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うちの近所の畑作業やってて、ボール打ち込むと超怒ってたジジイの噺

私が育った登戸っていうのは結構不思議な街です。

というのもね。
たまに戻っても全然ノスタルジー感じないんですよ。

登戸っていうのは溝ノ口とか武蔵小杉とか新百合ヶ丘みたいな他の川崎の街とは異なっていまして、なかなか再開発が進まないんです。

計画自体はありますし、ついに駅前がほぼ更地になってしまいましたからね。

でも、子供の頃のことを考えるとジワジワと街並みが変わってきまして。

ですから、たまに戻ると少しずつ違うんです。
見える景色がね。

そうなると、子供の頃の思い出が全然フラッシュバックしないんですよ。少しの違いであれば気にならないんですけど、間違い探しレベルのそれではなくて、なんか全体的に似てるけど違う。

だけど不思議なことに利便性が劇的に上がっている訳でもなければ、街のランクが上がっている訳でもない。

のペーっと変わって、なんか違ってしまっている。
それが登戸の今昔なんです。

でね。
私の実家の周りがその典型でしてね。

家の前には通称「桃山」っていう荒れた空き地と畑がありまして、使われなくなった古びたユンボが残っていたりして、で、右隣には結構なスペースの畑がある。

父と二人で、っていうこともあれば友人と、っていうパターンもあるんですけど、うちの前からトスバッティングすると、たまに畑にボールが入っちゃうんですよ。

高い柵があるんですけど、ボール取りに行くにはこれを越えていかなければいけないっていう、小学生にとっては運動能力が問われる試練があったんです。

でも、それは少し成長すれば大丈夫で。
まぁちょっと頑張れば出来るんです。

問題は、この畑に怖いジジイ(当時の固有名詞なんでお許しください)が居ることだったんですね。

まずね。
ムスっとしている系のジジイ(固有名詞)なんですよ。
機嫌悪そうにしている。

いや、この人が実際どんな人かは分からないし、地顔が機嫌悪そうっていうパターンもあるじゃないですか。心は温かいみたいなやつ。

でも、温かさって感じたことは無くて。

近所の活発なガキがたまにボールを入れちゃうからなのかもしれないですけど、顔から想像できるような感じの怒り方をするわけですよ。

子供が外で遊ぶくらい大目に見てくれよって思うし、うちの両親もそっちサイドだから私がそこで野球の練習をすることは全く咎められたことはないんですけどね。

他にも探せば怒られないような場所ってのもあると思うんです。でも、なんかそこでいつも野球やってたんです。

自分が親だったらジジイ(固有名詞)に失礼だから止めろっていうよりは、小さいことにうるせえから違うところでやった方がいいぜ、っていう言い方をすると思います。

ただ、不思議なこともありまして。
このジジイ(固有名詞)、結構いろんなところに畑持っているんですね。

つまり、地主なんですよ。
この辺りの。

飛び地になっている畑を自転車こいで耕して、あちこちでネギとか作っているんですよね。

だからうちの近所の畑ってその中の一つに過ぎない筈なんですけど、畑にボール入れちゃった時に限ってジジイ(固有名詞)が居るんです。

なんなんすかね
あの間の悪さ

ボール打ち込んだ時にジジイ(固有名詞)が居るのか
ジジイ(固有名詞)が居る時にボールを打ち込んじゃうのか

これもうマーフィーの法則ですよ

日焼けしてちょい腰曲がったちっちゃいジジイ(固有名詞)がHB101のキャップ被ってなんかいつも怒ってる。ボール打ち込むとまた怒る。

でね。

私も中学校に入る頃になるともうマンションのネットめがけてトスバッティングなんかやらなくなりましてね。ジジイ(固有名詞)のことなんてすっかり忘れて剣道に明け暮れていました。

その頃くらいからですかね。
のぺーっと街並みが変わってきたのは。

家の目の前にあった桃山はマンションになり、友人の一家が越してきました。

そして、高校卒業するくらいの頃には隣の畑も半分だけマンションなのかアパートなのかよく分からない建物になっていました。

ジジイ(固有名詞)をちょいちょい目撃していた畑は少しずつ姿を消していったんですね。

ただ。
妙なんですよ。

少しずつ、だったんですよね。
本当に。

こういうのって大抵親世代が亡くなったりとか、いろんなタイミングがあって、デカいマンションとか建つ印象なんですけど、なんかちょっとずつなんですよ。

ちょっとずつしか進まないから必然的に畑の代わりになるものっていうのも限られているわけです。

駐車場か、3階建てくらいのアパートか。

それもね。
どこもちゃんと畑が残ってるんですよ。
少しずつ。

どの土地にも畑を残すっていう明確な意図が見えるんです。

どう土地を使うか?っていうのは所有者の勝手なんですけど、運用的な観点だとかなり勿体ないようには思うんですよね。下世話な話ではあるんですけどね。

他人から見るとうーん、ってところもあるんですけど、まぁそれで納得しているなら仕方ないのかな?と思いつつも、ちょっとずつ町並みは変わっていく。

ジジイ(固有名詞)が子供の頃にどやしていた時のあの畑もだいぶ小さくなりまして、まぁ現在に至るんです。

でね。
ビックリしたんですけど。



ジジイ(固有名詞)、まだ畑作業やってるんですよ



さすがにビックリなんですけど、35年前に既にジジイ(固有名詞)だったはずなのに、まだ普通に耕していて、作物を売ってるんです

あの時は憎らしくて仕方なかったジジイ(固有名詞)なんですけど、もうここまで来ると尊敬しちゃいますよ。

一番最初に観た時が仮に60だとしても、95歳ですからね。
えらいことです。

当時の記憶をどう呼び起こしてもジジイ(固有名詞)なんですよ。

どう見ても、最初の印象70歳くらいで。
でもそうすると今105歳とか成っちゃう。
スーパージジイ(新規作成)ってことになるからそれは無い訳です。

今度実家付近で見かけたら聞いてみようかな。


いや

なんか怒られそうだしやめておこう


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