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部屋 第2話

目を閉じてどのくらいの時間が経っただろうか。

全く眠気が無い。

いつものおれならすぐにでも寝入ってしまうのに。

とりあえず目を開けてみるか、と思うが先ほどと変わらないビルの一室、白の壁、セラミックタイルに囲まれた自分がいるのではないかと不安になる。

これが夢なら寝て、また起きたら自分の部屋だ……。

だが思考の繰り返しによって眠気は遠ざかった。

おれは勇気を出して目を開けた。

明るい室内、白い壁、セラミックタイル。

何も変わっていない。

この部屋にはベッドだけだ。

ベッドの上にあるのは、まくらと布団と毛布だけ。

服装はTシャツに半ズボン、ユニクロで買ったパーカーだ。

ポケットには何も入っていない。

スマホも無い。いつも寝る前にサイドテーブルに置いたのだ。

ここにサイドテーブルは無い。

ポケットに入れておけばよかったと後悔する。

起き上がったらいつもスマホを触るから、落ち着かない。

ここがどこかも分からない、スマホも無い。

とりあえず床を見る。

ピカピカの白い床だ。ホコリは無い、掃除されているのか。

ベッドから上半身を下に向け、ベッド下を見た。

ベッドの下は空いており、その空白から白い壁が見える。

おれは体制をもとに戻し、ベッドの上に正座をして前を見た。

そして改めて部屋を見渡した。

自分が寝ていた部屋よりも、一回りは広い。

ドアは無い。天井は白い壁だけで、ライトも無い。

なぜ明るいのか分からない。

「おはよう!」

声を出したが響かない。

自分が出した声が壁に吸い込まれたみたいだ。

この部屋を調べるしか無い。

おれは勇気を出してベッドから降りた。

続く。

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