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ホモソーシャルな世界と性教育

またかよ!!! と思われるかもしれないが、案の定SNSの話だ。いつものようにTwitterを巡回していたところ、私にとっては衝撃的な動画が流れてきた。どうやら高校の教室内。男子校生が床に仰向けになった状態で壁を蹴り、ツーっと滑っていった先は、女子高生が座る椅子。周囲にははやし立てる複数の男子校生たち。つまり、複数の生徒の前で女子のスカートの中を覗いて「おまえすげえな!」と称賛している様子を撮影した動画だった。

ゲンナリ of ゲンナリ。10代のこどもですら笑いながら性犯罪を犯し、しかもそれを「オレCoolだろ? シティポップ♪」と言わんばかりに動画をSNSに放流する。「も〜男子ヤメテヨー」とかのレベルじゃない。(再生回数を増やしたくないので、ソース元は伏せることにしました。)


ホモソーシャル #とは

本題に入る前に、「ホモソーシャルな関係」とは何かを少し説明したい。本来この言葉は、恋愛や性的欲求を伴わない同性間の関係性のことを指す。簡単に言ってしまえば同性間の友情や、同性の師弟関係のような関係性を表す言葉だ。しかし近年では、フェミニズム界隈で目にする頻度が増えたように思う。同性(特に男性同士)の承認を得るために性犯罪まがいなこと(もしくはモロに性犯罪)をやってしまう男性を糾弾するために、この言葉を使用しているようだ。いかに女性(女体)を消費対象にしているかが鍵になっているらしい。

先述の動画の話に戻るが、彼らはあの行動を「性的いやがらせ」だとか「痴漢行為」だと認識していないのかと言うと、それは嘘になると思う。しかし「ただいたずらしただけ」「年頃の男子ってそんなもん」と許容する土壌が確実に存在する。この土壌を作り上げてしまった責任はどこにあるのだろうか。


中学生に性教育は早すぎる?

少し私の話をしよう。私の家庭環境は少し変わっているように思う。私が小学校に入学してすぐ、祖母は私に「あんた、梅毒には気をつけなさい。」と言い聞かせていたのだ。これが、淋病だったりクラミジアだったりエイズだったりヘルペスだったり。「祇園精舎の鐘の声〜」と同じトーンで、何かにつけて性感染症の危険性を6歳の私に説いていた。まだ初潮もきていない上に性感染症がどこから来るのかも知らないのに。

その成果もあってか、中学生になって保健体育の授業で性教育が始まったときに見た、性感染症の症状を紹介するビデオの内容は、なるほどこれは怖いな、と納得のいくものだった。その他にも男女両方の第二次成長期の体の変化や、避妊の仕方(コンドームの付けかただけではなく、低容量ピルやバセクトミーも含む)を割と丁寧に教わったように思う。しかしなぜか「性的合意」については一切触れた記憶がない。

数年前「若者の妊娠率が上がるから、中学生への性教育は早すぎる」とし、教育委員会に対して署名運動を行なっているグループがあると言うニュースを見て、犬神家の一族のDVDジャケットになるかと思った。性教育なんて、早ければ早いほどいい。知識は自分のことも、周囲のことも守ってくれる。ではなぜ、性教育=若者の妊娠率上昇に繋がる、という発想が出るのか? 


性教育って何を教える科目なの?

日本では一般的に、どうやって妊娠するかの仕組みを教える科目が性教育、と認識されているのではないだろうか。これ、実はとんでもない勘違いである。もちろん基礎として体の変化や男女の体の違い、仕組みを教えることは当然必要だ。そして本来ならその先に、必ず避けては通れない、避けてはいけない要素がある。「性的合意」だ。

ここで分かりやすい動画をご紹介したい。イギリスのテムズバレー警察署が2015年に公開した、性的同意を紅茶にたとえた動画だ。

必ず知っておきたい「性的同意」の話。紅茶におきかえた動画を見てみよう | Huffpost


ご覧いただいた方にはお分かりいただけるかと思うが、これ別に「性行為におけること」への同意だけに言える話ではなく、単純にあらゆる人と人の関係性において通ずる考え方なのだ。

ふたりで食事に行ったら性的合意。ふたりきりの時お酒を飲んだら性的合意。一緒にホテルの部屋に入ったら性的合意。女性側が意識がなくても、ホテルについてきたなら性行為に至ってもいい。ついてきた女が悪い。あいつが俺を誘ったんだ。などなど、目が腐り落ちるんじゃないかと思うほど見てきたこれらのセリフ。これ、全部「性行為において相手からの同意があったかどうか」を読み間違えている。

だって自分に向かってあの人は微笑んでくれた。好意がなければ一緒に食事に行ってくれるはずがない。人間の心理として、そう感じるのは自然だ。でも、それと「相手が性行為に同意した」かどうかは必ずしもイコールではない。私は、なぜそれが分からないんだろうか? と不思議で仕方なかった。しかし、気付いたのだ。

そんなこと、学校で習ってない!!!


セックスとConsentはセット

Consent(コンセント)。承諾する、同意する、〔同意して〕納得するという意味の言葉だ。でも、そんなこと確認する必要があるなんて習ってない。いちいちセックスしたいか確認するなんて、なんか野暮いしムード壊れるじゃん… と、痴漢や強姦は犯罪だとわかるのに、なぜかこれが「知ってる人との性行為」になるといきなり分からなくなってしまうらしい。知ってる人との性行為だって、片方が同意していなかければ強姦なのに。

私が大学に入学したばかりの当時、米国ではデート相手の飲み物にデートレイプドラッグなるものを入れて飲ませると意識を失ってしまうためその間に強姦する、という犯罪が大学生の間で流行っていた。授業でも先生が「パーティに呼ばれたり、バーやクラブに行ったら飲み物は絶対に自分で注文すること。作っているところを見ていないものを飲まないこと。一度でも自分の手から離れたグラスは飲まないこと。」と教えられた。当時は「そんな神経質にならんでも」と思っていたが、今思い返せば「性的合意を確認しない犯罪野郎に注意しなさい」という意味だった。

さすがに薬を飲ませるのは犯罪でしょ〜! そうお思いのかた。薬を飲ませなくても合意のない性行為は犯罪。

がしかし、去年愛知県で、実父が当時12歳の長女をなんと、8年間強姦し続けたことで準強制性行の罪に問われた(「準」ってのも意味分からんが)男性に「無罪」判決が言い渡された。しかも理由が「被害者が抵抗不能な状態だったと認定することができない」だ。ちょっと何言ってるかよくわかんないし、私が鬼殺隊員だったらこの父親と裁判長(鬼である前提)を日が落ちてから朝日がのぼるまで滅多刺しにし続けて、朝日で焼く。

こういった大人の意識の低さが、本来守られるべき対象の子供たちを被害者にしたり、加害者にしてしまう。男の子はちょっとやんちゃで(スカートめくりとかしちゃうくらい)幼稚なところがある。違う違う。教育する側の大人たちがそれを「男の子だから」と許して土壌を作り上げているのだ。


性教育は5歳から

性教育先進国スウェーデンでは、5歳から性教育が始まる。日本で教育を受けた人はギョッとするかもしれないが、実はWHO(世界保健機関)やユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が共同発表する「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、性教育は5歳から、と制定している。「性教育」という言葉自体も「セクシャリティ教育」とされていて、もちろん性行為自体にフォーカスして教えるわけではない。

しかし、大人が想像している以上に子供たちは体に興味を持っているし、幼い頃から自分と他人の体とどう接するかや、他者に興味を持ったときにその気持ちや行動とどう向き合ったらいいのかを知ることはとても大切だ。詳しくは『24歳大学院生が驚愕したフィンランド5歳からの性教育」の中身』を読んでいただいた方が分かりやすいと思うが、とにかく「性教育」は「性行為を詳しく子供に教える」教育だけには留まらないということだ。


最後に 

「赤ちゃんてどこからくるの?」と子供に聞かれたときに「コウノトリが運んでくるんだよ」「キャベツ畑から来るんだよ」「橋の下から拾ってきたよ」(これは実際に私が母親から言われた)など、誤魔化して説明する親は多いと思う。でも、性教育って「子供がどこから来るのか」とか「性行為の仕方」も大切だけど、その前に「他者をどのように尊重して、良い関係性を築けるか」がベースにある。他人を尊重するベースで教育がなされていれば、冒頭の男子学生のように同じクラスの女子を犠牲にしてまで、同級生の承認を得ることに躍起になることはなくなるのではないだろうか。せめて、周囲の同級生に少なくともひとり「そういうことするのやめなよ」と止める誰かが現れるのではないだろうか。

性犯罪を減らすには、「性犯罪は絶対に許さない」「差別は絶対に許されることではない」という土壌を作ることが必要が不可欠だ。子どもに対しても同じように、伝えていく必要がある。

少しづつでも、より良い世界がくるように。


(豆林檎)

<参考・引用文献>

必ず知っておきたい「性的同意」の話。紅茶におきかえた動画を見てみよう | Huffpost

15年にわたる実父の強姦が黙殺された「栃木実父殺し」から現在――社会に排除される女性と子ども | exciteニュース

24歳大学院生が驚愕したフィンランド「5歳からの性教育」の中身

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