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エスニック料理を超えた「日本料理」としてのカレーのすばらしさを語る

カレーは元々エスニック料理だが

子供の頃を考えるとエスニック料理店って増えたと思います。

あれ、エスニック料理って西ヨーロッパとか指さないのはどうしてなんですかね。世界各国の料理は全てエスニック料理の筈なのに、多分民族的な色合いが強い料理のことを指すんでしょうね。

だから「エスニック料理」と言えば東南アジアやインド寄りの料理屋さんをイメージしやすいんじゃないかと思うんですね。

で、その「エスニック料理」の代表格って恐らくカレーなんですよ。

インドやスリランカの味を、あの空間に行けば味わえる。旅行をしなくても海外に行った気分になれる。だからエスニック料理店だと不思議と民族的な格好をしたり、店の中もその国を想起させるようなデザインになってる。

エスニック料理屋で飯を食うという行為は単に料理を味わうだけでなくて、雰囲気も含めて視覚と味覚と嗅覚といった五感で味わうからこそ楽しいと思うんですよ。

考えてみるとどこのエスニック料理屋でも不思議と国をイメージさせる匂いまで演出していますからね。

ただ、実に不思議な話なんですけど、カレーに関してはその限りではなくて。

カレーって二つに別れると思うんです。
エスニック系のカレーと、和風のカレー。

日本独自の「カレー教育」

で、日本人の大半が想起するのって、和風のカレーのことだと思うんですよ。

勿論あのバナナの皮が皿代わりで、デカいナンが出てきて、なんだったら手で食わせるようなエスニック系のやつを好きな人も多いと思います。ただ、あれはどちらかというとよそ行きのカレーなわけで。

日本のカレーを味わうのにそういうエスニック要素ってどこにも無い。あくまでも日本の家庭のカレーであり、そこに五感を刺激するような面倒なものは要らないわけです。

私たちは日本に生を受けると「カレー教育」と言えるようなものを受け続けてきていると思うんですよ。

幼稚園に入るくらいの頃には「カレーの王子さま」で人生初のカレーの洗礼を受け、両親や兄弟とは違うカレーを食べることにすわりの悪さを感じ、数年後に「バーモントカレー」の中辛辺りをちょっと無理しながら食べるようになり、舌が辛さに慣れてくる。

カレーって味覚の中でかなり重要な位置を占めている割にそんなに手を掛けないわりに美味いという本当にありがたい存在だし、日本に住んでいればよほどのことが無い限り誰もが通過するものなんですよ。

うちのカレーがなんやかんやで一番美味い

あと、別に手間を掛けなくてもそれぞれの家庭のスタイルがあるんです。

根菜類を適当に切って、好みに合わせて鶏か豚か入れて、市販のルーを入れて、煮る。家庭に於けるカレーなんてよほどこだわらなければたったこれだけなんですよ。

玉ねぎを飴色になるまで炒めるという概念が有難がられた時代もありましたが、あれ面倒だしあんまり炒めない玉ねぎでも美味いから脱落しちゃう人多いんですよね。

ただ友達の家に遊びに行くとカレーが出てくることがありますが、なんか違うんですよ。同じ食材を使って、同じ市販のルーを使ってる筈なのにどこか違うんですよね。不味くはないけど、ちょっとずつ違うからなんか落ち着かない。これは本当に不思議で。

だからカレーってどんだけ進化しても結局一番美味いのって家の味ですよ。

本家をガン無視する日本のカレー文化

あと、日本におけるカレーの何がすごいってエスニック料理の範囲を逸脱してしまってるところじゃないかなと思うんです。その逸脱したものを独自のカルチャーとして胸を張っているというかなり珍しい位置づけの料理なんですよね。

これが例えばパスタなんかだと本家の流儀に対してチラチラ顔色伺うじゃないですか。

やれスパゲッティナポリタンなんてもんはナポリに存在しないだの、箸で食うのは邪道だの、アルデンテじゃないパスタなんてパスタを冒涜しているだの、スパゲティはパスタの一部に過ぎないだの、イヤー本当に面倒だ。

逆に日本人だって外国人にカマしますよね。カリフォルニアロールなんて寿司じゃねえ!とか、フルーツ寿司なんて食えたもんじゃねえ!とか、こっちが本家になると分家にはとにかく厳しい。人のことなんて全く言えないんですよ。

ただ海外に委縮しがちな日本人でもカレーに関してはもう何を言われようともビクともしないですよ。多分本家からすれば「バーモントカレーなんてカレーじゃねえ」って思ってる筈ですけど、僕らなんの迷いもなく喜んで食います。

日本人にとってカレーの型が定まっていて、発祥は外国でも日本の味だし家庭に脈々と流れるカルチャーになっている。こんな料理って他に無いですよ。

振返ると日本におけるカレーって独自だし、おいしいし、素晴らしいものだと思うんですけど、無暗に「誇るべき日本文化!」みたいに打ち出さなくていいと思うんです。だってそれを世間にアピールしなくても誰もがそのことを感覚レベルで知っている訳ですから。

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