その日、その週、誰とどのぐらい会話しただろう?
今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「誰と誰が会話しているかを可視化する」を読みました。
エンゲージメント、すなわち「繰り返し行われる協調的交流」のパターンが情報とアイデアの流れの違いを生み出し、組織の生産性、判断や行動の質に違いをもたらすのでした。
探索と共有を交互に繰り返すことが重要です。探索フェーズでは各メンバーが自律的に行動し、特に自分が所属するチームの外に飛び出していくことが重要です。そして、各人が集めた情報をチーム内で密に共有されることで、情報やアイデアが集団の中でスムーズに伝播される結果、「集団的知性」が高まるのでした。
望ましい交流のパターンを生み出すために、現状の交流のパターンを変えるためには何が必要なのでしょうか。
「測定されないものは、管理することができない」との著者のコメントをもう少し咀嚼してみます。特に「記録」と「比較」が重要だと思います。
人間の認知資源・記憶力は無限ではありません。様々な事象を認知することは負荷がかかりますし、忘れもします。だからこそ重要な指標を測定、記録することで振り返ることができます。データを残すことで、望ましい状態との比較が可能になり、原因・メカニズムを振り返り、行動・交流のパターンを変えることができます。
しかし、コミュニケーションのパターン測定は、著者が言うとおり、日常的に行われることは稀なのではないでしょうか。自分事として振り返ってみると、同じオフィスで顔を合わせているメンバーの中で、会話の回数・時間はたしかに特定の人、業務上で関わりの深いメンバーに集中しているかもしれません。
「自分たちがどのようなパターンで交流を行っているのか、人々が目に見える形で示す」というのは、たしかに著者が言うとおり難しいように思います。
たとえば、Slackなどのデジタルコミュニケーションツールでは、メッセージを送る相手を「メンション」することができますが、そうしたメンションを「相互参照リンク」としてカウント、グラフ化することはできるかもしれません。
一方、そうしたコミュニケーションは、あくまでもデジタルでのコミュニケーションに限った交流パターンを示していますので、オフライン(対面)でのコミュニケーションも含めなければ、交流のパターンの全容を明らかできません。
少なくとも、組織が小さいうちは、一週間でオフライン・オンラインを問わず、コミュニケーションしていない相手をリストアップすることができるかもしれませんが、組織が大きくなれば、そもそも全員とコミュニケーションを取ることが現実的ではないかもしれません。
「同意されたパターンの実現に向けた社会的圧力が生じる」とありますが、そもそも交流のパターンが変わることによって、個人やチーム全体の生産性が変わることを実感する、つまり「成功体験を作る」必要があるように思います。
その意味では、大々的にトップダウンで交流のパターンを測定するのではなく、生産性・創造性の高いチームをピックアップし、その交流のパターンを測定して、理想のパターンであることを確認する。そのチームをモデルケースとして、全体に広げてゆくような取り組みが良いのかもしれません。
いずれにしても、まずは自分自身で小さく始めてみる。自分のその週の交流のパターンはどのようなものだったか。そして、生産性・創造性の高い人やチームの交流パターンを観察してみる。スモールスタートのひそかな楽しみを味わいながら。
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