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過ぎていく終わり。#1


出会ってから、ずっと終わっていくのに、出会った瞬間はいつも気づくことができない。


まだまだ、関係が一生続くような気がしていた。いつまでも。終わりを予感したり、想像したことは何度もあった。まさか、自分の手で終わりを招き入れるとは思わなかった。目の前にいる男が、私と離れることを悲しんで涙することなんて、ほんの10分前ですら想像できなかった。
目の前にいる男は、初めて見る泣き顔を隠すことなく、私の服を破るように引っ張った。



夕日が、多摩川の河川敷に大きく横たわっている。どの人にもこの時間は、一瞬に感じるのに、今の一瞬が永遠に続くように思う。


永遠に、このままでいてしまおうか。
このまま、この男の腕を引いたらどうなるのか。


私は、地面に落ちた水滴の後をじっと見ることしかできなかった。






36度を超える炎天下の中、男と私と修理屋は、男の部屋でエアコンを見つめていた。
修理屋はせこせこ働く。私と男は、喉元に汗を垂らしながら、エアコンの修理が終わるのを待ちわびた。この修理屋は、この炎天下の中でエアコンがつかない家庭だけをぐるぐる回って、エアコンがつく涼しい時間をほとんど感じずに次の修理先に行くのだろうか。男に「コンビニ行ってくるね」と声をかけ、財布を持って3つ分の飲み物を買いに出かけた。

修理屋は、客先のトイレを借りることができない。だから利尿作用をもつカフェインが含まれる飲み物は好まない。滅多に買わない麦茶のペットボトルを3本と、塩タブレットを買って男の家に戻ると、修理がちょうど終わるところだった。一番外側にある蓋を閉めて、エアコンのリモコンを何度か触ると、修理屋は「これで問題なくつくはずです」と男に声をかけた。

修理屋は、男にその後の金銭のやり取りなどを軽くかわして、玄関に向かった。私はビニールから麦茶を1本と塩タブレットを出して、修理屋に渡した。修理屋の車が離れる音を聞くと、男は私の腕を引っ張り、エアコンの真下にあるベッドの上に引き寄せた。

「優しい。」私の頭を触りながら男はつぶやく。「そうなのかな。押しつけがましいと断られたらどうしようと思ったよ。」「でも、買ってきて渡すのはなかなかできることじゃないよ」「断られたら、私たちで飲めばいいから。」

私は、男の家で初めてまともにエアコンが起動しているのを見た。昨晩はひどい熱帯夜で、眠れなくなった私たちはファミレスに一時避難し、スーパーで保冷剤を買って首元を冷やし、半ば強引に寝た。男も私も睡眠不足が限界を超えて、ふわふわと会話しながらいつのまにか寝ていた。男はずっと、私の頭を撫で続けている。暑苦しいけど愛おしい。


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