見出し画像

熊野古道で感じた「マーケターとPRパーソンの思考の型」「地域ブランドの特殊性」「地域課題の把握の仕方」について。

みなさん、どうも。桜井です。

私は現在、静岡県を中心にマーケティング・ブランディング支援の会社を経営しています。

「地方」をドメインに置き、ミッションである「地方に骨のあるマーケティングを実装する」ために日々全国を行脚して課題解決のため奔走しています。

12月8日(金)〜10日(日)に熊野古道で行われた、【第2回】Kansai Marketing Camp in 熊野古道~「人生の節目で歩く熊野古道」を作るPR戦略会議~に参加させていただきましたので、備忘録としてnoteに書き残していきたいと思います。

ぜひ主催者の大﨑さんのnoteとともにお読みいただけたらと思います!

「マーケターとPRパーソンの思考の型」について

私自身、前職から数えて10年ほど地域に根ざしたマーケティング業に携わっていますが、「PR」というものをきちんと学ぶことはありませんでした。というのも、地方では特定の領域を専業で実行することはあまり多くなく、常に総合力が求められてきたからです。

(余談ですが)下記はウェブライダー松尾さんのスキルマップですが、マーケターというのはこれだけ多くのスキルが求められるわけです・・・。

ウェブライダー松尾さんのXより参照

そこで、今回PRパーソン・マーケターであるプロの皆さんの思考をのぞかせてもらい、マーケターとPRパーソンの思考は何が違うのか?について感じたことをアウトプットしてました(マーケターおよびPRパーソンの定義は諸説あり、取引規模や置かれている状況、予算感などによって変わるため、1つのパターンとしてご認識いただけたらと思います)。

思考プロセスを図にすると以下のようなイメージです。

マーケターとPRパーソンの思考について

【マーケターとPRパーソン:思考の型の違い】

マーケター(私):
・目的(MVV)&事業目標(PL)の設計・整理
・市場分析(定量/定性調査)
・事業戦略(PL/BS)の設計・整理
・Who(STP/ペルソナ)
・What(ベネフィット/インサイト)
・コンセプト(&調査)
を設定の上、
・Howを検討〜実践

PRパーソン(諸説あり):
・ターゲットの行動/態度変容を設計・整理
・Who/Whatを整理・確認
・取り上げてもらいたいメディアを検討〜選定
・具体的な切り口/企画案を検討
・切り口/案の根拠・エビデンスを整理
・具体的な企画を設計
・各メディアへアプローチ

マーケターとPRパーソンの思考の違い(諸説あり)

マーケター(私の場合)は、売上高や営業利益を高めることをKGIとし経営戦略や企業の理念・スタンスから紐解いていくことが多いです。

またKGIの到達は1〜3年ほどのスパンで見ることが多く、短期間でのキャッシュフロー改善はあまり多くありません(例外はありますが・・・)。あくまでも一定期間でブランドに一貫性を持たせて徐々に強くしていくイメージです。

一方で、PRパーソンはユーザーの態度・行動変容をKGIに設定しているような印象を受けました。

態度・行動変容結果的に売上や利益につながるアクションという意味ではマーケターと変わらないのですが、Who・Whatを設定した後は取り上げてほしいメディアから逆算したアクションを設計していくイメージです。また成果までの時間は2〜3ヶ月程度で1回は成果が求められることが多いのではないか、という見立ててです。

PRの定義はパブリックリレーションズであることから、社内外のステークホルダーへの関係構築を続ける、という前提はありますが速やかな成果を求められるのかなぁというところです。

地域ブランドと事業ブランドの関係性とブランド毀損のリスクについて

熊野古道はインバウンドの利用者が20倍以上になった、という話とそのプロセスを聞き、これだけのステークホルダーをまとめ、1つの方向に向いてブランド形成されたのは単純にすごいことだと感じました。

その上で、なぜ熊野古道がここまで一貫したブランドを作り上げることができたのか?については以下の5つのポイントがあったのではないかと感じています。

熊野古道のブランド形成における5つのポイント

官民が連携することはマスト
行政だけ・事業者だけのリソースではなく、官民が一緒の方向を向いて時間とお金と労力を使っていくこと
全員が同じ方向を向く
行政・事業者だけではなく、地域住民・行政/事業者の関係者(家族も含め)・メディアが一貫性を持つこと
観光客を呼び込む以上に受入サポートを行う
対外向けのプロモーションを行うだけではなく、インバウンドの受け入れ体制の整備に時間とお金と労力を使うこと
地元愛がある人が実践する
地元をなんとかしたい・助けたいと考える「地元愛がある人」が先頭に立って実践すること
10年間ブレずにやり続けること
10年間、ステークホルダーを巻き込み、合意形成をしながら一貫性を持って行動し続けられること

熊野古道成功の5つのポイント

上記の通り、「熊野古道としてのブランド」が出来上がった状態でその地域に事業参入する際は「地域ブランド」を毀損させないような「事業ブランドづくり」が必要になってくると思います。

熊野古道に関係する皆さんが築いてきたブランドがより高まるような方向性を模索する、ということですね。

地域ブランドの上に事業ブランドがある

ではどんな行動がブランド毀損に当たるのか?については地域ブランドによって変わってくるため一概には言えませんが、「何が地域ブランドにとって良いことなのか・悪いことなのか」の勘所は押さえておいた方がいいと思います。

ただし、この良し悪しは地域に入り、住民の皆さんと話さないと見えてこないことも多々あると思います。

さらに、上記の熊野古道のように地域ブランドが確立されていれば毀損リスクがありますが、地域ブランドそのものが毀損してしまっているケース(福島第一原子力発電所事故などは今回の例には当たらず、逆に地域ブランドを事業ブランドによって持ち直していく・高めていく必要があると思います(私は地域ブランドから一緒につくっていく仕事が多いです)。

ここの勘所もマーケター・ブランドマネージャーの腕の見せ所ではないかと思います。

地域課題を把握するために必要なファクト集めについて

ここまで「マーケター・PRパーソンの思考の型」「地域ブランドと事業ブランドの関係性/ブランド毀損リスク」についてまとめてきましたが、最後にじゃあ地域の現状把握・課題発見においてどんなファクトを集めていけばいいのか?についてまとめていきたいと思います。

【私が地域課題を把握する際に調べること】

・居住人口
・年間の観光客数
・主要産業
・年商上位企業
・ふるさと納税の売れ筋
・首長のマニフェスト
・行政の観光戦略
・楽天・じゃらんの宿数と単価
・エアビーの登録数と単価
・大学・短大・専門学校の数
・コワーキングスペースの数

地域課題を把握する際に調べること

この辺りのファクトを揃えると課題が見えてくるように思います。

もし私が特定の地域に入る場合はその地域の居住人口に近い他エリアの上記数値を見比べてどこに差異があるか?を見ると思います。

「居住人口は変わらないけれど観光人口が違う👉観光戦略がうまくいっているのはなんでだろう?行政の観光戦略を見直してみよう」だったり、「ふるさと納税の納税額が高い👉各ポータルサイトをみて何が売れているかを見てみよう👉地域の主要な事業内容を調べてみよう」だったりと、1つのファクトから別のファクトに移り、特徴を把握することもできると思います。

私はこの1年、20都道府県を行脚しましたが、居住人口が同じでも観光客数も、主要産業も、ふるさと納税の販売数も、宿の数も、全然異なり、1つとして同じような都市はありませんでした。

逆にいうと、各地域それぞれの強みが活かせるはずなので、マーケターは地域ブランドと事業ブランドを両立させ、PRパーソンをはじめとした様々なスペシャリストの力を借りながら総合力で勝負をしていけたらいいのではないかと思います。

特に地方で働くマーケターはそのプレイヤーの少なさから孤独になることが多く、孤独が故にリソースが足りず支え合える人も身近にいない、なんてことがあります。でもそんなときは、他の地方で働くマーケターおよびローカルプレイヤーたちの横のつながりをつくり、手を取り合いながら共に進んでいきましょう。

以上が熊野古道合宿で学んだ「マーケター・PRパーソンの思考の型」「地域ブランドと事業ブランドの関係性/ブランド毀損リスク」「地域課題を把握するためのファクト集め」でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弊社HONEでは地域ブランドづくり・事業づくりのサポートを行っていますので、お困りの際はお気軽にお声がけください!


この記事が参加している募集

マーケティングの仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?