが「やっぱり大人の男性って」と少しうっとりしてしまう相手役が大俳優役を演じるショーン・ペン。実は彼も頭の中は子供のまんまの単なる酔っぱらいだった笑。

ブラッドリー・クーパーは、バーブラ・ストライ「サ」ンドのパートナー設定でLAならではの(知らんけど)ヤバい業界人役を怪演しています。

他にも、多数の有名人がちょい役で出ている(エンドクレジットでワンシーンのカット付きで紹介されます)。

最後に、
「リコリス・ピザ」ってどういう意味なんでしょう?

ポール・トーマス・アンダーソン好きの人には申し分なく、また普通に映画好きの人にも、愛すべき一作なんじゃないでしょうか。
どちらかというと、じわじわくるタイプの映画なので、Blue-Rayを入手して何度も繰り返し観たい映画かもしれないです。

他にも鑑賞された方、皆さんの感想を読んでみたいです。

それでは!

*カバー画像は「リコリス・ピザ」公式サイトよりお借りしました。


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