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何が集団的知性の基礎となるのだろう?

今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「集団を賢くするのは何か」を読みました。

「私たちはなぜグループを作るのでしょうか?」と問われたらどのように答えるでしょうか。自分一人では解決ができないことも複数人の力を合わせれば解決できるから。物理的な力もあれば、知性や思考力を合わせることもある。

個人個人が集団の中で情報やアイデアを共有することで、集団としてより望ましい判断や行動を取る可能性が高まる。つまり集団にも知性が存在し、それは「集団的知性」と呼ばれます。

何が集団的知性の基礎となるのだろうか?これは予想外だったのだが、集団のパフォーマンスを上げると多くの人々が一般的に信じている要素(集団の団結力やモチベーション、満足度など)には、統計学的に有意な効果は認められなかった。

「何が集団的知性の基礎となるのか?」という問いに対する答えに衝撃を受けました。統計学的に有意な結果が認められなかったとされる団結力、モチベーション、満足度も集団的知性に関わりがあると考えていたからです。

団結力、モチベーション、満足度などは少なくとも、メンバー間の自発的交流を促すはずです。それらがなければ、自分が持っている情報を出し惜しみしたり、他者と情報共有しようとしなかったり、ソーシャルネットワーク内でアイデアの流れが損なわれてしまうように思います。

それに加えて重要だと思うのが、メンバーの知識や情報、アイデアに大きな偏りがなく、多様化されていること。もし各人が全く同一の情報を持っているとしたら、判断や行動に際して集団である必要はないのかもしれません。同じ情報に偏っているとしても、価値観や経験の差異に基づく解釈の違い・共有を通して、集団として望ましい判断を下せる可能性はありますが。

集団の知性を予測するのに最も役立つ要素は、会話の参加者が平等に発言してるかどうかだったのである。少数の人物が会話を支配しているグループは、皆が発言しているグループよりも集団的知性が低かった。その次に重要な要素は、グループの構成員の社会的知性(相手の社会的シグナルをどの程度読み取れるかで測定される)だった。社会的シグナルについては、女性の方が高い読み取り能力を持つ傾向にあるため、女性がより多く含まれているグループの方が良い結果を残した。

「会話の参加者が平等に発言しているか」が集団的知性を左右するという結果も衝撃を受けました。自分が所属しているコミュニティや組織では、どれだけ発言の平等性が担保されているだろう。「

「会話の参加者が平等に発言している」というのは、いわゆる「声の大きな人がいない」「結論ありきではない(ゆえに発言に意味が生まれる)」「発言しない人がいない」などの状態が満たされていること。

しかも、女性が多く含まれているグループのほうが集団的知性に優れるとの結果で、これは「発言の意図を理解しようと努める」姿勢に体現されるように思います。

この結果をステレオタイプ的に捉えるのも良くない気がしますが、少なくとも私が所属するグループでは男女問わず「それってこういうこと?」「もう少し詳しく教えてほしい」という会話がなされることが多く、あらためてメンバーに恵まれていると実感しました。

こうしたソシオメトリック・バッヂからのデータを分析して明らかになったのは、アイデアの流れのパターンそれ自体が、他のあらゆる要素よりも、集団のパフォーマンスに大きく影響しているという点である。他の要素を合わせた影響よりも、アイデアの流れがどのようなパターンを取っているかの方が、大きな影響を与えているのだ。これは非常に重要な発見だ。個人の知性や個性、スキル、その他さまざまな要素が束になっても、アイデアの流れのパターンにはかなわないのである。

個人の知性や個性、スキル、その他の要素が束になってもアイデアの流れのパターンにはかなわない。アイデアの流れを整えるために一人ひとりが何に気をつけ、どのような行動を取ってゆくべきなのか。こうした問いは、案外日常の中で見過ごされてしまっているのかもしれません。

ソシオメトリック・バッヂとはグループの人々の交流パターンを測定するためのデータ収集装置のことです。交流のパターンを測定して可視化することで、集団的知性の源泉を理解する。

データは定点観測的に捉えるのではなく、時間的・空間的な広がりを持ったストーリー(すなわち流れ)として捉えること。その流れの中に一人ひとりの顔が浮かぶぐらい、人の存在を意識する。大切な学びを得た気がします。

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